2019年6月10日号 環境月間特集

 緑化もの時代に、生物多様性確保で豊かな都市持続可能な開発へ変化

 

 一口に環境といっても幅広い。省エネ、気候変動、環境汚染、資源……とさまざまだが、身近なところでは緑化が挙げられる。かつては、景観やヒートアイランド抑止といった側面が重視され、緑の量がポイントだった。今では、量だけでなく、憩い、交流など人との関わり、そして生物の生息空間としての役割など質の面にも注目が集まる。

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民間開発でも大規模緑化/環境性能が入居の動機に

 

 大都市の都心部に民間の緑が増えている。

 

 条例による義務付けや、総合設計制度の活用など制度的な側面もあるが、環境や持続可能性への配慮など企業意識が変化したことも要因である。

 

 民間による自主的な緑化は、好調だった企業業績を受け昭和末期から平成初期に企業の本社ビルなどで屋上緑化などを含む大規模な緑化が行われるようになり始めた。

 

 1984年に竣工した「三井住友海上駿河台ビル」(旧・大正海上本社ビル)は、既存樹の活用や屋上庭園の築造などを行い、当時としては画期的な緑化率4割超を達成。2001年には地域の生態系に配慮した緑地管理を導入。12年には、常緑樹中心だった緑地に落葉樹や果樹を導入し、野鳥の水浴び場となるバードバスを設置するなど、これまで以上に生物多様性に配慮した。

 

 市街地再開発事業によって1986年に竣工した「アークヒルズ」は大規模な屋上緑化を導入した事例の一つ。開業10周年の1996年には、コンセプトの異なる庭で構成する「アークガーデン」がオープン。約4万本の樹木や5000株以上の草花が、建物屋上を中心に育つ。

 

 バブル崩壊とともに一時停滞するも、東京都が2001年に条例を制定。緑化技術の進化や市区町村による補助制度なども後押しした。

 

 地球環境問題、持続可能な開発が社会課題として着目される今では、一定規模以上の開発では、当たり前に施され、質・量ともに高いレベルのものも少なくない。

 

 

 

広がるESG投資

 

 今注目を集めているのが持続可能な開発である。責任投資原則・PRIに署名する機関投資家が国内外で増加。投資家が投資先に対してESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を求める動きが加速している。今後の都市開発にはESGが欠かせない要素になっている。

 

 たとえば大規模オフィス。すでに外資系企業にとってはLEEDなどの環境認証取得が入居ビル選択の大きな要素になっている。企業にとってEGSへの配慮は、投資家への説明を含めて不可欠になりつつあることが、背景にある。投資資金で開発する不動産も、国際的な環境認証取得が要件になりつつある。

 

 国内の機関投資家に販売するビルでもCASBEE、DBJグリーンビルディング認証を取得するケースが目立つ。

 

 生物多様性に貢献する環境づくりを認証する「ABINC(いきもの共生事業所)認証」は14年にオフィスビルやショッピングセンターを対象にスタート。工場、集合住宅、物流施設、戸建住宅と認証範囲を広げている。

 

 今年3月には、「(仮称)町田市小山ヶ丘6丁目計画」(小田急不動産ほか)、「渋谷ソラスタ」(道玄坂121)、「朝霞リードタウン スマートハイムシティ朝霞」(東京セキスイハイム)、「(仮称)矢口3丁目計画」(三菱地所レジデンスほか)、「GLP吹田」(日本GLP)など8施設を認定した。

 

 

 

4つの環境認証「HARUMIFLAG」

 

都心・湾岸の生態系繋ぐ/認証を物差しに設計に反映

 

 2020年東京オリンピック・パラリンピックで選手村として仮使用する分譲マンションなどの複合開発「HARUMI FLAG」(晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業)は、ABINCの新認証「ABINC ADVANCE」を取得した。「CASBEE‐街区」のSランク認証と、「LEED ND」(計画認証)と、「SITES」(予備認証)GOLD認証を含めて4つの環境認証を取得した。

 

 「ABINC ADVANCE」は、複数街区を対象にしたもので、街区を超えてエリア全体での取り組みを評価する仕組み。HARUMIが第1号の認証。

 

 地域植生や経年変化に配慮した緑地計画などランドスケープなど多岐にわたる。風の道を確保する配棟計画や、街のなかで海や水と関わりを感じることの出来る風景を創り出す。

 

 緑化は13ヘクタールの敷地の40%以上。四季を感じるよう約100種の中高木だけでも3900本を植栽する。敷地内の随所に水辺空間を創出する計画で、水景に利用する水を、夜を中心に灌水に利用するハイブリッド灌水・水系システムを導入する。

