
米国下院の税制改正法案可決で住宅取得策強化/50万㌦未満世帯の控除額が4倍に/NARの税制政策要望など
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2025.07.14
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「トランプ氏は、不動産のバックグラウンドを持っていて不動産がいかにアメリカで重要なのか良く知っている」と全米リアルター協会(NAR)会長のケビン・シアーズ氏は、6月25日に全国宅地建物取引業協会連合会を訪問した際、坂本久会長に説明した。「米国GDPの約20%を不動産が占め、アメリカ経済の強いドライブになるということがいえる産業」と続けた。2017年に大統領に就任した際、不動産にかかわる多数の税制優遇の法案を通したが、今年その期限を迎える。現在の税制優遇レベルを維持しつつ、恒久化させることで一般消費者が住宅を購入しやすい環境整備を行っているとトランプ政権に対する不動産業界の税制優遇について語った。
トランプ政権による政策は、不動産業界に好影響を与える内容が多く含まれているため、同会員はトランプ政権についてポジティブに捉えている人が少なくないという。
日本国内でも住宅ローン減税などが期限を迎える。アメリカの住宅税制や売買仲介の現状などについて考えてみた。
■アメリカ人に好まれる住宅とは
アメリカ人と一口に言っても、家族構成、地域、ライフステージによって異なる。住宅を求める際、居住する人にとっての十分な広さ、家族が集うのに適したオープンな間取りや庭に出るデッキやアウトドアリビングなどのある解放的な間取りを好む傾向にある。どんなタイプの家でも、リモデルによって最新の設備機器を設置する傾向が増えているため、設備機器の新しさも家選びの重要な要素になっている。
■アメリカの売買仲介市場動向
NARの「2024年REALTORS(リアルター)会員プロフィール」によると、23年の住宅市場は、在庫不足や住宅価格の高騰、金利上昇などの影響を受け、厳しい状況が続いた。
その結果、同会員数は22年12月の158万人から23年12月には155万人に減少。一方で、新規参入者が増加し、経験が2年以下の会員割合は17%から18%に増したことで、業界の新陳代謝が進んでいる。
また、経験年数による収入格差が顕著で経験年数が16年以上の会員の収入中央値は9万2500㌦、経験2年以下の会員は8100㌦。23年の取引件数は10件で、22年の12件から減少傾向にある。売上高の中央値も340万㌦から250万㌦に減少したことを要因に、厳しい市場環境が業務活動に影響を与えている。
同会員の年齢中央値は55歳。会員の65%が女性で、85%が住宅所有者というのが特徴だ。また、不動産業を最初の職業とする割合はわずか6%。多くが販売、小売、管理、金融業など他業界からの転職となる。同会員は、72%がウェブサイトを所有。96%がスマートフォンやソーシャルメディア、デザインアプリを利用する傾向にあり、業務効率化や顧客対応への活用が活発化している。
■トランプ政権による不動産関連の税制優遇や政策
米国下院では、不動産経済を支援するための税制改正法案を5月に可決し、NARが要望した政策も複数ある。具体的には、住宅所有者や中小企業、コミュニティ開発を支援する政策などで主な税制優先事項は5つ。
まず「適格事業所得控除」では控除額が従来の20%から25%に恒久的に増加した。対象者は、個人事業主や年間収益が40万㌦未満の中小企業で、同会員の90%以上も対象になるという。
次に「州税、地方税控除」では、収入が50万㌦未満の世帯に対する控除額が従来の1万㌦から4万㌦へ4倍になった。既婚者への優遇は現状維持のため、独身者、夫婦共同申告を問わず控除額は最大4万㌦を差し引くことが出来るとしている。
所得上限と控除については、それぞれ毎年1%増加し10年間継続する。3つ目の「個人税率」は、現在の個人税率を恒久化し、インフレ率に連動することで納税者の負担を軽減するとともに、住宅購入者の価格を手ごろな価格に改善していく。
