2019年暑中特集 13/14

市場の展望と課題 【オフィスビル】

働き方改革で需要広がる「絶好調からやや減速か」

 

 東日本大震災(2011年3月)を経験して以来、オフィス市場では耐震性や非常時の電力供給などに対応したBCP(事業継続計画)機能に優れたビルへの志向が強まった。高度経済成長期に建てられた大型ビルは半世紀以上を経過し、震災で傷んだビルも多かったことから再開発・建て替えブームを迎える。オフィス市況は2014年頃から徐々に堅調さを取り戻し、空室率の低下が進む一方で、根強い需要を背景に新規賃料が上昇し始める。リーマンショック(2008年9月)で急落した既存ビルの賃料も徐々に回復軌道に乗った。ここ数年は東京都心部を筆頭に空室率は2%から1%前後という絶好調水準が続く。折からの働き方改革で、人材確保のためにも快適な本社オフィスづくりが欠かせなくなるのと同時に、テレワークに対応したシェアオフィスやビジネス創造を目指すイノベーション型オフィスという需要も加わった。市況に不安要因は当面、見当たらないように映るのだが…。

東京23区の需給動向

 

 オフィス市況の先行きを占う最大の指標は需給の関係だ。森ビルの調査によると、東京23区内の大規模(延べ床面積1万平方メートル以上)オフィスビルの供給量実績は、1986年以降、年平均103万平方メートルだった。最近では2012年(175万平方メートル)に大量供給があってから過去平均を超えたのは15年(109万平方メートル)と18年(141万平方メートル)だけ。19年以降は99万平方メートル、172万平方メートル、57万平方メートル、50万平方メートルときて23年に132万平方メートルになる見込みだ。年によってバラツキはあるが、5年間の平均は102万平方メートルで、過去平均並みかやや少ない水準となる。

 

 エリア別では都心3区の供給割合は20~23年が毎年7割以上となり、過去平均を上回る。特に増加量が顕著な「新橋・虎ノ門エリア」は大規模開発が進むことで、エリア競争力が大きく上昇することが想定される。

 

 一方、企業のオフィスニーズはどうか。森ビルが昨年10月、東京23区に本社がある資本金上位1万社を対象にした調査では、「新規賃借の予定がある」企業は27%と、14年(20%)以降年々増加傾向にある。その新規賃借予定ありを面積の内訳で見ると、拡大が64%、変わらないが25%、縮小が10%と「拡大」が年々増加。「企業の拡張意欲はおう盛で、オフィス需要は堅調に推移する見通し」と読む。

 

 また、新規賃借する理由は、6年連続で「新部署設置・業容拡大・人員増等のため」が1位をキープ。以下「立地の良いビルに移りたい」「1フロア面積が大きなビルに移りたい」「設備グレードの高いビルに移りたい」「耐震性の優れたビルに移りたい」などポジティブな移転理由が続いた。 18年末の空室率は前年末より0・7ポイント低い1・9%と、ITバブルで沸いた2000年(1・2%)以来18年ぶりの1%台となった。19年末は2・0%、20年末は2・3%と小幅上昇すると見ている。

中長期の賃料予測

日本不動産研究所と三鬼商事で組織するオフィス市場動向研究会。年2回、東京ビジネス地区(都心5区)大阪ビジネス地区(主要6地区)名古屋ビジネス地区(主要4地区)の大・中型ビルの成約事例を基に、マクロ経済データの将来見通しを考慮しながら、賃料予測を算出している。

 

 今年4月に公表した「東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2019~2025年)・2019春」によると、東京ビジネス地区は「19~20年に新規大量供給が予定されているが、新規供給の多くが竣工前にテナントが内定するなど、強い需要を背景に賃料上昇が続く。21年以降は調整に入り、24年以後微増する」とした。

 

 大阪ビジネス地区は「22年まで新規供給が少なく強い需要が継続するため、空室率が低下、賃料上昇が続く」、名古屋ビジネス地区は「新規供給が少ない中、強い需要が続くため、空室率は低下し、賃料上昇が続く。23年から空室率は緩やかに2%台で上昇する」と、それぞれ東京より堅調に推移すると予測した。

 

二次空室の影響

 

 CBREは7月24日、全国13都市のオフィスビル市場動向(19年第2四半期)を発表した。東京23区の東京オールグレードの空室率は0・7%(前四半期比0・1ポイント上昇)で、2年ぶりに上昇した。主因は18年竣工ビルへテナントが移転した後の二次空室が発生したこと。また、新築ビル1棟が空室を残したまま竣工したため、グレードAの空室率も0・8%(前四半期比0・2ポイント上昇)と5期ぶりに上昇するなど、東京市場に小さな「異変」が表れた。

 

 19年と20年に竣工するグレードAの新規供給は計30万坪。6月末時点のテナント内定率は19年竣工ビルで9割超、20年竣工ビルで6割超とプレリーシングは進んでいるが、内定テナントの多くは既存ビルからの移転で、後継テナントが見つからないリスクが高まっている。景気見通しに対する不透明感が高まる中で、館内増床ペースに一服感も出ている。既存ビルでの二次空室の発生が今後も空室率を押し上げる可能性が高いとして、CBREでは東京グレードA賃料は、「向こう1年間で1・7%下落する」と予想している。

 

絶好調状態が続いたオフィス市場もいよいよ変化の時が来たことを示しているようだ。 


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