2019年暑中特集 14/14

市場の展望と課題 【インバウンド】

 活況ホテル投資コト消費地方にも経済効果」

 

 訪日外国人客数の増加が続いている。政府は、2020年の訪日客数4000万人という高い目標を掲げて政策支援を強化した結果、18年は3119万人と6年連続過去最高を更新した。19年も上半期で1663万人と前年を上回るペースで推移する。本格的な少子高齢・人口減少社会を迎えるなか、インバウンドビジネスは数少ない成長分野である。住宅・不動産業界でも、ホテルや商業など訪日観光客の動向は無視できない。

訪日客数過去最高に

 

 今年の観光白書によると、2018年の訪日外国人旅行者による消費額は4兆5189億円だった。宿泊費は3・6倍と、外国人旅行者数の伸びに近いが、娯楽サービス費は5・9倍と大きく増えた。買い物代(4・6倍)や飲食費(4・4倍)も拡大した。

 

 外国人旅行者の訪問先を見ると、12年には三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫)のみを訪問するケースが過半で、地方を訪れる割合は45・8%に過ぎなかった。これが、15年には51・8%を超え、18年には57・7%へとさらに高まった。人数で見ると、地方を訪問する旅行者は1800万人と、三大都市圏のみを訪れる人数(1319万人)の1・4倍だ。

 

 日本を訪れる楽しみは、従来の「買い物」「和食」に加えて、「スキー・スノーボード」「温泉入浴」「自然体験ツアー・農山漁村体験」「ゴルフやマリンスポーツなどその他スポーツ」と多様化した。

 

 こうした「コト消費」を行う旅行者は、地方の訪問率が高く、スキー・スノーボードでは87・4%、温泉入浴では75・0%と、全体平均の54・3%を大きく上回る。スキー・スノーボードを実際に体験した訪日客1人当たり旅行支出額は22・5万円。体験なしの15・2万円を大きく上回る。

  地方での消費額は増加し、15年から18年の3年間で1・6倍になり、その額は1兆362億円にまで拡大した。

 

ホテル投資9倍に

 

 12年に1121億円だったホテル、旅館など宿泊施設の建築物工事予定額は、18年には約9倍の1兆86億円に増加。棟数でも約2・7倍、床面積は約5・9倍になった。

 地方別の工事予定額は、北海道52・5倍、近畿14・8倍、九州12・9倍となるなど、全ての地方で伸びた。

五輪後も続く増加「地方受入れ拡大がカギ」

 

 ビジット・ジャパン事業がはじまった2003年時点で521万人だった訪日客数は、10年に約861万人と増加。東日本大震災の影響で11年は落ち込んだものの、ビザ発給要件の緩和や為替の影響もあって13年には1000万人を初めて超え、15年には2000万人に迫った。

 

 五輪開催後の21年以降の訪日客数増加を疑問視する声も聞かれるが、そもそも旅行者数は、日本だけでなく世界全体で増加傾向にある。国連世界観光機関(UNWTO)によると、世界の海外旅行者数は2016年に12・3億人と2000年約6・7億人からほぼ倍増。現在も増加傾向が続く。

 

 海外旅行者数は経済成長と連動するとされ、経済成長が著しいアジア諸国の伸びが目立つ。

 

 海外渡航自由化によって約50年前の日本人が、初めての旅行先にハワイや香港を選んだように、アジア諸国から比較的距離的の近い日本が渡航先に選ばれやすい。加えて、13年にユネスコ無形文化遺産に登録された和食、降雪があるなど四季の変化と豊かな自然がある。世界的人気のアニメ、ゲーム、化粧品、電化製品なども日本を訪れる動機になるのだ。中期的には訪日客数は増加傾向が続く可能性が高い。

 

アジアに分散か

 

 ただ、18年の訪日客数の伸びは、相次ぐ自然災害の影響もあり8・7%と2桁に届かなかった。

 みずほ総合研究所によると、国籍別に見ると韓国、台湾、香港は前年実績を下回り、4000万人達成に黄信号が点ったとする。旅行者の関心が東南アジアやマカオ、中国などに広がったことなどが要因だとする。

 世界経済の緩やかな減速が想定され、割安なベトナムやタイにシフトする傾向が続く。中国も米中摩擦の余波など、下振れリスクがある。

 

 その上で、人数目標よりも質を重視し、地方圏でのインバウンド消費額増加を目指すべきだ都市的。周遊型観光スタイルの定着、地域独自のコト消費を中心にした観光資源創出や、交通インフラや宿泊施設といった受け入れ環境の改善が必要だとしている。



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