 

 三井不動産レジデンシャルの東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室の高木洋一郎氏は「晴海は、埋め立て地とはいえ豊かな緑を創出したベイズ、スカイズのある新豊洲と浜離宮など都心側の緑との中間地点に位置することから、生態系のネットワーク構築が重要だと取り組んだ。分譲マンションは引き渡し後は区分所有者の持ち物になる。創出した緑地をどのように維持管理するかが課題になるが、商業施設や賃貸住宅は事業者が保有する。また、大会後に整備するタワー棟もあり、入居者の理解を深める時間が確保できる」と話す。

 

 「LEEDやSITESなど海外の認証は、緑の量や景観が中心だ」と話すのは、認証機関であるいきもの共生事業推進協議会理事の原口真氏。「ABINC認証は、10年後にはどのような緑に育つのかといった時間軸も重視するため、管理なども早い段階で検討する必要がある」と説明する。

 

 「造園などの専門家が早いうちから加わって検討する必要がある。認証をモノサシとして採用することで、具体的な設計に反映できた。11社の共同開発であり、この経験を各社が今後の開発に生かすことで、他の開発とも生態系のネットワークが構築できる」(高木氏)


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ZEH商品を拡充、戸建ては標準化ベース、補助金の充実で多様化進む、太陽光発電システム各戸2kW搭載などで実現

 

 住宅の新商品開発は、政府の環境製品に対する補助金制度の充実もあって、ZEHをベースにした様々な提案競争に入った。これまで戸建住宅が先行していたが、賃貸住宅やリフォームの新商品にもZEHをベースにした新提案が相次ぐようになった。(ハウジングライター・藤原利彦)

 

 

住宅メーカーの戸建住宅の新商品はZEH標準化がベース

積水化学工業住宅カンパニーが1月に発売した「グランツーユーV―ZEHモデル」は、2017年10月に発売した「グランツーユーV」発売1周年を記念して投入した商品で、商品名にあるようにZEHを標準化した商品。屋根バリエーションを拡充してZEH仕様とした。蓄電池も8キロワットを加え、コンパクト型から大容量エネルギーまでの多様な自給自足ニーズに対応できるようにした。

 

 同社が4月に発売した「スマートパワーステーションアーバン」は、狭小間口の住宅にもZEH対応できるようにしたエネルギー自給自足型住宅。ユニットをずらして配置できる「シフトジョイント工法」を開発、敷地対応力を強化した。

 

 

 

リフォーム商品で/“部分断熱”を提案

 

 フローからストックの時代が進展し、リフォームにもZEHの波が押し寄せている。積水ハウスが昨年12月に発売した「いどころ暖熱」のターゲットにしているのは、築20年以上の住宅。それも丸々リフォームするのではなく、家族が集まるLDKをZEHにリフォームする「部分ZEH」という新しい提案。積水ハウスリフォーム3社(東日本、中日本、西日本)を通じて提案している。

 

 同社が供給した築20年以上の戸建住宅の快適性能をZEHレベルに引き上げようというもので、オリジナル断熱リフォーム部材を組み合わせ、短期間で、高断熱と快適設備の同時リフォームする。1日工事のお手軽断熱(開口部、天井の断熱化+浴室洗面所の断熱いずれかを選択)の「ベーシック」タイプと、ZEHレベルの断熱性能を目指す「プレミアム」を用意している。

 

 住宅商品断熱性能は年々向上しており、20年前に比べると雲泥の差だ。COP21で世界に約束したCO2の削減目標は2030年度に13年比26%の削減。この実現には住宅の省エネ、高断熱化を要する。積水ハウスは13年から「グリーンファーストゼロ」(ZEH)に取り組み、新築戸建住宅における18年度の累積普及棟数は4万4247棟、EH比率79%を達成した。この戦略を既存住宅にも展開する方針だ。

 

 

 

集合住宅も開発加速/賃貸併用や寮・社宅にも対応

 

 大手住宅メーカー各社の新築戸建住宅のZEH化は、急激に進んでいる一方で、遅れているのは、賃貸住宅や賃貸併用住宅だ。国は、賃貸住宅やマンションにもZEHを普及させるべく、制度の整備を進めてきた。これに対応して、各社も商品開発に乗り出した。

 

 トヨタホームが4月に発売した賃貸住宅「シンセ・スマートメゾン」は寮・社宅物件にも対応する賃貸住宅で、棟当たり住戸数を最大24戸まで対応できるようにするとともに集合住宅ZEHで求められる基準(ZEH-M基準)をクリアした。

