法務特化型AIを本格展開/トムソン・ロイター、法律実務向け日本語版/来年度にも「ウエストロー」と連携
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2025.11.05
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「弁護士の価値創出ツール」
トムソン・ロイター(日本法人、東京都港区、三浦健人社長)は、法務専門家向けに特化した生成AI「CoCounsel(コ・カウンセル)」の日本語対応版の提供を始めた。コ・カウンセルは法務分野に特化したAIとして海外では既にサービスの提供が進んでいて、今回のローカライズによって日本の法律実務向けに本格的な展開を開始する。同社はオンラインによる法務関連の情報提供サービス「ウエストロージャパン」などを通じ、日本国内では既に6200の法律事務所との取引実績がある。
信頼性と安全性重視
弁護士のおよそ41%はAIのオープンソースChatGPTのようなツールを活用している。しかし、ここで問題となるのは、使ったデータはその後どのように扱われるのかといった情報の取り扱いだ。
法務分野では機密性の高い情報を取り扱うことが多いため、自社のデータの取り扱いには細心の注意を払わなくてはならない。AIを実務で活用することを考える場合、情報保護の問題は非常に重要なテーマになる。一方、弁護士らはAIを活用しないことで生産性向上のチャンスを逃し、厳しい競争の中で負ける不安も抱いており、このようなジレンマは世界中の弁護士の共通の悩みになっている。
コ・カウンセルは一般的なオープンAIサービスと異なり、外部のインターネット情報を参照せず、クローズド環境内で顧客がアップロードした法情報・企業内データのみを活用して生成する仕組みを用いている。同社ではAI分野に年間2億ドル超を投資し、マイクロソフトなどとの連携を通じてセキュリティと品質を確保している。開発には常に人間が関与し、同社内部では弁護士資格を有する人材も含め、1000人を超える専門家がAIの機械学習に携わっている。
今回の日本語対応版でも、日本の弁護士が開発に関与した。
また、同社はロイター通信社時代から約150年の企業の歴史があり、その歴史の中で培った全世界の情報網から得た高い信頼性のある情報と、その情報の取り扱いに真摯しんしに取り組んできた実績を強調し、マイクロソフト社との良好な関係なども多くの企業法務や法律事務所から信頼を得て、ユーザーを獲得している理由だと説明した。
コ・カウンセルの機能
コ・カウンセルはリサーチからワークフローまで垂直統合したソフトウェアで、機能は大別してレビュー、サマライズ、ドラフト、リサーチの4つだ。機能の紹介として公開されたデモンストレーション動画によると、契約書レビューと就業規則改定作業のレビューでは、文書(契約書、議事録など)の中から、コ・カウンセルに質問を投げかけるスタイルで重要情報を探らせる。
デューデリジェンスの実行、取引条件の特定などの支援や、複数の文書を比較して類似点や相違点、契約上の有利・不利な点、リスクの洗い出しなども行う。同社の担当者によると、文書比較の作業は他の作業に比べやや時間がかかるというが、3分程度で回答が生成される。
就業規則改定作業では、育児・介護休業法などの最新法令と自社規程を比較し、未対応条項を自動検出し修正案を作成する機能を紹介した。担当者は「AIが提案した修正案を人間が最終確認する前提だが、時間のかかる改定業務も大幅に効率化できる」と説明する。
見つけ出されたリスクや留意点などは、表形式の「イシューリスト」に自動でまとめることもでき、会議などの説明の場で活用できる資料としてダウンロードできる。また、要約などの自動生成された文書は出典の確認が容易にできる機能も付いている。
このほか、サマライズでは、議事録、契約書などの文書の要約を行う。
法務特有の長く複雑な文書を的確に要約できる機能を有している。また、調査報告書やヒアリングのレポート、手書きのメモなどの雑多な書類に書かれた出来事も時系列に整理並べてリスト化できる。
