住生活月間特集(3)、先導的再生モデルタイプ8件採択、国交省「マンションストック長寿命化等モデル事業」
-
2026.10.19
- ツイート
国土交通省は、急増する高経年マンションの再生を支援する「マンションストック長寿命化等モデル事業(2026年度第2回)」で、8者8件を採択した。6月22日から6月26日までの募集期間内に11者11件(計画支援8件、建替工事支援3件)の応募があり、先導的再生モデルタイプの計画支援5件と建替工事支援3件が選ばれた。なお、管理適正化モデルタイプの応募はなかった。
計画支援
■複合手法と方式転換/日建設計
建築費の高騰や合意形成が大きな課題となる中、計画支援では、建て替えに敷地分割や既存住棟の改修を組み合わせる手法、建物・敷地の一括売却、一棟リノベーションなどの多様なアプローチが採択されている。建替工事支援では、事業方式の見直しや、採択団地を含む、一団地認定4団地間の協議などが進められている。評価委員会は、課題と対応策の具体性を前提としつつ、先導性や他の物件への応用可能性を重視して審査を行った。採択プロジェクトが示すマンション再生の具体的な進め方を追う。
計画支援に採択された「多摩川住宅ト号棟」(東京都)は日建設計が提案。
1971年築、12棟326戸からなる団地型マンションで延べ床面積は2万1937m2(地上5階建て)。耐震性不足、高齢化の進行、エレベーター未設置、スラブ下配管や漏水事故の多発、埋設管の腐食などの課題を抱え、2015年の建て替え推進決議以降、建て替えを前提とした再生検討を進めてきた。
多摩川住宅の他の単位会で建て替えが進行し当該地域が供給過剰状態となり、工事費高騰の影響からデベロッパーの協力が得られず事業規模の縮小が余儀なくされ、管理組合や区分所有者が自主建て替えを前提に、保留地の計画、敷地分割、既存住棟の改修などを組み合わせた再生の方向性を検討した。
評価委員会は、地域の住宅供給実態や事業者の参画意向、居住者の意向を踏まえ、建て替えに参加できない区分所有者にも既存住棟の活用という選択肢を残すことで実現可能性を高めている点を評価した。
■一括売却と一棟リノベ/ミサワ
建て替えが困難な場合には、売却も有効な選択肢となる。「かみさく住宅1号棟」(神奈川県)は、1965年築、24戸のマンションで延べ床面積は1393m2(地上4階建て)。ミサワホームの提案が計画支援に選ばれた。
老朽化、耐震性不足、既存不適格に加え、敷地の一部が土砂災害警戒区域に指定されているといった課題がある。
これまで複数案の比較検討を重ねてきたが、合意形成や事業費の壁によって実現に至らず、改正マンション関係法に基づく敷地売却制度の活用を検討するに至った。マンションの敷地と建物を現況のままデベロッパーへ一括売却し、地域価値の向上につながる住宅地開発とすることを目指した合意形成の推進・支援を行うこととしている。
評価委員会は、複数手法を比較検討した結果として売却を選択した経緯や、土砂災害警戒区域の解消に向けた検討を含め、地域価値の向上を目指す方向性などを評価した。
■一棟リノベ/長谷工
「キャッスル共進」(東京都)は、既存躯体を生かす方針をとる。1971年築で、住宅156戸と店舗18区画からなる用途複合マンションで延べ床面積は1万7538m2(地上15階建て)。
長谷工コーポレーションの計画支援では、耐震性能不足や設備配管の老朽化、断熱性能不足、廊下と玄関間の段差といった現代の居住ニーズに対応できない課題に対し、既存躯体を活用したスケルトン改修による一棟リノベーションを検討。
情報収集やインスペクションに加え、温熱環境の改善、バリアフリー化、屋上の公開空地化による眺望提供などの再生手法を比較検討している。
評価委員会には、住民アンケートによる意向把握のほか、アスベスト調査、電気設備・給水管の劣化診断、環境性能測定調査等を実施し、他の再生方針と比較している点や、合意形成に向けた丁寧な検討内容が評価された。
■地域一体の再生/日鉄興和不
建て替えの事業性と地域の防災力を結び付けたのが「亀戸2丁目団地」(東京都)。1969年築、4棟620戸からなる団地型マンションで、延べ床面積は4万847m2(地上11階建て)。日鉄興和不動産が計画支援に採択された。
耐震性不足や漏水、高齢化の進行などを背景に2015年から再生検討を行ってきた。近年の建築費高騰の中で事業性を確保するため、マスタープランの「浸水対応型まちづくり」に即した高台防災への地域貢献に対応し、日影規制・高さ制限の解除のほか、指定容積率の300%から325%への引き上げを伴う都市計画変更に向けて行政と協議を進めている。行政や周辺のマンション・UR等の関係主体、町会や商店会を巻き込んだエリアまちづくり協議会を組織し、地区全体の将来像を検討している。