 

 

 

併用を耐火構造に/木密地域にも対応

 

 同社が1月31日に発売した賃貸併用住宅「エスパシオ・ウィズメゾン」は2年振りにモデルチェンジした商品で、耐火構造にすることで木密地域でも対応するとともに、ニアリーZEH-Mに対応した商品。外壁・窓を高断熱性能にし、高効率エアコンの省エネ機器、各戸2キロワットの太陽光発電システムを搭載してZEH化を実現している。これで戸建住宅、賃貸住宅、賃貸併用もZEH化商品を揃えたことになる。

 

 

 

停電時の電力確保や/売電保証の付加も

 

 旭化成ホームズが3月に発表したヘーベルメゾンの「防災パッケージ」は、共用部のエントランス空間の一画を「防災ステーション」と名付け、各世帯では備えきれない大型の防災備品をストックした「防災備品倉庫」、停電時でも共用できる「非常用電源」、情報の途絶が起きないように「防災サイネージ」。共用部には太陽光発電パネル(2キロワット)と蓄電池(6・5キロワット)を設置、停電時の電源を確保。平常時は太陽光発電でつくった電力は蓄電池に貯め、夜間に共用部の電力として利用し、余剰分は売電する。停電時には非常モードに自動的に切り換わる。

 

 大東建託は4月23日からZEH-M賃貸住宅「ソレイユ」の販売を開始したが、本商品を契約したオーナーには余剰分の電力を長期にわたり安定した価格で売電できるサービス「ソレイユFIT」、入居者には低価格で電力を提供する「ソレイユ割」を、Looopと提携して実現した。単純なZEH化でなく、ソフトサービスを付加する競争に入った。

 

 

 

卒FIT対策続々/普及への知恵比べ

 

 今年の新たな動きは、電力会社が再生可能エネルギーを一定価格で買い取ることを約束していた制度(FIT)が約束の期間10年が今年11月から順次期間終了者が出てくる。これに対応して住宅メーカーは卒FIT対策を相次ぎ発表している。「積水ハウスオーナー電気」、「スマートハイム電気」といった仕組みを構築、太陽光発電や蓄電池の普及への知恵比べが始まったのも注目される。

 

 

 

分譲マンションも

 

 ZEHマンションの第1号は積水ハウスが17年末に販売開始した「グランドメゾン覚王山菊坂町」(総戸数12戸)。全住戸がZEH基準を満たすとともにZEH基準適合評価を住戸単位で取得、非常用電源や防災備蓄などの防災対策、共有部の防犯対策など安全・安心にも配慮しているマンションとして注目を集めた。ZEHの波はマンションにも及んでおり、戸建住宅、賃貸住宅、そしてマンションのZEHを進めるためにZEHマンション基準も整備されたことから、デベロッパーによるZEHマンションの商品化が企画されている。


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非住宅もネット・ゼロ・エネ、プランナー登録は156社に、井水と太陽熱で空調システム

 ネット・ゼロ・エネルギーの風は非住宅分野にも吹き始めた。環境共創イニシアチブ(赤池学代表理事)が登録している全国のZEB(ネット・ゼロ・ビル)プランナー156社のうち、設計、設計施工、コンサルティングのいずれかで実績を持つのは86社。内訳は、設計が58件、設計施工が45件、コンサルティングなどが66件。建物用途別の登録は、事務所が155社で最も多く、次いで病院・学校・集会所が各149社、物販店舗が147社、ホテルが最も少ない145社だ。

 

東急コミュ研修施設都内オフィス初の認証

 

 都心部でもZEB仕様のビルは、まだ限定的な供給にとどまっている。東急コミュニティ―は今年5月、中目黒に技術研修センター「NOTIA」の本格稼働を開始した。「建物そのものが研修素材」というコンセプトのもと、用途に合わせて空間を変化できる、いわゆるアクティブラーニングスペースだ。

 

 実際の現場と同じ環境を再現することで、各設備の連動性や電気・給排水設備のトラブル復旧・メンテナンスを実践的に学ぶ。実際に研修用設備を調整しながら、快適な湿度を抑制するスキルを学ぶ、温熱制御実習スペースなども設けている。

 

 2・3階を設備・実習のためのフロアとし、センターの設備系統と切り離して独立させることで、人為的に停電や断水を再現する。

 

 2階では防火・防災設備をテーマに、消火ホースによる放水も体験できる。3階では、電気設備と空調設備給排水・衛生設備を学ぶため、あえて配管・配線・ダクトを露出することで、空気や電気の流れを追う仕様だ。

 

 

 

