防災特集 3/5

ゲリラ豪雨、水害を念頭に

 宅地建物取引事業者 「問われる被害予測」情報収集と提供で信頼度向上

 近年、地球温暖化に伴いゲリラ豪雨による水害のニュースが絶えない。昨年7月は西日本を中心に中部地方、北海道と全国幅広い範囲が集中豪雨に見舞われ、床上・床下浸水はもとより、川の氾濫で家が流されてしまうなど住まいを奪われるケースが少なくない。不動産取引の契約時に浸水や地すべり、地盤の陥没といった可能性についての説明がなかったとの指摘がこれから増えるかもしれない。賃貸住宅ならば入居者は別の地域に移ることも可能だが、賃貸オーナーと分譲住宅の入居者の損失は計り知れない。地域のリスク情報の取り扱いが注目される時代に突入してきた。

 

ハザードマップ

 

 災害リスクに対応したサービスの提供は民間企業で相次いでいる。

 

 ヤフーは今年2月末に、災害発生時に適切な行動ができるよう同社が提供するスマートフォン向け防災通知アプリ「Yahoo!防災速報」に避難場所の登録や防災用品の確認など防災関連の情報をまとめた新機能「防災手帳」を付け加えて提供を始めた。

 

 同社の意識調査(2018年)で「災害への備えは十分ですか?」という問いに70%以上の人が備えていないことが分かったことを受けて、身の回りの防災関連情報を一つにまとめた機能「防災手帳」を投入したという。

 

 主な機能の一つハザードマップ機能では、各自治体が作成した各災害の被害が及ぶ想定範囲、被害想定の程度、避難の道筋などを表した地図(ハザードマップ)が閲覧できる。避難場所リストとして地震や津波など災害の種類によって異なる場合もある避難場所を最大10カ所登録できる。

 

 損害保険ジャパン日本興亜は、公的機関などが開示するハザードマップに同社の保険金支払実績データを加えたオリジナルのハザードマップ「THEすまいのハザードマップ」を今春から提供を始めている。

 

 地震発生の確率や洪水のときに想定される浸水の深さや、土砂災害危険箇所などの自然災害リスクをGIS(地理情報システム)で集約して可視化しており、住所の入力によりその場所のリスクをピンポイントで判定・表示できる。緊急時の最寄りの避難施設情報やリスク度合いに応じた補償内容の表示も可能だとしている。

 

義務付けの気配/重説で危険度の提示

 

 一般的に不動産業界は、危険情報を提供することで取引対象の不動産の価値が損なわれることを恐れ情報提供に後ろ向きだと指摘されてきた。 しかし、今後はそうもいかない雰囲気がじわりと強くなり始めている。

 

 

 今年7月の全国知事会で三重県の鈴木英敬知事が不動産取引のときに契約相手に浸水想定区域を記したハザードマップを提示することなどを提言して注目を集めているためだ。宅地や建物の取引の際に行う重要事項説明に義務付ける宅建業法改正が視野に入る。これからの不動産取引では、自然災害のことを踏まえながら顧客対応することを迫られそうだ。

 

 

 国土交通省は7月26日、不動産業界団体向けに「不動産取引時のハザードマップを活用した水害リスクの情報提供について」と題した依頼書を出した。同省は、不動産関連団体の研修などの場で水害リスクに関する情報の解説などを順次実施しているが、水害リスクについて団体加盟の宅建事業者に周知するよう訴えた。不動産取引の契約の際に消費者が水害リスクを把握できるよう取引の対象となる宅地や建物がある市町村が作成・公表する(洪水・内水・高潮)ハザードマップを提供するよう求めている。

 

 

 他業界に比べて危機意識に対する行動が遅れ気味の不動産業界も動きが見られる。アットホーム系の不動産流通研究所はこのほど特別編集本「住宅・不動産会社が知っておくべきハザードマップ活用 基礎知識」を発刊。東京大学大学院の池内幸司教授と不動産鑑定士ときそうの吉野荘平社長が監修した。巨大地震や豪雨による浸水被害、土砂災害などが頻発するなか、災害の時に対応できるよう「ハザードマップ(被害予測地図)」を編集。災害リスクの把握により被害の軽減につなげてもらいたいとする。

 

 資産価値に影響すると考え、不動産取引でハザードマップを使いリスクを説明することに気後れする不動産事業者は少なくないが、資産価値を失くすことと命を失くすことを天秤にかけているビジネスは存在しない。住宅・不動産業界の意識変化も問われてきそうだ。


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