団地内中央部には、水害時に周辺住民も一時避難できる広域的な垂直避難スペースとして「高台避難デッキ」を整備する計画であり、評価委員会には、マンション内の区分所有者と対話する綿密な機会づくりとともに高く評価された。
建替工事支援
■計画内容見直し/コスモスイニシア
1976年築、20戸の「鷺沼コーナス」(神奈川県)では、建て替えの事業方式そのものの大きな見直しへ踏み切った。コスモスイニシアの提案が建て替え工事支援に採択された。
1976年築、20戸で延べ床面積は1544m2(地上5階建て)、雨水浸入や結露、給排水設備の不具合、エレベーター未設置が課題だった。
小規模マンションのため、当初はデベロッパーからの事業協力が困難とされた。2023年度第2回の計画支援でコーポラティブ方式による建て替えを検討したものの、その後の建築費高騰によって事業成立が困難となり、マンション再生円滑化法に基づく建て替えへと切り替えた。
改修と建て替えの比較検討に加え、住民アンケートや個別面談を繰り返し実施し、金利変動や保留床販売のリスクも検証した。
今後さらに事業費が上昇した場合には、追加負担額を専有面積に応じて按分し、各権利者や参加組合員がそれぞれ追加負担する仕組みを導入。
また、従前専有面積の80%相当部分までは権利床単価を適用し、超える部分については保留床単価で取得できる仕組みをとった。
委員会は、小規模マンションの再生による合理性や、課題に対するこれまでの取り組みを評価した。
■団地型マンション建て替え/住友不
「烏山北住宅」(東京都)は、1965年築、9棟300戸の団地型マンションで延べ床面積は1万6602m2(地上5階建て)。住友不動産の提案が建て替え工事支援に選ばれた。
9棟のうち5棟で耐震性能が不足し、配管の老朽化による破断や漏水も発生している。同団地を含む分譲団地3者と都公社の賃貸住宅団地の計4者で一団地の住宅施設を形成していたため、4者協議会で260回に及ぶ協議を重ねた結果、2022年に地区計画へ移行した。
地区計画で定められた区画道路を整備するため、保留敷地の設定による敷地分割や隣接施行敷地の取り込みを行い、一部住戸の面積を縮小して区分所有者の負担を軽減する案などを検討している。
長年の協議実績や道路整備、負担軽減の工夫が評価され、3つの分譲団地のうち2つは既に建て替え決議が成立済みで、同住宅は2027年10月に決議を予定している。
計画支援
■複合手法と方式転換/日建設計
建築費の高騰や合意形成が大きな課題となる中、計画支援では、建て替えに敷地分割や既存住棟の改修を組み合わせる手法、建物・敷地の一括売却、一棟リノベーションなどの多様なアプローチが採択されている。建替工事支援では、事業方式の見直しや、採択団地を含む、一団地認定4団地間の協議などが進められている。評価委員会は、課題と対応策の具体性を前提としつつ、先導性や他の物件への応用可能性を重視して審査を行った。採択プロジェクトが示すマンション再生の具体的な進め方を追う。
計画支援に採択された「多摩川住宅ト号棟」(東京都)は日建設計が提案。
1971年築、12棟326戸からなる団地型マンションで延べ床面積は2万1937m2(地上5階建て)。耐震性不足、高齢化の進行、エレベーター未設置、スラブ下配管や漏水事故の多発、埋設管の腐食などの課題を抱え、2015年の建て替え推進決議以降、建て替えを前提とした再生検討を進めてきた。
多摩川住宅の他の単位会で建て替えが進行し当該地域が供給過剰状態となり、工事費高騰の影響からデベロッパーの協力が得られず事業規模の縮小が余儀なくされ、管理組合や区分所有者が自主建て替えを前提に、保留地の計画、敷地分割、既存住棟の改修などを組み合わせた再生の方向性を検討した。
評価委員会は、地域の住宅供給実態や事業者の参画意向、居住者の意向を踏まえ、建て替えに参加できない区分所有者にも既存住棟の活用という選択肢を残すことで実現可能性を高めている点を評価した。
■一括売却と一棟リノベ/ミサワ
建て替えが困難な場合には、売却も有効な選択肢となる。「かみさく住宅1号棟」(神奈川県)は、1965年築、24戸のマンションで延べ床面積は1393m2(地上4階建て)。ミサワホームの提案が計画支援に選ばれた。
老朽化、耐震性不足、既存不適格に加え、敷地の一部が土砂災害警戒区域に指定されているといった課題がある。
