2019年暑中特集 9/14

市場の展望と課題 【分譲住宅】

 不動産経済研究所発表の首都圏マンション市場動向(2019年上半期)によれば、2019年1月~6月の供給は、前年比13・3%減少の1万3436戸。上期として3年ぶりに減少し、初月契約率の平均は66・5%で前年同期より0・2ポイント%ダウンした。1戸当たりの平均価格は前年同期比2・9%上昇の6137万円と7年連続上昇し1990年の6123万円以来久々に6000万円台を突破した。好不調の目安とされる契約率70%を割り込むのは4年連続であり、価格高止まりの中での販売が容易でないことを示している。(岡本郁雄)

価格は高騰、一次層は減少「“魅力”が販売を左右」

 

新築上回るスペックの中古も

 一方、19年1月~6月までの首都圏の中古マンションの成約件数は1万9947件で新築マンション供給戸数を大きく上回る。

  首都圏中古マンションの成約平均価格も前年同月比1・3%上昇の3361万円と堅調だ(東日本不動産流通機構・月例速報)。

 

 リクルート住まいカンパニー発表の「住宅購入・建築検討者」調査(2018年度)によれば、中古マンションの並行検討者は、44・1%。加えて、2019年4月からは消費税率10%の新築マンション(引渡しが19年10月以降)も登場し中古市場に目が行きやすくなっている。

 

 用地価格の上昇や建築費の高止まりの中、販売価格を抑えるため中古物件の方が新築よりもスペックで上回るケースも目立つ。

 今年5月1日の30代の日本人(全国)人口は約1443万人(統計局データ)でこの10年間で395万人も減少している。

 販売好調物件

 

 一次取得者需要が減少する中で販売が好調なのは、立地に加え商品企画に魅力があるマンションだ。

 

 上半期の好調物件として真っ先に名前が挙がるのが「パークコート文京小石川ザタワー」だ。文京春日・後楽園駅前地区市街地再開発事業による「春日」駅直結の地上40階建て総戸数571戸(販売戸数384戸)。「春日」駅の改札を出てすぐに住宅棟のエントランスがあり専用のエレベーターで6階のグランドロビーにダイレクトにアクセス可能。販売価格1億超中心にもかかわらず資料請求件数は1万件を超え300戸超が契約済みで最終期の販売を残すのみだ。

 

 九州初の地下鉄駅直結・最高層のタワーレジデンスである地上40階建て免震タワー「Brillia Tower西新」(総戸数306戸)も好調で2期まで販売が終了し資料請求件数も7600件を超える。

 

 「コスギサードアヴェニューザ・レジデンス」「ザ・パークハウス本厚木タワー」「千住ザ・タワー」「MID TOWER GRAND」「ブランズタワー大船」などの再開発タワーの売行きは地元層の支持が厚く概ね順調だ。「南阿佐ヶ谷」駅徒歩1分の「プラウド南阿佐ヶ谷」(総戸数99戸)、「恵比寿」駅徒歩4分の「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」(総戸数88戸)は、魅力的な立地だけでなく居心地の良い専有部が評価されている。「プラウド南阿佐ヶ谷」は、内廊下設計のワイドスパンに加えLD&居室の天井高を約2・65~約2・75メートル、「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」は、リビングの天井高約2・62~約3・15メートルを確保している。都心・城南・城西エリアは価格上昇で販売残も目立つが2物件とも完売間近だ。

暮らしをイメージ/手が届く実需向け

 

 郊外エリアで好調なのは、「シントシティ」(「さいたま新都心」駅徒歩5分、総計画戸数1400戸)、「プラウドシティ吉祥寺」(「吉祥寺」駅バス6分バス停0分、総戸数678戸)のような都心通勤がしやすく実需ファミリーに手が届きやすいマンションだ。

 

 両物件ともファミリー層向けの70平方メートル台3LDKプランが中心で、子育て層でも手に届きやすい5000万円台で買える価格設定だ。コクーンなど大型商業施設で買い物ができる(シントシティ)、井の頭恩賜公園が身近でスーパー&カフェ併設(プラウドシティ吉祥寺)など暮らしのイメージがしやすい。

下期には注目物件が続々価値創造で「新たな市場」創出」

 

 2019年下期には、東京五輪選手村跡地の大規模開発「HARUMI FLAG」の販売がスタートする。

  2万2000件超の物件エントリーで4700組を超える見学者数。第1期600戸の供給は、話題性に加え街区全体の美しさや85平方メートル超中心の専有部のゆとりが一次取得層だけでなく持ち家層にも評価されているからだろう。

 

 海に面した「SEA VILLAGE」街区にはスロップシンクがついているが、戸あたり数十万円のコストのため現在は、ほとんど見かけない。建築費上昇で設備スペックのダウンは目立ち、1個数千円程度のドアキャッチャーがリビングにない物件もある。

 

 「ディアナコート目黒」、「ピアース東北沢」など都心・城南で供給を続けるモリモトのマンションの売れ行きが堅調だが、デザイン性の高い共用部やワイドスパンの間取り、石目調床タイル敷きの廊下や洗面化粧室など「上質な暮らし」の提案ができているからである。

  家が余る時代で重要なのは、価値創造によって新たな市場をつくることだ。

  上半期で最も印象に残ったモデルルームは、渋谷区役所の建て替えプロジェクトの定期借地権付き分譲マンション「パークコート渋谷ザタワー」だ。

 代々木公園、明治神宮の緑を抱く地上39階建てのタワーレジデンス(総戸数505戸)。印象的なアーチ状の外観デザイン、代々木の森を見晴らすパークビューラウンジや複数のアーティストの作品を展示するラウンジはまるでギャラリー。住空間も斬新で、販売坪単価おおよそ750万円の価格設定で200戸を超える申し込みは、唯一無二の空間への期待の表れだろう。

 

 下半期は、「HARUMI FLAG」に続き、「ブランズタワー豊洲」(総戸数1152戸)、「SHIROKANE The SKY」(総戸数1247戸、非分譲477戸含む)といった大規模マンションの供給が続く。「ここで是非とも暮らしたい」と思われるマンションの競演を下半期も期待したい。


岡本郁雄(おかもと・いくお) 不動産領域のコンサルタントとして、マーケティング業務、コンサルティング業務、住まいの選び方などに関する講演や執筆、メディア出演など幅広く活躍中。延べ3000件超のマンションのモデルルームや現地を見学し、マンション市場の動向に詳しい。ファイナンシャルプランナーCFP、中小企業診断士、宅地建物取引士。神戸大学工学部卒。岡山県倉敷市生まれ。

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