シニアの住まい特集 1/3

 

高齢者の人口、30年で1.3倍に、求められる良質な住宅

 

 国立社会保障・人口問題研究所が15年国勢調査を基に推計した2045年までの将来人口推計によると、30年以降は全都道府県で人口減少するものの、65歳以上の人口は大幅に増加。東京都、神奈川県、沖縄県では15年の1.3倍を超える。45年の人口は東京都を除いて15年時点よりも少ない。45年の65歳以上の割合は、秋田県で50.1%、最も低い東京都でも30.7%になり、75歳以上の割合は43道府県で2割を超える。シニアの住まいは今後大きな課題になるとともに、住宅・不動産業界にとっては社会貢献につながるビジネスといえる。

 

 

 

さまざまな業種が参入/需給にミスマッチも

 

 人口減少が本格化するなか、シニアの住まいに参入する企業は多い。

 

 2000年にはじまった介護保険制度を受けて、有料老人ホームや介護事業には医療・福祉関係だけでなく、飲食などさまざまな業種から多種多様な企業が参入した。制度開始時に比べると65歳以上の被保険者数が1・6倍に、サービス利用者数は3・7倍に拡大した。

 

 2011年にはサービス付き高齢者向け住宅制度がスタートした。サ高住は、安否確認サービスと生活相談サービスを、すべての入居者に対して提供することで、住宅に住みながら見守りサービスが受けられることが特徴。これまでも高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅の登録制度があったが、サービスの提供は登録条件に含まれていなかった。

 

 サ高住は、手厚い補助金や税制優遇が用意されたこともあって、1年半で10万戸を超えた。土地の有効活用策としても注目を集めた。(1)段差のない床、手すり、車いすでも利用しやすい廊下幅といったバリアフリー(2)水洗便所・洗面設備・台所・収納・浴室を各専用部分に備える(3)各専用部分の床面積は原則25平方メートル以上と、住宅としての機能を重視した仕組みではあったものの、専有部に浴室などを持たない18平方メートルタイプも認められた。

 

 「介護施設に入所するほどではないが、ひとり暮らしに不安がある」「ある程度の介護は必要だが自由な住宅で暮らしたい」というニーズに対応するとともに、訪問介護や通所介護活用を促し急増する介護費用を抑えようという狙いもあった。

 

 だが、供給されたサ高住の大半は18平方メートルタイプ。供給が集中したことで、家賃を抑えて介護保険収入に依存する事業者も目立った。

 

 こうしたサ高住は、大きな介護収入が期待できる要介護度の高い人のみを受け入れ、共用部や併設する介護事業所には「まるで野戦病院」といった状況が出現。居宅サービスを選択できなくする「囲い込み」や、過剰な介護サービスを提供する「介護漬け」もみられるようになり、「自由な住宅で暮らしたい」という入居者が敬遠する状況もみられた。

 

 地価水準の低い郊外部、公共交通や医療機関へのアクセスの悪い地域に集中する傾向にあった。こういったエリアでは小規模多機能型居宅介護などサービスが不足していたり、需給のミスマッチ、遠隔地からの入居による介護保険財政などさまざまな影響が生じ、補助制度などの改正につながった。

 

 

 

建物、サービスで差別化

 

 こうしたなか、住宅・不動産系企業による有料老人ホームやサ高住は、住宅としての質や、独自のサービスが特徴だ。

 

 介護事業者によるサ高住の多くが18平方メートルタイプのみであるのに対して、25平方メートル、50平方メートルなどの間取りを用意したり、専有部や共用部のつくりなどに住まいづくりのノウハウを投入していることが特徴だ。

 

 サ高住でも、特定施設の指定(特定施設入居者生活介護)を受けているものも少なくない。手厚いサービスを売りにしたり、身体状況の悪化を防ぐための工夫などさまざまな工夫を凝らす。

 

 サ高住、有料老人ホームともに要介護者をターゲットにしたもののほか、生活面の不安を解消しつつも楽しい生活を送ってもらうアクティブシニア向けも目立つ。