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地方創生特集/東京都  空き家「率」最下位だが、「数」は全国2位

地方創生特集/東京都 空き家「率」最下位だが、「数」は全国2位

  • 2025.05.26
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 全国で900万戸といわれる空き家は今後も減ることなく、どう活用するかが大きなテーマだ。地方創生にもつながる空き家活用だが、そう簡単ではない。幸い訪日外国人観光客の増加で新たな試みも始まった。インバウンド需要の好調さを背景に新たな不動産ビジネスのあり方として、地方での滞在型観光や国内外の投資、環境貢献への取り組みに民泊やホテル事業を展開している事例を見てみる。

「腐朽・破損あり」空き家/10年間で減少に転じる/空き家法全面施行の効果か
 グローバル・リンク・マネジメントの「グローバル都市不動産研究所」(市川宏雄所長、明治大学名誉教授)の将来的な危険度の高い空き家に関する調査によると、全国の空き家数は、2008年から23年にかけて一貫して増加した。900万2000戸となったが「腐朽・破損あり」とされる主要部分などに損傷がある危険な空き家の数は、13年の213万1000戸をピークに23年には158万5000戸まで減少。その割合も13年の26%から23年の17・6%と減少傾向にあった。
 15年に空室等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)が全面施行し、指導や取り壊しなどの強制措置がとられるようになったことも影響。
 減少している半面「腐朽・破損あり」の空き家が約160万戸、空き家全体の2割弱存在することは無視できない。この腐朽・破損がある空き家を種類別で分類すると「賃貸用空き家」が62万2000戸、「その他空き家」が89万5000戸となり、その他が多かった。
 割合でみても「賃貸用空き家」の14%に対し、「その他空き家」は23・2%と大幅に高い。その他空き家の場合、全体の約4戸に1戸が危険な損傷をもつ空き家ということになる。
 13年から23年にかけての「腐朽・破損あり」空き家数の推移では、「賃貸用空き家」で36%の減少がみられた一方「その他空き家」は15・1%の減少にとどまった。賃貸用に比べその他空き家では、損傷した物件が多いほか数も減少しにくい実態がある。
 東京都の動向では、空き家数全体が13年の81万7100戸から23年には89万6500戸と増加していたものの、「腐朽・破損あり」の空き家数は減少、割合でみても19・8%から11・7%に低下した。
 種類別に見ると、東京都では「腐朽・破損あり」の空き家数で「賃貸用空き家」が6万3200戸、「その他空き家」は3万7500戸で、賃貸用が大きく上回った。13年からの推移では、賃貸用が41・9%減少したが、その他は12・8%の減少にとどまった。全国に比べ腐朽・破損のある賃貸用空き家数は大きく減少しているものの、なお数が多く、その他についてはあまり減少していないという傾向がある。
 全国と東京都の空き家状況について建て方別で分析すると、23年の「賃貸用空き家」では共同住宅が全国で89%、東京都で97・6%と圧倒的な割合を占め、そのうちの「腐朽・破損あり」もそれぞれ12・4%と9・8%で1割前後になっていた。
 東京都の腐朽・破損がある共同住宅について、建物構造別の内訳を出した結果では、木造が2万5700戸で最も多いものの、鉄筋・鉄骨コンクリートも2万2500戸、鉄骨造で1万1500戸になり、非木造のアパートやマンションなどでも腐朽・破損の問題が進行してきている。
 「その他空き家」では全国で一戸建てが73・9%を占めるのに対し、東京都は一戸建が34・8%にとどまり、共同住宅が62・7%と多くを占めた。
 一戸建てはその大半が木造であることもあり、腐朽・破損ありに該当する物件も多かったが、共同住宅の多い東京都では、腐朽・破損ありの建物構造別で木造のほかに非木造のアパート・マンションなどで腐朽・破損が進み、深刻な問題となっている傾向があった。
 東京23区の地区別で23年の「腐朽・破損あり」空き家の状況を見ていくと、練馬区や足立区、板橋区、世田谷区、大田区など外周部の区に多く、60~70年代に都市のスプロール化から多くの住宅供給が行われた区で建築から50年以上を経た今、問題が深刻になっている状況が浮かび上がった。
 これらの区による賃貸用空き家での腐朽・破損住宅数の多さは、都心の区では空き家の再開発が比較的容易に進むのに対し、外周部では放置されがちであることも大いに影響している。
 その他空き家でも、足立区や板橋区、江戸川区、世田谷区、練馬区といった外周部の区に腐朽破損ありの空き家物件が目立ち、ある時期に多くの供給があったこれらエリアで相続後の家屋放置などが進行しているという。
 今後、東京23区でどの程度空き家が増えていくか、建築時期別の住宅総数から予想した結果では、2040年時点で築50年以上の物件が世田谷区に約19万戸、足立区で15万5000戸、練馬区と大田区で約15万戸、杉並区と板橋区で約14万戸。特別区全体では約200万戸にのぼる。
 腐朽・破損ありの空き家も10~15万戸程度に増加する予測を基に、早期の対策は不可欠だ。すでに空き家も多い外周部を代表に各区で91年以降も多くの住宅供給が行われ、40年以降も一定量が空き家として積み上がっていけば問題はますます深刻となる。
 同研究所は、利活用可能な空き家をいかに流通させていくか、空き家の適切な維持管理、再開発を速やかに進めていくかが重要とし、多角的な対策を早期にとっていく必要があるとした。

