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住生活月刊特集②/ホテル事業への参入 先進的・分散型モデル/宿泊事業の多様化と最新動向

住生活月刊特集②/ホテル事業への参入 先進的・分散型モデル/宿泊事業の多様化と最新動向

  • 2026.10.13
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 宿泊需要の拡大やインバウンドの急増を背景に、不動産関連など異業種によるホテル事業への参入や、最先端の木造建築技術、地域共生を掲げた宿泊施設の開発が活発化している。例えば、不動産鑑定機関によるホテル経営や、大手デベロッパーの高層ハイブリッド木造ホテル、地方工務店が挑む分散型滞在モデル、そして地域祭事と連携する民泊の取り組みなど、多様化する宿泊・観光関連の先進的な動向。これからの住生活や都市・地域づくりに求められる新たな事業展開のあり方について、各社の実例を交えて紐解いていく。

■不動産評価機関のホテル事業参入/鑑定ソリュート熊本
 鑑定ソリュート熊本(熊本県熊本市)は8月8日、福岡市中央区春吉にアパートメントタイプのホテル「Nonette博多春吉」を開業した。
 このホテルは3階建てで、延べ床面積は439㎡。客室は全9室(最大収容人数58人)。
 不動産評価機関が自らホテルを手がける背景には、地方で減少・高齢化が進む不動産鑑定評価の担い手を育てるための「安定した収益基盤づくり」という目的がある。不動産鑑定業は案件の受注状況によって売上変動が大きい一方、ホテル事業は毎月・毎年、安定的なキャッシュフローが見込める。
 具体的にはプロジェクト総額が約5億5000万円、そのうち約5億円を外部調達によって実施する。
 運営経費と借入金元利返済後のキャッシュフローとして、年間約1500万~2000万円を安定的に見込む。得られた収益を、地方の不動産鑑定評価を担う若手専門家の育成資金として継続的に投資していく。
 また、福岡市による先進的な都市経営の取り組み動向や来街者の動きをホテル運営を通じて実数として捉え、本拠地である熊本のまちづくりへ還元する足がかりとする考えだ。
 外部調達(約5億円)では、地域や社会課題の解決に資する取り組みとして、肥後銀行によるポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)を利用。同プロジェクトの事業主は鑑定ソリュート熊本、建築は積水ハウス、運営管理はBEADが担う。

銀座で木造ホテル計画/ハイブリッド方式で130室/日鉄興和不動産
 日鉄興和不動産は、東京都中央区銀座七丁目で開発を進める「(仮称)木挽ビルホテル計画」について、10月に新築工事に着手し、開業は2029年10月を予定している。同社初となる高層ハイブリッド木造建築(S造、RC造、木造)で、ホテルブランド「&Here」としても初の上位グレードホテルとなる。地上12階地下1階建てで、延べ床面積は9742㎡。客室数は130室。
 この計画は国土交通省の「令和8年度優良木造建築物等整備推進事業」として、先進的な木造技術の普及を目的とする「先導枠」に採択された。
 木と鉄骨を組み合わせた高層ハイブリッド木造建築を採用し、木柱・木梁、CLT耐震壁、木ブレースなど複数の木造技術を組み合わせるとともに、木鉄ハイブリッド柱や配筋付製材型枠などの木質化技術を採用し、総木材使用量350立方㍍を超える大規模な木材利用を実現している。
 設計は三菱地所設計、施工を熊谷組・住友林業特定建設工事共同企業体が担当する。岩手県釜石市の釜石森林組合と連携し、釜石産材の活用を推進することで地域林業の活性化を図るほか、国際環境認証「LEED Gold」と「SITES Gold」の取得を目指す。

