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国交省、道路陥没対策委、点検・調査技術力を強化へ、無人化・省力化で安全配慮、現場ニーズ、的確に反映

国交省、道路陥没対策委、点検・調査技術力を強化へ、無人化・省力化で安全配慮、現場ニーズ、的確に反映

  • 2025.08.05
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対策が進められていた八潮市の道路陥没現場(4月時点)

 国土交通省は7月24日、埼玉県八潮市で1月28日に発生した道路陥没事故を踏まえ、「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」の第7回委員会を開いた。第2次提言を受けて今回は、下水道等の管路マネジメントの具体的方策やインフラ全般のマネジメントのあり方について議論が行われた。
 第2次提言では特に作業安全の確保を最重要課題と位置付け、下水道管路の計画から設計、整備、補修、改築に至る全工程で安全確保への配慮を徹底することや、八潮市での事故のような深刻な事態を防止するためには全国的な安全意識の醸成と、現場での事故防止への努力が不可欠であるとの認識が示された。
 技術面では点検・調査の「技術化」とそのコストダウンが急務であるとされ、国が主導するかたちで、調査精度の向上と効率化をはかる技術開発を加速する方針が確認された。
 コストダウンをはかる理由の一つに、一般行政部門の職員を集計の対象として、地方公共団体定員管理調査結果から国土交通省が作成したグラフ「市区町村の土木費の推移」がある。ピークだった93年度の11兆4973億円から11年の6兆465億円で約53%減少し、近年では約6・5兆円で推移している。空洞調査や大口径管の強度測定などの技術は、現場のニーズに応じた高度化・実用化が求められ早期実装を目指す。
 委員会で示された「インフラ全般のマネジメントのあり方について」ではインフラメンテナンスを支える市区町村の状況として、土木部門の職員数がピークの96年の12万3761人と比べて約30年で9万1198人と26・3%減少。技術系職員数に関しては「3人から5人(241団体)」が全体の14%、「1人から2人(145団体)」が8%、「0人(440団体)」が25%と、全体の47%の市区町村で5人以下である現状が明らかとなった。
 これに加えて3月に発生した秋田県男鹿市での管路補修工事中の死亡事故も踏まえ、ドローンや自動走行カメラ、AIによる画像診断といったDXを活用した取り組みの強化による作業の無人化・省力化の重要性が示された。これらの技術開発に関しては国土交通省の技術開発事業を活用して、工期・安全性・生産性の要素を考慮する。
 総合的に価値が最大化することを前提に今後5年間程度での実用化・定着を図り、広く普及させながら現場で大幅なコストダウンの実現を目指す。
 同委員会ではこの第2次提言や、国土交通省が推進する施策「i―Construction 2・0」も踏まえ、管路メンテナンス技術の高度化・実用化の方向性の案と、現段階で研究や実証が進められているものが示された。海外技術や他分野技術についても調査を行い、有効な技術は活用を検討する方針だ。道路陥没事故を踏まえて展開する国土交通省の「2026年度 AB―Cross(上下水道一体革新的技術実証事業)」も研究段階から実用化段階に至るまで、各ステージを対象に行う。

 国土交通省・自治体が技術開発の主体で研究段階の大深度空洞調査では、光ファイバを用いた地中空洞検知技術に関する研究が進められる。無人化・省人化調査技術の研究では小型ドローンによる下水道管点検技術の応用研究が行われている。カメラや光センサーで反射光を受光することでターゲットまでの距離を測定する技術「LiDAR」を用いる中大口径管内表面状態評価技術の研究も行う。実用化段階では最大2年にわたって実施設で実証も行う。下水道管理者や日本水道協会、日本下水道新技術機構が連携して普及環境を整備し、現場のニーズ・課題の把握・蓄積、先行事例の創出、発注環境の整備を進める。
 国土交通省のドローン普及に向けたロードマップでは、25年中に特別重点調査などでドローンを活用、同年までに応用研究、27年までにビジネスモデルの検討、成果のとりまとめが行われ、28年から普及フェーズとなることが示された。既に25年5月30日には北九州市で内径2・7メートルの汚水管の調査に、6月3日には神戸市の1・8メートルの汚水管調査にドローンが活用されている。国土交通省は異業種との連携を推進する「上下水道スタートアップチャレンジ」も推進中だ。異分野からの革新的技術導入を促進し、AIやデジタルツイン技術の導入事例も増加している。
 EY新日本有限責任監査法人とFracta、Fracta Japanが共同研究体となって開発されたAIによる下水道管路の破損予測技術は、財政効果の可視化やアセットマネジメントの高度化にも貢献。LiberawareとCalTaが進めるドローンを用いた点検技術は、従来困難だった現場での調査を可能にする。実用化段階では23年末時点で、ビッグデータ×AIによる管路リスクをマッピングで可視化する予測診断技術が約50事業者に導入、「上下水道DX技術カタログ」にも掲載された。同カタログは国土交通省が上下水道施設のメンテナンスの高度化・効率化に向け、デジタル技術の導入を後押しするために作成したもの。「点検調査」や「劣化予測」、「施設情報の管理・活用」に関するDX技術は水道が73技術、下水道は91技術の合計119技術が掲載されている。「対象施設」や「目的」、「要素技術」にある各項目を選択するだけで効率的に掲載技術を引きだすことが可能だ。
 打音調査による管路の健全度評価技術や、地中レーダによる空洞調査技術といった下水道管路の「全国特別重点調査」に活用できる技術も確認できるほか、導入自治体からのコメントやコスト、導入実績といった利用者が知りたい技術情報も得られる。
 国土交通省は今後も現場ニーズを的確に把握し、それを技術開発へ反映する仕組みづくりを進める。必要な更新投資を先送りせず使用料に資産維持費を適切に反映し、集中的な耐震化・老朽化対策への重点的な財政支援も行う考えも示した。
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