地中熱を組合わせ/エネ効率を可視化

 

 NOTIAは、躯体利用空調システムや地中熱・太陽光発電などを組み合わせることで、一次エネルギー削減率75%を実現。東京都内のオフィスビルとして初めてNearly ZEB認証を取得した。エネルギー効率などについても、可視化することで、エネルギーに関するデータを蓄積する場としても活用し、省エネ提案などにも生かしていく方針だ。

 

 NOTIAは、延べ2440平方メートルの鉄筋コンクリートと鉄骨の併用構造による地下1階地上5階建て。約4000人の年間利用を想定している。

 

 

 

住宅大手/自社ビルで実績/モデルや実証実験に活用

 

 住宅メーカーでは、積水ハウスと大和ハウス工業がZEBプランナー事業者に登録している(グループ会社は除く、5月31日時点)。

 

 大和ハウスは自社ビルのZEB化を進め、ショールームや実証実験に活用。今年2月には、「大和ハウス佐賀ビル」で電力を自給自足するオフィスの実証実験を開始した。

 

 同社の佐賀ビルは、延べ2444平方メートルの鉄骨造の2階建て。太陽光発電と蓄電池によって、同規模の一般建築と比べ年間約600万円の電力料金を削減でき、電力会社からのの買電に依存しない電力自立システムを導入したほか、消費電力が最も高い空調エネルギーに着目した。

 

 地下からくみ上げた井水と太陽熱によるハイブリッド型の自然空調システムを導入することで、温水を暖房だけでなく、冷房時の除湿にも活用。同規模の一般建築と比べ、空調にかかる電力消費量の約7割削減が実現する。そのほか、自然の力の活用や創エネ・省エネ、それらを適正に制御する「スマートマネジメント」など先導的な環境配慮型設備によって、自社施設で初のBELSで最高ランク(5つ星)を獲得した。

 

 同社は事務所のほか、16年に愛知県津島市の「ロイヤルホームセンター津島店」で、1万平方メートル超の大規模店舗で国内初のZEB認定を取得。

 

 

 

住宅構法で短工期/光熱費削減強みに

 

 積水ハウスは仙台市泉区で昨年9月、東北で初めて、工業化住宅の構法によるNearlyZEB基準を満たす積和建設東北の本社ビルを竣工した。同ビルは、高断熱複層ガラス、高効率空調設備、人感センサーによるLED照明、パネル数288枚の大容量太陽光発電システムの搭載などによって、一次エネルギー消費量77%削減を実現した。同社独自の「フレキシブルβシステム」構法による延べ1986平方メートルの2階建て。

 同構法の採用による高品質・短工期に加え、光熱費削減、快適性の向上といったZEBの強みを武器に、ホテルや高齢者施設、事務所など非住宅分野での受注拡大を図る。


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災害に強いスマートシティ、「柏の葉」先行モデルにデータ活用で電力融通効率化へ

 

スマートシティとは「賢い街」のこと。ITやスマートグリッドなどの環境エネルギー分野、さらにIoTやAIなどの先端技術を駆使した地球環境に優しく、人が住み・暮らし・働きやすい持続可能な街のことである。「スマートシティ」が注目され始めたのは、住宅などのエネルギーマネジメントシステムが脚光を浴びた、東日本大震災の後。電力やエネルギーの危機にも対応できる災害に強い街のイメージである。いつの間にか電力問題が薄れたが、昨年9月の北海道胆振東地震によるブラックアウト(大停電)の衝撃がそれを思い起こさせた。エネルギー危機や災害に強い街が本来のスマートシティなのだと。

都心再開発「日本橋室町三井タワー」

 

自立分散電源を確保/「耐停電」対策、周辺へ供給も

 

 東京・日本橋室町3丁目に3月末、地上26階地下3階建ての大型複合ビル「日本橋室町三井タワー」(延べ床面積16万8000平方メートル)が竣工した。三井不動産が参画した組合施行の再開発事業で、地下に大型ガス発電機(3台)と熱供給システムなどを備えた「日本橋エネルギーセンター」があるのが他と違うところ。周辺の既存ビル約20棟(100万平方メートル、送電線長約8000メートル)に電気、約10棟(約30万平方メートル)に熱(温水・冷水)を供給するプラント設備。豪雨や津波による浸水を防ぐため、鉄筋コンクリート壁を地下から地上2階まで立ち上げた壺型潜水艦構造を採用。4月から電気と熱の供給を開始した。

 