4つ目として「住宅ローン利息控除」は削減または廃止されるのではという懸念があったが、住宅ローン利息控除を現在のレベルで維持し恒久化する。住宅所有者にとって主要な税制上の優遇措置を提供することで、住宅市場の安定性を支援する。
5つ目の「同種交換(セクション1031)」は、税の抜け穴と誤ってみなされることが多い「第1031条同種取引所」を保護するとし、不動産投資を通じて経済発展を支援する。
そのほか、児童税額控除を2500㌦に増加(25年~28年)させ、永久遺産税と贈与税の基準額を1500㌦に設定した一方で、39・6%の最高税率は法案から削除された。
トランプ政権による政策は、不動産業界に好影響を与える内容が多く含まれているため、同会員はトランプ政権についてポジティブに捉えている人が少なくないという。
日本国内でも住宅ローン減税などが期限を迎える。アメリカの住宅税制や売買仲介の現状などについて考えてみた。
■アメリカ人に好まれる住宅とは
アメリカ人と一口に言っても、家族構成、地域、ライフステージによって異なる。住宅を求める際、居住する人にとっての十分な広さ、家族が集うのに適したオープンな間取りや庭に出るデッキやアウトドアリビングなどのある解放的な間取りを好む傾向にある。どんなタイプの家でも、リモデルによって最新の設備機器を設置する傾向が増えているため、設備機器の新しさも家選びの重要な要素になっている。
■アメリカの売買仲介市場動向
NARの「2024年REALTORS(リアルター)会員プロフィール」によると、23年の住宅市場は、在庫不足や住宅価格の高騰、金利上昇などの影響を受け、厳しい状況が続いた。
その結果、同会員数は22年12月の158万人から23年12月には155万人に減少。一方で、新規参入者が増加し、経験が2年以下の会員割合は17%から18%に増したことで、業界の新陳代謝が進んでいる。
また、経験年数による収入格差が顕著で経験年数が16年以上の会員の収入中央値は9万2500㌦、経験2年以下の会員は8100㌦。23年の取引件数は10件で、22年の12件から減少傾向にある。売上高の中央値も340万㌦から250万㌦に減少したことを要因に、厳しい市場環境が業務活動に影響を与えている。
同会員の年齢中央値は55歳。会員の65%が女性で、85%が住宅所有者というのが特徴だ。また、不動産業を最初の職業とする割合はわずか6%。多くが販売、小売、管理、金融業など他業界からの転職となる。同会員は、72%がウェブサイトを所有。96%がスマートフォンやソーシャルメディア、デザインアプリを利用する傾向にあり、業務効率化や顧客対応への活用が活発化している。
■トランプ政権による不動産関連の税制優遇や政策
米国下院では、不動産経済を支援するための税制改正法案を5月に可決し、NARが要望した政策も複数ある。具体的には、住宅所有者や中小企業、コミュニティ開発を支援する政策などで主な税制優先事項は5つ。
まず「適格事業所得控除」では控除額が従来の20%から25%に恒久的に増加した。対象者は、個人事業主や年間収益が40万㌦未満の中小企業で、同会員の90%以上も対象になるという。
次に「州税、地方税控除」では、収入が50万㌦未満の世帯に対する控除額が従来の1万㌦から4万㌦へ4倍になった。既婚者への優遇は現状維持のため、独身者、夫婦共同申告を問わず控除額は最大4万㌦を差し引くことが出来るとしている。
所得上限と控除については、それぞれ毎年1%増加し10年間継続する。3つ目の「個人税率」は、現在の個人税率を恒久化し、インフレ率に連動することで納税者の負担を軽減するとともに、住宅購入者の価格を手ごろな価格に改善していく。
4つ目として「住宅ローン利息控除」は削減または廃止されるのではという懸念があったが、住宅ローン利息控除を現在のレベルで維持し恒久化する。住宅所有者にとって主要な税制上の優遇措置を提供することで、住宅市場の安定性を支援する。
5つ目の「同種交換(セクション1031)」は、税の抜け穴と誤ってみなされることが多い「第1031条同種取引所」を保護するとし、不動産投資を通じて経済発展を支援する。
そのほか、児童税額控除を2500㌦に増加(25年~28年)させ、永久遺産税と贈与税の基準額を1500㌦に設定した一方で、39・6%の最高税率は法案から削除された。