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地方移住で叶えるセカンドライフのリアル ③/物件選びはウェブ・実際の交渉は地域不動産会社が担う/空き家解消は仏壇の行き先が鍵

地方移住で叶えるセカンドライフのリアル ③/物件選びはウェブ・実際の交渉は地域不動産会社が担う/空き家解消は仏壇の行き先が鍵

  • 2025.07.28
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町の鳥「イワツバメ」が軒下の古巣で子育て

 2年前の兵庫県美方郡新温泉町での空き家滞在体験を経た私が、同町の空き家バンク制度を利用して住宅を購入した経緯を伝える。
 総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、日本の空き家数は約900万戸と過去最多であり、総住宅数(約6504万戸)の14%を占める。空き家・空き地情報をウェブで紹介する空き家バンク制度は、90年代に地方自治体の個別運用が始まり、18年からは国土交通省が本格運用を開始。情報が一元化された全国版空き家・空き地バンクでは、参画自治体数は1100を超え、物件掲載数も1万8000を超えている。(25年6月時点)
 新温泉町では16年から空き家バンクの運用が始まり、現在、年に20件以上の新規登録があり、交渉成立も10数件にのぼる。
 同制度の利用法は、町のウェブページで金額や立地、間取りなどを確認する。気になる物件があれば、申込書を役場へ提出。詳細情報を入手した上で、内見を行う。購入意向が固まれば、交渉申込書を提出し、紹介された仲介業者の媒介のもと、売り主と交渉に至る。
 私の場合、予算額に見合う築50年以上の木造2物件に絞り、内見をした。1件目は、家財道具が多く、気が進まなかった。一方、2件目は売り主が別荘として保有し、セルフリノベを施していた。家財道具も片付いており、すぐに売り主と交渉・契約の取り交わしをした。結果、内見から引き渡しまで半年以内に完了した。
 同町では空き家バンク登録物件には家財道具処分費用の2分の1(上限10万円)が補助される。町内の空き家は数100件あるが、登録済み物件は一部だ。今後、登録増加に向けては各種助成の周知に加え、きめ細かな対応が求められる。他の自治体では空き家バンク運用をNPO法人などに委託する場合もある。
 全国的に空き家バンクの登録が進まない背景に、家の相続者が別地域に住んでおり、放置してしまうケースがある。家に残る仏壇類の処分に困る人も多いようだ。鯖江市が実施した調査では、売却・賃貸しない理由の1位にもなっていた。
 空き家対策として国は「空き家エンディングノート」をウェブ公開し、親族での話し合いを促している。さらに23年の法改正によって「管理不全空き家」と認定されると、住宅用地の特例が適用されなくなり、土地に係る固定資産税が増える可能性もある。所有者の意識が変わることで、空き家が速やかに次の住み手に受け継がれていくことが切に望まれる。次回は、移住後の暮らしをお伝えしていく。
(古矢直美)
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