住生活月間 特集 3/9

制度整備進むも、あい路残る

マンション建て替え

 

必要性が叫ばれながらも、なかなか進まない分譲マンションの建て替え。国土交通省の調べでは今年4月時点で建て替え工事が完了したものは244件(阪神淡路大震災による被災マンションを除く)に過ぎず、実施中のものを含めても267件と、650万戸を超えたマンションストックに対してあまりにも少ない。耐震基準を満たさない旧耐震ストックは約104万戸、築40年を超えるものだけでも81万戸を数える。建て替えが進まないのは、合意形成が必要なことに加えて、制度的にも課題が残る。

 

 

既存不適格や複雑な権利

 

 

これまで成功したマンション建て替えの多くは、建て替え後に生まれる保留床を売却し、費用の大半を捻出したケースが多いが、こうした手法を使えるのは都心部や駅近で容積率に余裕があるごく一部にとどまる。

 

 今後建て替えが必要となるマンションの多くは、容積率に余裕があってもマンション需要が限定的な郊外の団地や、都心部では容積に余裕がないものが中心。建設後に、容積制度や斜線規制が導入され既存不適格となったものも少なくない。

 

 容積に問題がなくても敷地が借地権だったり、容積に余裕があっても団地一括建替え決議が使えない社宅やテラスハウスを含む団地だったりとさまざまな困難を伴う。

 

 権利関係が複雑だった団地を全員同意によって建て替えた阿佐ヶ谷住宅(野村不動産)、全部買収方式による烏山第一団地(セコムホームライフ)など一括建替え決議ができない団地を再生したり、借地権マンションを所有権マンションに建て替えたレジデンス丸平(旭化成不動産レジデンス)など、わずかに事例はあるものの、どこでもできるものではない。

 

 国はこうした状況に手をこまねいているのではなく、マンション建替え円滑化法の整備や改正、都市開発法(再開発)によるマンション建て替え、敷地売却制度の導入など手を打ってきた。団地など複数棟型マンションでも、同時並行的に敷地売却決議を行うことで敷地全体を売却できる仕組みも整備した。

 

 まだまだ使い勝手の問題や、新たな制度をもっても建て替えが困難な「制度上の想定外マンション」は少なからず存在するものの、徐々に制度上のあい路は解消しつつある。都市開発法は“想定外”団地でも全員同意でなくても建て替えが可能にしたが、自治体予算の制約や本気度に左右される可能性がある。

 

 敷地売却制度も、都心部でいくつかの活用例がある程度。本格的な活用はこれからである。

 

 

知恵絞り課題を克服/隣地一体開発、一部敷地売却も

 

 

合意形成というハードルのほかに、都心型マンションでは容積不足や日影などによる既存不適格・建て替え後の戸数・床面積の確保といった課題がある。マンション建て替えに伴う容積緩和といった仕組みも用意するが、容積緩和の恩恵を受けるには一定の敷地面積が必要となる。

 

 事例はまだ少ないものの、容積などに課題のあるマンション建て替え手法に、隣地との共同化といった手法がある。隣地との共同化によって、斜線や前面道路といった制限をクリアするなど容積を消化しやすくする。

 

 地下鉄白金高輪駅徒歩1分にある「パシフィック高輪マンション」と「トーア第二高輪マンション」は、2つのマンションと隣接3敷地を活用する建て替え事例。大和ハウス工業が参加組合員として参画している。敷地一体化によって容積を確保するとともに、総合設計による割増しも活用して地上35階地下3階建て284戸のタワーマンションを開発する。

 

 日鉄興和不動産は「浜町ダイヤマンション」の建て替えに参画。地区計画を活用して容積緩和を受けても建て替え後の延べ面積はほとんど増えない条件だったが、隣地の戸建て4区画と一体化することで、大きな容積緩和が適用できるようになった事例だ。

 

 ほかに三菱地所レジデンスによるメゾンドール早稲田(東京都新宿区)、東京建物によるハイツ駒込(東京都文京区)などの建て替え事例があり、じわり増えている。

 

 郊外・駅遠マンションでは、需要の面からデベロッパーが敬遠しがち。容積に余裕があれば敷地の一部を戸建て用地などとして売却して、建て替え費用の一部に充当するといった手法が考えられる。こうした手法では、デベロッパーの支援を受けにくいことから、「町田山崎団地一街区」の自主建て替えなど事例は限られていた。

 昨年建て替え工事を終えた大阪府池田市の「石澄住宅」は、容積に余裕はあるものの最寄りの駅からバス10分と、需要面からデベロッパーの参画が期待できない案件だった。敷地の一部を戸建て用地として売却する手法は町田山崎団地と同様だが、事業協力者として長谷工コーポレーションが参画した。


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