ドラフト作成では、カバーレターのほか、交渉の相手方へ送る手紙やメールなども作成、会議、クライアントとの交渉に向けた想定問答の作成などの支援をする。
リサーチ機能ではプラクティカルローのコンテンツを使ってリサーチできる。日本語版は来年度、「ウエストロージャパン」とも連携を開始する予定だ。リサーチ機能はユーザーの問いかけに対し、プラクティカルローの該当するコンテンツを検索し、その要約を回答する。詳細な確認が必要な場合には、そこからプラクティカルローのコンテンツにダイレクトに飛ぶことができる。
不動産契約・相続/分野への期待も
不動産分野への適用の可能性はどうだろうか。
担当者は「企業法務として、不動産の売買契約や賃貸契約、管理契約書などもレビュー対象になる。例えば、貸し手側が作った賃貸借契約書を借り手側の立場で簡単にリスクを調べたりすることもできると思う」と述べた。また、相続関連の相談についても「まちの中小法律事務所から問い合わせを受けており、過去の書類や証拠を全て読み込ませることで、内部の状況の整理などに役立てられるのではないか」と説明し、実務のボリュームゾーンに近い分野でも活用が進む可能性を示した。
AIはいずれ士業などから仕事を奪うという懸念がある。これについて三浦健人社長は、コ・カウンセルが目指すゴールは、弁護士や法に携わるものを置き換えるツールとしてではなく、弁護士などが価値を創出するために使うツールであることを強調した。
グローバル製品責任者のトーマス氏によると、世界の法律専門家を対象にした同社調査では、AIを活用する法務部門の割合が2024年から25年にかけて14%から26%へとほぼ倍増し、日々の業務のなかでAIが日々存在感を増していることは確実だと述べた。同社はコ・カウンセルを、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中できる環境を整えるための支援ツールと位置づけている。
特に企業法務部門での活用について、他部署などからの契約書案の精査の依頼などの業務に追われて多忙を極める「受け身の企業法務」から、経営戦略などへの関与や事業への助言などを通じて、新たな価値を生み出す「攻めの企業法務」へ進化できるとしている。AIと共に働く社会は、人間には「付加価値の高い仕事」という新たな課題とその付加価値から生まれた社会の変化が待っている。
トムソン・ロイター(日本法人、東京都港区、三浦健人社長)は、法務専門家向けに特化した生成AI「CoCounsel(コ・カウンセル)」の日本語対応版の提供を始めた。コ・カウンセルは法務分野に特化したAIとして海外では既にサービスの提供が進んでいて、今回のローカライズによって日本の法律実務向けに本格的な展開を開始する。同社はオンラインによる法務関連の情報提供サービス「ウエストロージャパン」などを通じ、日本国内では既に6200の法律事務所との取引実績がある。
信頼性と安全性重視
弁護士のおよそ41%はAIのオープンソースChatGPTのようなツールを活用している。しかし、ここで問題となるのは、使ったデータはその後どのように扱われるのかといった情報の取り扱いだ。
法務分野では機密性の高い情報を取り扱うことが多いため、自社のデータの取り扱いには細心の注意を払わなくてはならない。AIを実務で活用することを考える場合、情報保護の問題は非常に重要なテーマになる。一方、弁護士らはAIを活用しないことで生産性向上のチャンスを逃し、厳しい競争の中で負ける不安も抱いており、このようなジレンマは世界中の弁護士の共通の悩みになっている。
コ・カウンセルは一般的なオープンAIサービスと異なり、外部のインターネット情報を参照せず、クローズド環境内で顧客がアップロードした法情報・企業内データのみを活用して生成する仕組みを用いている。同社ではAI分野に年間2億ドル超を投資し、マイクロソフトなどとの連携を通じてセキュリティと品質を確保している。開発には常に人間が関与し、同社内部では弁護士資格を有する人材も含め、1000人を超える専門家がAIの機械学習に携わっている。
今回の日本語対応版でも、日本の弁護士が開発に関与した。