 三井不動産が地元とともに「残しながら、甦らせながら、創っていく」をコンセプトに進めている「日本橋再生計画」の第2ステージを代表する、日本橋のスマートシティ化やグローバル化を加速させる旗艦プロジェクトでもある。大型ガス発電所で発電した電気・熱を周辺地域に供給するのは日本で初めての事業。三井不動産と東京ガスが共同で設立した三井不動産TGスマートエナジーが「日本橋スマートエネルギープロジェクト」として、防災意識の変化、つまり「耐停電」の時代に対応した。それは非常用発電機による非常電源ではなく、多くの人が望む「コンセントが使える、照明が付く、トイレが使える、エレベーターが動くなど、平常時に近い業務や暮らしができる状況」を実現することだ。

 

 電気供給エリア内は「ハイブリッド型自立分散電源」を採用し、平時は中圧ガスによるガス発電電力と系統電力の2系統を使い(安い方を選択しながら)、震災などで系統電力の供給が停止した時は揺れに強い中圧ガスによるガス発電がカバーする形。今後は蓄電池なども活用して、「スマートシティは安全な場所」を目指す。わが国はこれまで系統電力だけだったが、ビルの電源を自立分散型とするだけで非常時の電気はゼロにはならないし、その結果、互助やシェアリングエコノミーの育成につながる効果も期待できる。

 

 「エネルギーの地産地消で省エネ・省CO2を実現するエコフレンドリーな街づくり」。ビルの発電プラントが周辺の街を強くし、エネルギーのスマート化を実現することを示している。

 

 

 

大規模複合開発「プラウドシティ日吉」

 

エリア全体でエネ管理/エネファーム、太陽光発電活用

 

 災害から立ち直りの早いスマートシティが近くにあることは、近隣住民にも安心感を与え、地域全体の防災対応力が高まる効果も期待できる。大規模マンションの場合、大型ガス発電を導入する事例はないが、それに代わるのが家庭用燃料電池(エネファーム)と太陽光発電。系統電力と、個別分散電源であるエネファームの余剰電力、複数カ所に設置された太陽光発電を生かすことで、非常時の「自立分散電源」の確保につながる。

 

 最先端マンションの一つが横浜市港北区箕輪町で開発中の「プラウドシティ日吉」。免震構造のレジデンス棟3棟、総戸数1320戸の住宅と商業施設などで構成する大規模複合開発。事業主は野村不動産、関電不動産開発、パナソニックホームズの3社。

 

 この3社と関西電力と東京ガスのエネルギー2社の計5社は今年2月、「スマート・コミュニティの連携・協力に関する協定」を締結した。分散型電源で発電された電力をエリア全体で融通するなど、エリア全体のエネルギーマネジメントを行う。平常時のエネルギー消費量とCO2排出量を削減するだけでなく、蓄電池や分散型電源を活用して、災害時でも一部施設で電気が使用できるようにするものだ。

 

 これまでも太陽光発電やエネファームはマンションで導入されてきたが、平常時、災害時とも機動的に活用できる形に進化してきたようだ。

 

 

 

「柏の葉」先行モデルに/データ活用で電力融通効率化へ

 

 郊外型スマートシティとして整備が進む代表格が千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」。柏市、三井不動産、柏の葉アーバンデザインセンターが幹事を務める「柏の葉スマートシティコンソーシアム」が整備・運営する街だ。つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅を中心とする半径2キロ圏に住宅、商業のほか、東京大、千葉大、国立がん研究センターなどの拠点施設のほか、新たな研究機関も進出している。

 

 この「柏の葉スマートシティ」が国土交通省スマートシティモデル事業の先行モデルプロジェクトに選定された。AI(人工知能)・IoTなどの新技術の導入で、データ駆動型の「駅を中心とするスマート・コンパクトシティ」の形成を目指す。「モビリティ」「エネルギー」「パブリックスペース」「ウェルネス」の4分野で並行して推進する。

 

 エネルギーではまず「域内施設のエネルギー関連データプラットフォームの構築(21年度本格稼働)」に取り組む。

 

 従来のAEMSシステムを進化させ、「データ蓄積量の増加」「クラウド等を活用し横断的データ活用推進」「データ活用予測による電力融通の効率化」を実現。柏の葉データプラットフォームとの連携で電力データに加え、気象データや人流データなどとも連携し、まちの電力消費量を効果的に減らす施設や省CO2対策に活用していく。

 

 次に「太陽光発電パネルの劣化状況自動検知システムの導入」(20年度本格稼働)を図る。太陽光発電効率化のIoTプラットフォームを構築することで、パネルごとの発電状況を管理して汚れや劣化状況の自動検知を行い、発電効率を維持・改善させていく。


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