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国交省、不動産特定共同事業のあり方議論/情報開示や制度見直し

国交省、不動産特定共同事業のあり方議論/情報開示や制度見直し

  • 2025.06.16
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国土交通省「不動産証券化の実態調査」データ

 国土交通省は、一般投資家の参加が増加している不動産特定共同事業の今後のあり方を検討するため、第2回「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」を開いた。不動産特定共同事業は1995年に創設されて以来、商品数や募集総額が拡大し、23年3月時点で1051商品、総額1・3兆円に達し、投資家の数は7年間で10倍を超えている。「不動産クラウドファンディング」などを通じて一般投資家向けの商品が増加するなど、投資家層の大きな変化を受け一般投資家向けの情報開示の充実や制度の見直しが求められている。

一般投資家7年で10倍超に
 今回の検討会では、業界団体からのヒアリングを行い一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方について議論した。委員には法律、会計、消費者保護などの専門家が参加し、オブザーバーとして金融庁や消費者庁、関連業界団体が加わっている。不動産特定共同事業制度の見直しや充実を図るとともに、一般投資家が安心して参加できる環境整備を目指すとしている。
■現状と課題
 不動産特定共同事業の市場は拡大を続け、23年度末時点で国許可事業者は92社。資本金規模別では、1億円未満の事業者が43%、100億円超の事業者は14%。クラウドファンディング型事業者の台頭が注目される半面、投資家保護や市場の健全性を確保するための課題も浮き彫りになっているという。
 具体的には、SNSなどで高い利回りを宣伝し一般投資家を誘引している商品に対する規制の必要性、原野商法やポンジ・スキームが行われるリスクの防止策強化、利害関係人取引の利益相反を防ぐための規制充実など。
 また、不動産特定共同事業法では、無許可営業の禁止や誇大広告の禁止、不適切な勧誘行為の禁止など、事業者に対する厳格な規制を設けている。そのほか投資家への情報提供義務として、契約前書面や財産管理報告書の交付を義務付け、透明性の確保を掲げている。
 行政による指導・監督権限も強化し、国と都道府県が事業者に対して指導、助言、業務停止命令、許可取り消しを実施することも出来る一方で、都道府県が管轄外の不動産を対象とした商品の監督には限界があり、国の積極的な関与が求められる場面も増加傾向としている。
 不動産特定共同事業の発展には、規制の強化と市場の透明性向上が不可欠だろう。
■クラファンと/ 非クラファン
 不動産特定共同事業は、特定の不動産に対する出資を募り、その不動産を購入・運用することで得た収益を投資家に分配する仕組みをいう。投資家は事業者から提供される情報を基に投資判断を行う。リート(不動産投資信託)とは異なり、投資対象の不動産が事前に特定されている点が特徴だ。
 17年度に不動産クラウドファンディング規定が整備されて以降、クラウドファンディング型の商品が急増した。23年度には新規案件数の約70%を占めるまでに成長。一般投資家の参加が活発化し、23年度末時点でクラウドファンディング型の商品に投資する人数は約29・7万人に達した。
 クラウドファンディング型の商品は、非クラウドファンディング型の商品に比べて高い利回りが期待される傾向がある。例えば、23年度の調査では、クラウドファンディング型の想定利回りは8%~10%が主流で、運用期間は6カ月~1年が最も多い。非クラウドファンディング型の商品は4%~6%の利回りが中心で、運用期間は3~5年が多い。
 不動産特定共同事業者は全国で267社(23年3月時点)が許可を受けている。都道府県内に事務所が所在する場合は都道府県知事の許可、複数の都道府県に事務所が所在する場合は金融庁長官または国土交通大臣の許可が必要だ。 
■主な規制
 不動産特定共同事業法は、不動産を対象とした共同事業による投資家保護と市場の健全性を確保するため、厳格な規制を設けている。主な許可基準は、まず「事業者の参入規制」として、資本金(原則1億円以上)、財産的基礎、人的構成、業務管理者の配置、政省令の基準を満たす契約約款を使用することを挙げている。
 次に「出資募集時の規制」では、誇大広告の禁止、不適切な勧誘行為の禁止、広告時期の制限がある。「出資契約時の規制」は、契約前書面の交付や契約成立時の書面交付が義務付けられている。そして「運用時の規制」に財産の分別管理や財産管理報告書の交付、財務状況の開示の3つの義務がある。
 財産管理報告書に記載する内容は、▽報告対象期間、▽期間満了日にともなう事業参加者の出資持分、▽出資割合または賃貸の目的である財産の共有持分、▽報告対象期間やその直前3年の不動産取引内容、収益・利益・損失の状況、▽同、財産状況、▽業務委託の有無、▽利害関係人取引の有無、▽不動産に係る借り入れの有無など。
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