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本紙が選ぶ2025年業界重大ニュース/高価格化でも堅調さ

  • 2025.12.22
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 “令和の米騒動”に象徴される物価高や、トランプ関税対策で明けた2025年。着実に手を打ってきたかに見えた自公連立の石破茂内閣は参院選で敗北。代わって自民党総裁に選任された高市早苗氏は10月21日、自・維連立内閣を組閣、初の女性首相に就任した。それもつかの間、11月の臨時国会での首相答弁を巡って日中間の関係が悪化するなど、慌ただしさの中で年末を迎えた。
 これに対し、住宅・不動産業界は比較的穏やかな1年となった。住宅価格の高騰は今年も続いたが、高所得層・富裕層、投資家などの動きが活発で販売は順調だった。オフィス市況の回復が続いたことで、業績も最高決算の更新が続出し、今後もさらに続伸する見込みだ。そんな中、年後半には、価格高騰の要因の1つとして、内外投資家による投機的な取引があるとの指摘から、新規販売での短期転売規制などの新たな動きが浮上した。
 今後、人口減少に伴う市場の縮小、人手不足などの構造的な問題が横たわるが、すでに顕在化してきた。業界として、また個々の企業として、今後の成長戦略をどう描くか。本紙が選ぶ業界重大ニュースで2025年をふり返った。(2面に続く)

2025年業界重大ニュース一覧
・マンション価格の高騰で短期転売規制の動き
・オフィス賃貸などで不動産各社、最高業績更新
・税制優遇も後押し、買取再販事業が拡大
・ハウスリースバック、苦情相談増える
・建基法「4号特例」縮小、住宅着工に影響
・改正住宅セーフティネット法が施行
・大阪・関西万博、来場者2500万人台に
・不動産各社、データセンター事業を積極化(2面)
・省エネ基準の適合義務化がスタート(2面)
・米国“トランプ関税”で波紋広がる(2面)
・訪日外国人客が最多更新、4千万人台に


マンション販売で短期転売規制/価格高騰対策で投機的取引抑制へ
 首都圏の新築マンション価格は用地高・建築費高を反映するように年々上昇し、25年度上半期は3年連続の最高値更新となった。不動産経済研究所の調査によると、首都圏の全体平均は9489万円(1m2単価143・1万円)と前年比19%上昇した。地域別で最も高い東京23区内は平均1億3309万円(同205・8万円)と、前年同期の1・1億円台を約2000万円上回った。
 業界関係者に「誰が買っているのか」と聞くと「主力は高所得の実需層」という。三菱地所レジデンスによると、「パワーカップル(共に年収700万円以上の共働き夫婦)が増加し、ペアローンの利用者も増え、この層が高価格帯市場を下支えしている」と分析。加えて「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」という新しい層も増加の傾向にあるという。
 だが、ここへ来て目立っていると指摘されるのが「短期転売で利ザヤを稼ぐ」投機的な動き。国内外の投資家が投機目的で“転がし”、価格をつり上げることで困るのは、買えなくなり、借りられなくなる住宅需要者。将来的には入居者や管理組合にも影響が及んでくる可能性もある。
 この問題で東京都千代田区は7月、不動産協会に「マンション取引等に関する要請」を提出。区内の再開発物件の販売では「原則5年間は物件を転売できないよう特約を付すこと」「同一建物で同一名義の者による複数物件の購入を禁止すること」を求めた。
 これに対し、不動産協会は11月25日付で、会員各社の判断のもと、一般公募による販売物件を対象に、(1)登録・購入戸数の上限制限、(2)契約・登記等名義の厳格化、(3)引き渡しまでの売却活動の禁止--を実施する方針を示した。

不動産各社が最高決算更新
 主要不動産各社の業績の伸びが続いた。
 総合大手5社(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングス)は25年3月期決算で、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべてで過去最高を更新した。オフィスビル賃貸、マンション分譲・投資家向け分譲、仲介、管理運用など各分野が好調だった。26年3月期も中間期で最高更新が相次ぎ、通期でも最高業績を更新する勢いだ。
 中でもけん引したのがオフィス賃貸事業。東京では市場平均で空室率が3%前後まで下がる一方、新規賃料の上昇、増額改定が定着し、収益が大きく改善した。空室率が1~2%という「満室状態」の企業もある。
 また住宅分譲事業では「価格高騰でも販売好調」という状況を反映し、各社とも高い利益率を確保した。従来、マンションの粗利率は「20%」が目安と言われたが、すでに20%台後半から30%台まで上昇。交通利便性や環境などに優れた再開発物件や高級住宅地物件が後押しした形だが、26年3月期も高水準が続く見込み。用地費・建築費の高騰の影響は次年度以降となるが、好調な投資家向け物件と合わせ、今後の動向が注目される。