これまで複数案の比較検討を重ねてきたが、合意形成や事業費の壁によって実現に至らず、改正マンション関係法に基づく敷地売却制度の活用を検討するに至った。マンションの敷地と建物を現況のままデベロッパーへ一括売却し、地域価値の向上につながる住宅地開発とすることを目指した合意形成の推進・支援を行うこととしている。
評価委員会は、複数手法を比較検討した結果として売却を選択した経緯や、土砂災害警戒区域の解消に向けた検討を含め、地域価値の向上を目指す方向性などを評価した。
■一棟リノベ/長谷工
「キャッスル共進」(東京都)は、既存躯体を生かす方針をとる。1971年築で、住宅156戸と店舗18区画からなる用途複合マンションで延べ床面積は1万7538m2(地上15階建て)。
長谷工コーポレーションの計画支援では、耐震性能不足や設備配管の老朽化、断熱性能不足、廊下と玄関間の段差といった現代の居住ニーズに対応できない課題に対し、既存躯体を活用したスケルトン改修による一棟リノベーションを検討。
情報収集やインスペクションに加え、温熱環境の改善、バリアフリー化、屋上の公開空地化による眺望提供などの再生手法を比較検討している。
評価委員会には、住民アンケートによる意向把握のほか、アスベスト調査、電気設備・給水管の劣化診断、環境性能測定調査等を実施し、他の再生方針と比較している点や、合意形成に向けた丁寧な検討内容が評価された。
■地域一体の再生/日鉄興和不
建て替えの事業性と地域の防災力を結び付けたのが「亀戸2丁目団地」(東京都)。1969年築、4棟620戸からなる団地型マンションで、延べ床面積は4万847m2(地上11階建て)。日鉄興和不動産が計画支援に採択された。
耐震性不足や漏水、高齢化の進行などを背景に2015年から再生検討を行ってきた。近年の建築費高騰の中で事業性を確保するため、マスタープランの「浸水対応型まちづくり」に即した高台防災への地域貢献に対応し、日影規制・高さ制限の解除のほか、指定容積率の300%から325%への引き上げを伴う都市計画変更に向けて行政と協議を進めている。行政や周辺のマンション・UR等の関係主体、町会や商店会を巻き込んだエリアまちづくり協議会を組織し、地区全体の将来像を検討している。
団地内中央部には、水害時に周辺住民も一時避難できる広域的な垂直避難スペースとして「高台避難デッキ」を整備する計画であり、評価委員会には、マンション内の区分所有者と対話する綿密な機会づくりとともに高く評価された。
建替工事支援
■計画内容見直し/コスモスイニシア
1976年築、20戸の「鷺沼コーナス」(神奈川県)では、建て替えの事業方式そのものの大きな見直しへ踏み切った。コスモスイニシアの提案が建て替え工事支援に採択された。
1976年築、20戸で延べ床面積は1544m2(地上5階建て)、雨水浸入や結露、給排水設備の不具合、エレベーター未設置が課題だった。
小規模マンションのため、当初はデベロッパーからの事業協力が困難とされた。2023年度第2回の計画支援でコーポラティブ方式による建て替えを検討したものの、その後の建築費高騰によって事業成立が困難となり、マンション再生円滑化法に基づく建て替えへと切り替えた。
改修と建て替えの比較検討に加え、住民アンケートや個別面談を繰り返し実施し、金利変動や保留床販売のリスクも検証した。
今後さらに事業費が上昇した場合には、追加負担額を専有面積に応じて按分し、各権利者や参加組合員がそれぞれ追加負担する仕組みを導入。
また、従前専有面積の80%相当部分までは権利床単価を適用し、超える部分については保留床単価で取得できる仕組みをとった。
委員会は、小規模マンションの再生による合理性や、課題に対するこれまでの取り組みを評価した。
■団地型マンション建て替え/住友不
「烏山北住宅」(東京都)は、1965年築、9棟300戸の団地型マンションで延べ床面積は1万6602m2(地上5階建て)。住友不動産の提案が建て替え工事支援に選ばれた。
9棟のうち5棟で耐震性能が不足し、配管の老朽化による破断や漏水も発生している。同団地を含む分譲団地3者と都公社の賃貸住宅団地の計4者で一団地の住宅施設を形成していたため、4者協議会で260回に及ぶ協議を重ねた結果、2022年に地区計画へ移行した。
地区計画で定められた区画道路を整備するため、保留敷地の設定による敷地分割や隣接施行敷地の取り込みを行い、一部住戸の面積を縮小して区分所有者の負担を軽減する案などを検討している。
長年の協議実績や道路整備、負担軽減の工夫が評価され、3つの分譲団地のうち2つは既に建て替え決議が成立済みで、同住宅は2027年10月に決議を予定している。