テーマパーク開業の沖縄県北部/地域の注目度高まる

 沖縄県北部の名護市と今帰仁村にまたがるエリアに2025年7月、大型テーマパークが開業する。
 リクルートと電通のジョイントベンチャーで、位置情報データの収集・分析・活用サービスを提供する、ブログウォッチャーの観光人流モニタリングサービス「おでかけウォッチャー」(24年1月~12月のデータ)によると、県外から沖縄を訪れた人の出発地は東京都(13%)、神奈川県(12%)、福岡県(10%)、大阪府(9%)の順に多く、愛知県(7%)、埼玉県(6%)と続いた。
 地域別に見ると、県外からの来訪者は南部が最も多く北部はその約半数で中部と同程度だった。
 北部内ではリゾートホテルが集積する恩納村と、中心都市である名護市への来訪者が特に多かった。また、昼夜間の人流を比較すると、北部は中部や南部に比べて人の出入りが少なく、テーマパーク開業後の伸びしろが期待できる。
 賃貸市場(SUUMO調べ)では、沖縄県全体の賃貸住宅入居率は95%を超え、物件によっては98%以上に達するなど、「貸し手市場」となっている。名護市は、入居中物件への予約が入る状況も見られ、実質的に入居率100%近い需給バランス。
 また売買市場は、観光需要と移住ニーズの高まりから価格が全体的に上昇。民泊需要を見込んだ事業者・個人による購入希望もあり、名護市や今帰仁村、本部町など北部エリアへの注目が高まっている。
 今夏のテーマパーク開業を契機に、沖縄北部の人流と不動産市場は大きく変わる可能性があり、観光と居住の両面で地域のポテンシャルが注目されている。

■民泊サービスで新たな資産運用モデル提供/東急不動産HD

 東急不動産ホールディングスは、社内ベンチャー制度「STEP」を通じて、民泊サービスを提供する新会社「ReINN(リイン)」(東京都渋谷区)を設立した。国内外で旅行需要が高まる中、民泊市場は拡大が予想される一方で、従来の民泊運営にはノウハウ不足や資金調達の難しさ、次の買い手確保への不安などの課題がある。
 このサービスは同社の豊富なアセットとネットワークを活用し、民泊の開業から運営、売買までを包括的に支援するプラットフォームを提供。オーナーは「リイン」を窓口とすることで、必要な手続きや運営を一元的にサポートされ、負担を軽減しながら適切な民泊運営ができる。また、専門のサポートチームによる運営状況の管理やマーケティング支援、最新市場分析に基づく運用戦略の提供によって、安定性と信頼性を確保していく。ローンを活用したレバレッジ運用や減価償却による節税効果を通じて資産規模の拡大を支援するとともに、物件探しや次の買い手確保もサポートすることで、投資家が安心して運用に専念できる環境を提供。長期的な収益性とキャピタルゲインの実現に繋がる。
 未活用の住宅を宿泊施設として活用することで、空き家問題の解決や地域活性化に寄与。宿泊市場の再定義を目指し、民泊市場を投資アセットとして確立していくとしている。
 今後はリスク分散と高リターンを両立する革新的な資産運用モデルを提供し、国内外の投資家からの信頼を獲得していくという。

■全76ホテルでエコマーク認定達成/大和ハウスグループ

 大和ハウスグループの大和ハウスリアルティマネジメントは、2025年2月に「ダイワロイネットホテルズ」の32施設と商業施設「フォレオ大津一里山」(滋賀県大津市)でエコマークの認定を取得したことで、同社が運営する国内全76のダイワロイネットホテルが認定施設となった。
 エコマークは、日本環境協会によって環境配慮型の施設や製品に与えられる制度。「ダイワロイネットホテルズ」はエコマーク商品類型No.503「Version2・2」「Version2・3」、「フォレオ大津一里山」は同509「Version1・2」がそれぞれ設定されている。今回の認定によって、同一企業が複数の商業施設でエコマークを取得した初の事例となった。
 ホテル部門で評価されたのは、省エネ照明への切り替えや客室内のトイレットペーパーの使い切り促進、パンフレットの電子化など日常的な省資源活動。また、RE100・EP100への加盟やeco検定の取得促進など、企業全体としての環境意識向上も評価対象。
 一方「フォレオ大津一里山」では、廃食油のバイオディーゼル燃料への再資源化や、使用済紙コップのトイレットペーパーへのリサイクルといった独自の取り組みが高く評価された。施設内ではCO2排出量をオフセットする自動販売機の導入や、荷捌き所でのアイドリングストップの徹底も行っている。
 同社は現在、全国約4000カ所の施設を管理し、今後も他商業施設への認定拡大を目指すとしている。「まちを元気に、ひとに笑顔を。」のスローガンのもと、運営施設全体で環境配慮型のまちづくりに貢献する姿勢を明確にしている。
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