2019年暑中特集 6/14

住宅・不動産業の未来 【戸建て】

資産の維持緑化がカギに、コスト要因から付加価値へ

 

 サステナビリティ(持続可能性)という言葉とともに、2030年までの国際目標として掲げたSDGs(持続可能な開発目標)が注目を浴びている。投資面でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する動きはもはや世界的な潮流だ。緑化を進めたマンションはそうでないものより価格が落ちにくい、というデータも出ているとのことだ。これまでコスト要因とみなされがちだった緑化計画も、CASBEEやABINCといった環境に配慮した不動産の認証制度の整備が進み、資産価値の維持に欠かせない要因に転換されつつある。住宅供給や街づくりでも、環境への配慮は日々進化を見せている。

住宅大手/生物多様性を追求植栽に在来種狭小対応も」

 

 大手住宅メーカー各社は、都市の生物多様性保全に配慮した商品開発を進めている。

  積水ハウスは2001年に生物多様性に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画を開始。「3本は鳥のために、2本は蝶のために」のスローガンのもと、地域に合った原種・在来種を植樹することで生態系の再現・維持を目指してきた。注文住宅の植栽にとどまらずマンションや分譲住宅でも推進している。

  旭化成ホームズは17年10月、高木・中木・低木・地被植物を組み合わせた植栽アイテム「まちもりポット」などの外構商品を本格的に展開した。静岡県富士市の同社富士支社の敷地内の工場跡地1万570平方メートルを造成した環境再生ゾーン「あさひ・いのちの森」で得た知見をもとに、鳥類をはじめ多様な生物を都心の戸建住宅に呼び込むことを目指し、開発した。

 いきもの共生事業推進協議会(中静透代表理事)は生物多様性に配慮したオフィスビルや商業施設を対象に2014年に「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」を開始、17年に戸建住宅団地・街区版などを新設した。同部門の認証第1号は、住友林業が神奈川県秦野市に開発した「フォレストガーデン秦野」(総戸数43戸)だった。

 「フォレストガーデン秦野」は、傘下の住友林業緑化が郷土種・在来種を重視し、自然再生を目指す緑化計画の独自指針「ハーモニックプランツ」をもとに植栽企画・施工を手掛け、湧水を生かした持続可能な水循環への配慮などが決め手になった。

 翌18年度は、積水化学工業が埼玉県朝霞市の東京工場跡地を複合開発している「あさかリードタウン」の戸建分譲住宅地「スマートハイムシティ朝霞」(総区画数131区画)が取得。開発地域の約25%を緑地とするなどの緑化方針が評価された。

 大和ハウス工業が神奈川県藤沢市の旧県立藤沢高校跡地で開発している戸建分譲住宅地「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」(全114区画)も、宅地内の道路境界線から50センチを緑化するなど、「街づくりガイドライン」を策定。ヤマボウシやクロガネモチといった郷土種をシンボルツリーやサブツリーに採用。景観や緑化保全など環境面の複合的な取り組みによって、県の「環境共生都市づくり事業」の認定を受けている。

 

大規模戸建分譲開発も「雑木林を共有地に/保全活動でコミュニティ醸成」

 

 環境に配慮した共有部を付加した大規模な戸建分譲住宅地を開発する動きも少しずつ広がっている。大手住宅メーカーで構成する住宅生産振興財団(竹中宣雄理事長)は、街区の中央部分に共同所有の雑木林を創出する「つなぐ森」プロジェクトを立ち上げた。今年、相模原市中央区で大手5社が、茨城県つくばみらい市で大手7社が参画、戸建ての分譲を開始した。

 

 つくばみらい市に開発している「つなぐ森みらい平」(全68区画)では、開発用地約1万9500平方の約2割に約500本を植樹。雑木林を舞台にワークショップや保全活動を行うことで、コミュニティの創出を図る。

 「つなぐ森」では、各戸の境界に門や塀など視界をさえぎる“壁”やアスファルトの道路を設けない街区設計も特徴だ。住民の目が行き届くことで防犯・防災面に配慮するほか、自然浸透性の雨水処理を中庭中枢部に施すことで、公共下水道に与える負担の減少を図っている。

 

中小工務店も参画「地域材も利用促進」

 

 地域の工務店が協力しあい、“里山のある郊外の住宅地”を分譲開発する事例も出ている。今年6月、茨城県産材普及促進協議会(中山公子会長)が、茨城県つくば市で戸建住宅地「つくば春風台ヒュッゲガーデン」(全75区画)の分譲を兼ねた「里山住宅博inTSUKUBA」を開催。今年12月末まで、地元の21工務店が参画、建て売りの23棟をモデルハウスとして公開している。

 

 茨城県産材の使用の促進を目指し、モデルハウスに県産材を50%以上使用することを参加条件に、総合展示場などへの出展や自社での分譲住宅の供給が困難な工務店でも、街づくりに参画できる仕組みを構築した。

 「つくば春風台ヒュッゲガーデン」は、2万5684平方メートルの景観協定を締結。斜面地に果樹などを植え里山を創出するほか、コモンエリア、市に寄贈した集会所など共同所有地1万1465平方メートルを設けている。

 引き渡し後は月3000円の共益費から、斜面地など共有地の管理費を捻出し、最初の1年は地元の造園業者が行うとともに、周辺の農家などと連携しながら、住民みずからも管理する。


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