■工務店が挑む「地域まるごとホテル」/ラッフルズホーム
 ラッフルズホーム(徳島県徳島市)は、モデルハウスを簡易宿泊所として運営し、投資家への売却後も運営を継続する「宿泊不動産の循環モデル」を確立し、1棟貸しヴィラ「徳島別荘ホテルⅠ・Ⅱ」を自社運営している。同社は、建設業・不動産・宿泊観光の相乗効果で地域を活性化する業態「マイクロデベロッパー」を目指し、「地域まるごとホテル」を本格始動した。
 徳島県内では宿泊需要が過去最高水準にある半面、宿泊施設の供給が追いついていない状況にある。2024年の県内宿泊者数は261・6万人(前年比11・9%増)、外国人宿泊者数は18・0万人(同35・1%増)で、伸び率は四国トップとなっている。また、25年の阿波おどりは111万人を集客し2年連続100万人超を記録。27年5月にはワールドマスターズゲームズ2027関西の競技会場が徳島県内にも設けられる予定だ。
 宿泊施設の供給は需要に追いつかず、イベント期間中は県内ホテルの稼働率が高止まりする「宿泊難民」状態が続いている(出典/観光庁 宿泊旅行統計調査、日本政府観光局など)。
 同循環モデルは5ステップで構成。まず「建てる」では設計デザインを結集したモデルハウスを建築し、住宅事業のショールームとして活用。第2に「泊める」。展示期間終了後、簡易宿泊所として営業許可を取得し、宿泊営業を実施する。第3は「譲る」で、運営実績で収益物件としての価値が確立した物件を、宿泊不動産を求める投資家へ売却。そして第4は「運び続ける」とし、売却後も運営を受託し宿泊事業を継続していく。第5「つなぐ」は、この循環を1棟から地域へ展開し、「地域まるごとホテル」構想へつなげる。
 「地域まるごとホテル」構想では、戸建てホテルを起点に、徒歩圏内のコンビニやスーパー、飲食店、クリニック、運動施設などを1つのホテル機能として束ね、宿泊者の利便性向上と地域経済の活性化を図るもので、すでに地域事業者9社と連携を進めている。
 そのほか、ヴィラ型宿泊事業への新規参入を支援する経営者向け無料セミナーも開催し、参入支援プログラムとして、自社運営ヴィラの実データを開示し、補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金。補助率2分の1、3分の2、上限最大9000万円)を活用したヴィラ経営の新規参入を、不動産探索・設計施工・運営コンサルの3領域で支援している。
 「徳島別荘ホテルⅠ」は、はなれ付2LDK(定員9人)、「徳島別荘ホテルⅡ(ZEH住宅・太陽光13・60㌔㍗)」は3LDK(定員7人)で運営し、非対面セルフチェックインを導入している。

matsuri technologies/地域祭事と連携する民泊
 matsuri technologies(東京都千代田区)は、民泊施設を運営する地域で、宿泊ゲストと社員が町会・自治会の祭事に参加する取り組み「PROJECT YAGURA(プロジェクト・ヤグラ)」を開始した。8月下旬から9月にかけて、東京都内4区(墨田区・新宿区・豊島区・渋谷区)の約10件の祭事への参加を計画。
 具体的な取り組みは、自治会・町内会の加入率低下などの持続可能性が課題となる中、地域の行事に加わり、宿泊ゲストが地域住民と出会い、そのまちを好きになる機会を創出。
 「関わり方」では、町会・自治会の意向に沿って決定され、運営補助や神輿の担ぎ手としての参加、備品提供や奉納などを行う。課題となるのが、祭事中の「担ぎ手向けトイレ」。近隣の民泊施設が協力するなど、地域との信頼関係を積み重ねながら持続可能な運営体制を目指すとしている。

4面 絵解き 日鉄興和不動産/「(仮称)木挽ビルホテル計画」

日鉄興和不動産/「(仮称)木挽ビルホテル計画」 外観イメージ

鑑定ソリュート熊本/「Nonette 博多春吉」

ラッフルズホーム/「徳島別荘ホテル」

matsuri technologies/宿泊ゲストと社員が町会・自治会の祭事に参加する取り組み「PROJECT YAGURA(プロジェクト・ヤグラ)」

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