お電話でもお問い合わせを受け付けています 受付時間 平日 10:00~17:30

TEL03-6721-1338

国交省、「住生活基本計画」見直し検討進む、中間とりまとめ(素案)提示、住課題、構造変化に対応へ

国交省、「住生活基本計画」見直し検討進む、中間とりまとめ(素案)提示、住課題、構造変化に対応へ

  • 2025.08.19
  • お気に入り

住生活基本計画 イメージ図

 国土交通省は7月30日の「第65回社会資本整備審議会住宅宅地分科会」で、新たな「住生活基本計画(全国計画)」の策定に向けた「中間とりまとめ(素案)」を提示した。同分科会では、24年10月31日の「第58回住宅宅地分科会」から続く「住生活基本計画の見直しスケジュール」に基づき、分科会での議論の成果を整理。前回、5月29日の「第64回住宅宅地分科会」では、2050年を見据えた住宅政策の方向性や具体的な施策の課題と展望について、幅広く議論を行った。「住生活基本計画」は、住生活基本法に基づき策定されるもので、現行の計画は21年3月に閣議決定された。おおむね5年後に社会経済情勢の変化や政策評価を踏まえて計画を見直し、所要変更を行うこととされている。

 国土交通省は、50年までに生産年齢人口の急減と高齢単身世帯の増加、多死社会、総世帯数の減少で人口・世帯構成の変化が進むと考え、「中間とりまとめ(素案)検討の方向性(総論)」で、住生活に関する課題の構造的な変化を明示した=別掲記事参照。
 これらの課題に対応する住宅政策の再設計が求められている中で、「人生100年時代」に対応した住宅の在り方や住宅を単なる建築物ではなく、資産として活用する視点の重要性を強調。これまでのように性能や機能の一律な充実に注力するのではなく、多様化するライフステージに応じた柔軟な住生活支援を図る。 50年に向けて国や地方公共団体、事業者、NPO、地域団体、居住者自身が連携し「国民それぞれの暮らし・住まいのWell-beingを満たす(=国民それぞれの住生活を充実させる)」政策への転換の必要性を示している。
 「利用価値を見出される住宅ストック」や「住宅品確法時代の住宅ストック」、官民投資で蓄積した既成住宅地・公的賃貸住宅を活用・継承する「ストック継承」で、将来世代に持続可能な住生活をもたらすとした。
 単身世帯の増加に関しては、福祉部門と住宅部門の連携で「つなぎ」と「気づき」の居住支援を通じて孤立を防ぐほか、住宅確保要配慮者が安心して暮らせる住宅セーフティネットの機能強化へつなげる。専門技術者・技能者による質の高い新築・改修と住宅ストックの維持管理・活用を幅広い担い手で行い、高度化・継続する体制構築も図る。
 住宅行政の役割も示し、国は主導して50年に向けた方向性を共有し、市場の誘導・補完・環境整備を徹底。地方自治体は、主体的になって居住支援法人を含めたNPO・地域団体と協働し、居住者の抱える課題や多様な需要に対応するとした。
 同省は「中間とりまとめ(素案)」によって「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレーヤー」の3つの視点から個別論点を抽出し、それぞれに対する政策の方向性も提示した。
 「住まうヒト」の視点では、人生100年時代を見据え高齢者の孤立防止と住生活の希望がかなう環境整備、若年・子育て世帯の住居確保支援、住宅確保要配慮者への支援体制強化、過度な住宅費負担を軽減する環境構築が挙げられている。当面10年で取り組む施策の方向性としては、SN住宅や居住サポート住宅の普及拡大、高齢期のローン返済負担の軽減、既成住宅地の相続住宅市場を通じた流通、頭金支援や住宅ローンの充実などが示された。
 「住まうモノ」の視点では既存住宅ストックの有効活用や性能向上、市場で利用価値が適正に評価されて循環するシステム構築、リフォームや除却を通じて住宅の誕生から終末期まで切れ目のない一体的推進をはかる。災害に強い住環境の整備なども柱の1つ。
 当面10年で取り組む施策の方向性としては、将来世代に継承する住宅ストックの明確化や性能・利用価値の査定評価法の普及、マンションの計画的な維持管理の推進、耐震化・密集市街地の整備の推進が挙げられている。
 「住まいを支えるプレーヤー」の視点では、国際展開を通じた住生活産業の発展や担い手の確保・育成、住宅行政の役割を明確化することや、推進体制の整備の必要性が挙げられた。ライフサイクルカーボンを意識した住生活産業の推進、中長期にわたる担い手確保の取り組みの推進、地方住宅行政の役割の再構築などが示された。

26年3月閣議決定へ
 今後、9月に開かれる第66回分科会で「中間とりまとめ案」を提示。11月ごろには最終的な中間とりまとめを実施する予定だ。その後、新たな「住生活基本計画」案の議論が2回程度行われ、26年3月に閣議決定される見通しという。
 今回は50年を見据えた住生活の在り方と、そこから逆算して得られる1年間の施策の方向性、施策イメージについて整理が行われた。今後も自然災害の頻発・激甚化や脱炭素化に向けた国際的な動き、資材価格の高騰による住宅価格の上昇が考えられる。日々変化している住生活を取り巻く環境を考慮した上で、27年3月に策定予定の新たな「住生活基本計画」について具体的に検討を進めていく方針だ。

人口予測や世帯構成が変化
 国土交通省は、2050年には日本の総人口が1970年と同等になり、生産年齢人口は約4分の3に減少(約1700万人減)すると見込んでいる。1970年の世帯構成では、単独世帯が全体の2割、夫婦と子世帯が4割を占めていたが、2050年には逆転し単独世帯が4割、夫婦と子世帯が2割となると予測。
 また「正社員共働き子育て世帯(長子15歳未満)」は全国的に増加傾向で、2010年から2020年の10年間で約1・5倍に急増。特に大都市圏や地方政令都市、その周辺で高い増加率を推移している。 
 一方で、三大都市圏の持家率(過去20年間)は総じて減少傾向にあり民営借家の割合が増加し、特に年収200万円~500万円未満の層で持家率が10~15%程度減少したが、その他地域では世帯年収500万円~1500万円未満の層で持家率が増加している。
TOP