買取再販市場が活況
 今年は、大手も中小も買取再販市場が活況となった。相続などで既存住宅の流通量が増えたこと、建設費が上昇したことで、新築住宅の価格が高騰。消費者が中古住宅に注目し、それを機に今まで新築住宅が対象だった税制優遇措置を既存住宅に対象に広げたことも追い風となった。
 大手は資金力と仕入れ網を生かし、築浅物件の確保や高品質なリノベーションを武器にシェアを拡大。中小企業は地域特性を把握し機動的に仕入れを行い、柔軟なリフォーム提案で差別化に成功。結果として、価格帯・エリアを問わず在庫回転が良く、利幅も安定しやすい物件を提供でき、消費者のニーズに応え売り上げを伸ばした。
 住宅取得層の二極化も追い風になり、金利上昇で新築取得が難しい層は「手の届く再販中古」へ流れ、富裕層は「好立地のハイクオリティ再販」へ向かう。こうした複数の需要層を同時に取り込めているのが、現在の買取再販市場の特徴である。この流れは短期的なものではなく、今後も継続する可能性が高い。

ハウスリースバック/被害相談が増加
 日本の総人口の29%超が65歳以上と高齢者の割合が増加する中、今年問題となったのはハウスリースバックだ。
 ハウスリースバックは自宅を売却して現金を得て、そのまま賃料を支払いながら住み続けられる契約。しかし、国民生活センターによると、同契約による相談件数が増加している(24年度239件)。そして、契約当事者の約7割は70歳以上であり、同センターは注意を呼び掛けた。
 相談事例には、「長時間勧誘され続けた」「マンションを売るよう執拗に勧誘された」のほか、「『売却後もそのまま住み続けられる』と説明され、リースバック契約したが、家賃が値上げされ支払えなくなった」などの事例があった。

「4号特例」の縮小、住宅着工に影響
 建築基準法の改正で4月1日から「4号特例」の対象範囲等が変わった。4号特例とは、建築確認の対象となる小規模木造建築物等(4号建築物)の建築確認で、構造関係規定等の審査が省略されていた制度。4月以降は、従来の4号建築物が新2号建築物と新3号建築物に分かれ、新2号建築物が審査省略制度の対象外となった。
 新2号建築物には、木造2階建てや延べ面積200m2超の木造平屋建てが含まれることから、これまで審査省略制度の対象となっていた建築物の多くが対象外となった形だ。
 新2号建築物は、大規模なリフォームにも建築確認申請が求められるようになったため、リフォーム事業者やリフォームをする人にまで影響は広がった。4号特例縮小と同じタイミングで省エネ基準適合義務化もスタートしたことで、現場では一部、法改正の解釈や建築確認の遅れなどによる混乱が見られ、4月以降は建築確認申請件数に対し、交付件数が下回る状況が続いていたが、9月頃から例年の件数並みに戻した。

大阪・関西万博、来場は盛況
 大阪・関西万博が4月13日~10月13日の期間で開催され、一般来場者数は2557万8986人に上った。「愛知万博」(2005年)で記録した来場数(約2205万人)を上回った。会場となったのは大阪市此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」で、会場を囲んだ「大屋根リング」(約2キロの巨大な輪)は世界最大級の木造建築物としてギネスに認定された。
 夢洲は新たな都市像を描く舞台となり、大阪府・大阪市はマスタープランを策定。夢洲を単なる観光地としてではなく、住まいや働く場としても機能する「国際観光拠点」の形成を追求する意図がある。今後はインフラを整備し、エコ技術と居住性を両立させる設計を想定している。

改正住宅セーフティネット法が施行
 「やさしい」賃貸住宅の供給に向けて単身高齢者など、要配慮者の賃貸住宅入居の更なる円滑化を目指し、改正住宅セーフティネット法が10月、施行された。
 改正内容は、まず貸主が賃貸住宅を提供しやすく要配慮者が円滑に入居できる環境整備を行うこと。その一環で「終身建物賃貸借契約の認可手続きの簡素化による利用促進」を図り、住宅ごとの認可を事業者認可に変更。2つ目は「居住支援法人による残置物処理の推進」。同法人は賃借人からの委託を受けることで、残置物処理にあたることができるようになった。

訪日客、4千万人突破へ
 政府観光局の発表によると、今年1~11月の訪日外国人観光客は3906万人で、過去最多だった24年の3687万人を超え、4000万人を突破することが確実となった。インバウンドの増加による経済効果が注目される一方で、オーバーツーリズム(観光公害)が一段とクローズアップされた年でもあった。
 JLLによると、インバウンド需要の増加に伴い、ホテル取引も活発化し、取引額は日本全体で初めて1兆円を超えた。
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