また、同社はロイター通信社時代から約150年の企業の歴史があり、その歴史の中で培った全世界の情報網から得た高い信頼性のある情報と、その情報の取り扱いに真摯しんしに取り組んできた実績を強調し、マイクロソフト社との良好な関係なども多くの企業法務や法律事務所から信頼を得て、ユーザーを獲得している理由だと説明した。
コ・カウンセルの機能
コ・カウンセルはリサーチからワークフローまで垂直統合したソフトウェアで、機能は大別してレビュー、サマライズ、ドラフト、リサーチの4つだ。機能の紹介として公開されたデモンストレーション動画によると、契約書レビューと就業規則改定作業のレビューでは、文書(契約書、議事録など)の中から、コ・カウンセルに質問を投げかけるスタイルで重要情報を探らせる。
デューデリジェンスの実行、取引条件の特定などの支援や、複数の文書を比較して類似点や相違点、契約上の有利・不利な点、リスクの洗い出しなども行う。同社の担当者によると、文書比較の作業は他の作業に比べやや時間がかかるというが、3分程度で回答が生成される。
就業規則改定作業では、育児・介護休業法などの最新法令と自社規程を比較し、未対応条項を自動検出し修正案を作成する機能を紹介した。担当者は「AIが提案した修正案を人間が最終確認する前提だが、時間のかかる改定業務も大幅に効率化できる」と説明する。
見つけ出されたリスクや留意点などは、表形式の「イシューリスト」に自動でまとめることもでき、会議などの説明の場で活用できる資料としてダウンロードできる。また、要約などの自動生成された文書は出典の確認が容易にできる機能も付いている。
このほか、サマライズでは、議事録、契約書などの文書の要約を行う。
法務特有の長く複雑な文書を的確に要約できる機能を有している。また、調査報告書やヒアリングのレポート、手書きのメモなどの雑多な書類に書かれた出来事も時系列に整理並べてリスト化できる。
ドラフト作成では、カバーレターのほか、交渉の相手方へ送る手紙やメールなども作成、会議、クライアントとの交渉に向けた想定問答の作成などの支援をする。
リサーチ機能ではプラクティカルローのコンテンツを使ってリサーチできる。日本語版は来年度、「ウエストロージャパン」とも連携を開始する予定だ。リサーチ機能はユーザーの問いかけに対し、プラクティカルローの該当するコンテンツを検索し、その要約を回答する。詳細な確認が必要な場合には、そこからプラクティカルローのコンテンツにダイレクトに飛ぶことができる。
不動産契約・相続/分野への期待も
不動産分野への適用の可能性はどうだろうか。
担当者は「企業法務として、不動産の売買契約や賃貸契約、管理契約書などもレビュー対象になる。例えば、貸し手側が作った賃貸借契約書を借り手側の立場で簡単にリスクを調べたりすることもできると思う」と述べた。また、相続関連の相談についても「まちの中小法律事務所から問い合わせを受けており、過去の書類や証拠を全て読み込ませることで、内部の状況の整理などに役立てられるのではないか」と説明し、実務のボリュームゾーンに近い分野でも活用が進む可能性を示した。
AIはいずれ士業などから仕事を奪うという懸念がある。これについて三浦健人社長は、コ・カウンセルが目指すゴールは、弁護士や法に携わるものを置き換えるツールとしてではなく、弁護士などが価値を創出するために使うツールであることを強調した。
グローバル製品責任者のトーマス氏によると、世界の法律専門家を対象にした同社調査では、AIを活用する法務部門の割合が2024年から25年にかけて14%から26%へとほぼ倍増し、日々の業務のなかでAIが日々存在感を増していることは確実だと述べた。同社はコ・カウンセルを、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中できる環境を整えるための支援ツールと位置づけている。
特に企業法務部門での活用について、他部署などからの契約書案の精査の依頼などの業務に追われて多忙を極める「受け身の企業法務」から、経営戦略などへの関与や事業への助言などを通じて、新たな価値を生み出す「攻めの企業法務」へ進化できるとしている。AIと共に働く社会は、人間には「付加価値の高い仕事」という新たな課題とその付加価値から生まれた社会の変化が待っている。

