2019年暑中特集 12/14

市場の展望と課題 【賃貸住宅】

アイデア次第で高稼働

「空室・遊休施設を収益化」

 

 賃貸住宅業界の最大のテーマは空室対策。内需の代表格であるだけに人口減少という社会構造変化の直撃を受ける領域の一つだ。晩婚と生涯未婚、伴侶を亡くした独居老人……。東京を中心に単身世帯が当面増えるが賃貸管理業界は戦々恐々。空き家問題への対応に加え、来年4月に改正民法を控えている。過渡期の賃貸管理業界を展望する。

 空き家の増加は、経済価値の喪失だけでなく地域社会も不安にすると社会インフラの観点から空き家・遊休施設を再生する動きが活発になっている。単なる再生ではなく地域コミュニティを巻き込んで持続的にキャッシュを生み出す仕組みが需要だ。古民家や駅ガード下、使われなくなった古い蔵を店舗や宿泊施設に転用したりする例もある。

 

 大都市部では、遊休施設を時間貸しで活用する例が増えている。ハウスプラザ(東京都足立区)は、東京メトロとの協業でレンタルスペース「むすべやメトロ綾瀬」を綾瀬駅の高架下にオープンした。約30年間賃借していた店舗が退去したあと1年半借り手が見つからなかったことで発想を変えて20人ほどが収容できる時間貸しの空間に仕立てた。パーティーや撮影会、会議、イベント、展示会などでの利用を見込んでおり、東京メトロの電車車両に使われていた車両部品を利用したり、電車内を模した車両ブースを設けて室内を演出。同社では、「遊休不動産の流動性が上がり、町の廃れを防止できる」とする。日本橋では築91年の古民家を1棟貸し「むすべや日本橋まどか」を運用。想定ニーズとしての撮影需要に対応できるよう企画段階でプロカメラマン10人と建築家によるディスカッションし、テスト撮影も行い室内を仕上げたという。撮影のほかパーティーや会議、イベント、展示会などでも使える。

 

 地方での遊休施設の使い方として、不動産情報サイト運営のライフルでは、地方型のシェアサテライトオフィスと宿泊施設を備えた共同運用型コミュニティの運営を本格的に始めた。地元企業や自治体を通じて使われていない建物を募集し、ライフルとの賃貸借契約で提供する。フリーランスや働き方改革への対応、スタートアップ企業の拠点、大企業のサテライトオフィス・社員研修施設などの利用を見込み、2023年までに全国100拠点の展開を計画している。引き続き大都市であっても地方であっても地元需要を深堀りすることで“死んだ施設”の収益化につなげる試みが続きそうだ。

高齢者・外国人の対応急務

業界団体、中期計画で指針」

 

 賃貸管理各社は、外国人と高齢者といった居住弱者を意識した事業展開も迫られている中で、入居を好まない家主をどのように説得するか。これからの空室対策の肝の一つ。高齢者の入居を支援するR65不動産(東京都杉並区)の山本遼社長は、対応ポイントは3つとする。(1)孤独死を長期化させない(2)入居者の身体的変化の感知(3)金銭トラブルの未然防止--である。保険や見守りなどをベースに賃貸運営することだと訴える。

 

 空室に次いで頭を悩ますのが家賃滞納。なんとか満室稼動としても家賃が入ってこなければ入居していないのと同じ。滞納問題がこじれて事件化するケースが少なくないだけにハトマーク支援機構(東京都千代田区)では、家賃収納業務のアーネット(福岡市博多区)と業務提携して会員向けに「家賃収納管理支援業務」の提供を始めている。すでに滞納が発生している事象に焦点を当てて成功報酬で展開し。賃貸住宅にとどまらず店舗、事務所、工場、駐車場、地代などに対応している。

 

 改正出入国管理法が外国人の単純労働者の受け入れに道を開き、永住権を持つ人とは違い持ち家発想ではなく賃貸住宅を選択することで需要はある。家主が外国人を拒む理由で最も大きいのが言葉の問題、次に生活習慣の違いに端を発した迷惑トラブルの発生を嫌う。業界団体の全国賃貸不動産管理業協会は、グローバルトラストネットワークス(東京都豊島区)と業務提携して外国人向けの生活総合支援サービスを導入。英中など13言語に対応し、未成年の申し込みも受け付ける。ゴミの分別や騒音など入居中のトラブルへの対処として、専門性を持ったスタッフが通訳・翻訳で改善する仕組みだ。

 賃貸ビジネスに携わる人材のボトムアップも欠かせない。日本賃貸住宅管理協会(日管協)は、重点テーマとして、賃貸住宅管理業の法制化と賃貸不動産経営管理士の国家資格化を掲げており、政府の不動産業ビジョン2030に管理の法制化にも盛り込まれていると早期実現に期待する。20年からの5年ほどを見据えた中期運営方針を策定するなど人口減少に伴う社会構造の変化や経済環境の変化に対応する。


PR