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国交省、賃貸管理業の課題解決へ/制度改善検討会議を始動/ニーズ多様化、業務は複雑化

  • 2025.10.01
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 国土交通省は賃貸住宅管理業の今後のあり方を検討するため、「賃貸住宅管理業のあり方の検討に係かかわる有識者会議」を設置した。これは2020年6月に成立した「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の施行状況を踏まえ、制度の普及促進や改善策を検討することを目的とするもの。有識者会議のスケジュールは25年9月の第1回で法施行状況を報告、12月上旬の第2回で業界団体や家主団体の意見を聴取、26年1月下旬の第3回で今後のあり方を議論し、3月に報告書(案)を取りまとめる予定だ。
 賃貸住宅管理業に係る登録制度とサブリース事業の適正化措置が導入され、25年7月時点で法に基づく登録業者が約1万に達し、制度が定着しつつある。また、賃貸住宅は住生活の基盤としての重要性が増し、アフターコロナの日常の暮らし方や働き方といった変化から入居者ニーズが多様化、管理業務も複雑化している状況がある。
 「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」は、サブリース事業の不当勧誘や契約条件の誤認を原因とするトラブルが社会問題化したことを背景に制定された。21年6月から同法の登録制度が施行され、管理戸数200戸以上の事業者には国土交通大臣への登録が義務付けられることとなっている。22年6月からは同法施行時に賃貸住宅管理業を営んでいた事業者も登録が義務化となり以降、登録業者数が増加しつづけ、25年7月31日時点でその数は9987件に上っている。
 賃貸住宅管理業法施行後の効果として登録制度が定着し、制度開始当初に比べて管理業者を巡るトラブル件数も減少傾向にある。同省「19年・23年度賃貸住宅管理業などに関する調査」によると、19年度のサブリース業者の「トラブル経験あり」が47・1%から、23年度に20・6%、管理業者では45・9%が23・6%へと減少した。
 背景にはオーナーの管理形態に大きな変化があった。92年度には75・0%が自ら管理業務を全て行っていたが、23年度には28・8%へと減少。管理業務の業者委託割合が25・0%から71・2%に増加し、賃貸経営を管理業者にいわば一任できる「サブリース方式」が増加した。安定的な賃料収入を期待するオーナーに利用される半面、家賃保証や修繕負担を巡る誤解がトラブルを生んできた。
 全国消費生活情報ネットワークシステムに寄せられる相談件数は14年度の3785件から23年度には1万1359件へと増加し、制度的対応の必要性が高まっていた。同法施行後、管理業者には重要事項説明の義務、財産の分別管理、定期報告が課され、営業所ごとに知識・経験を持つ業務管理者を配置することが求められることとなった。
 営業所ごとに設置が義務付けられている業務管理者の有資格者数は年々増え、25年7月31日時点で10万人を超える規模となっている。新たに設けられた「賃貸不動産経営管理士試験」合格者をはじめ、宅地建物取引士や旧資格保有者が移行講習を修了して要件を満たして、制度の下支えとなっている状況だ。
 同法の解釈や運用の明確化も段階的に進められ、22年6月には契約変更時の重要事項説明を義務付け、23年3月にはIT活用による説明方法を認める改正が行われた。これによってオーナーから電話での説明依頼やオンラインを通じた説明も可能となり、コロナ禍で求められた非対面取引やDX推進の流れに対応した。
 オーナーチェンジが発生した場合の説明手続きに関しても、民法の地位承継の考え方に合わせて合理化されて取引の円滑化が進んだ。制度の実効性を確保するために国土交通省は全国一斉立入検査も実施し、24年度は全国187社を対象にした検査の結果、127社に是正指導を行った。過半数で形式的な不備が見つかったが、そのほとんどで改善が確認されたため行政指導にとどまっている。

トラブル防止策推進も
 検討事項としてサブリース契約で条件変更や修繕費負担を巡る説明不足、管理業者の対応範囲が不明確であること、入居者対応の不十分さ、賃料や敷金の入金遅延などが挙げられている。オーナーは、契約時に専門知識を持つ者から「家賃・費用などの契約内容についての説明」や「契約締結時の十分な説明」を受けたいと考えており、業務管理者の役割は一層重要になっている。
 同法施行前に約46%あったオーナーと業者間のトラブル経験率を、29年度には15%にまで低減させることもKPIとして設定されている。登録業者の属性を見ると、管理戸数200戸未満で登録義務のない小規模事業者が3割から4割を占めるとともに、制度の浸透が広がっている。
 小規模事業者の増加は業界全体の底上げに寄与するが、制度を形式的な順守にとどめず実質的に質を高める取り組みが不可欠となっている。
 国土交通省の23年度賃貸住宅管理業務などに関するアンケート調査によると、実際に業務管理者が「管理業務全般の管理と監督」を実施している割合は62・6%で最多。業務管理者以外が実施することが適切ではないと考える業務としても、26・9%で最も多い結果となった。
 重要な場面での業務が求められることを背景として、従業員が行う管理業務の指導・監督を行うために必要な知識と能力の一定要件を備える「業務管理者」を、1人以上選任することも検討事項とされている。
 国交省は有識者会議の議論を通じて同法の運用改善と制度強化を進める考えで、賃貸住宅が国民生活の基盤として重要性を増す中で、トラブルを防止するための方策を推進。今後は登録制度の普及拡大、業務管理者の専門性強化、サブリース方式の問題へのさらなる対策を盛り込む方針だ。
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