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新年特集 事業環境、新たな領域に/東京都「アフォーダブル住宅供給促進ファンド」に選定/社会的リターンを可視化、「インパクト投資」の現在地

新年特集 事業環境、新たな領域に/東京都「アフォーダブル住宅供給促進ファンド」に選定/社会的リターンを可視化、「インパクト投資」の現在地

  • 2026.01.05
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岡本拓也社長

東京都「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」 4つの運営事業者候補による各スキーム

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 東京都が創設する「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の運営事業者候補として、りそなグループのりそな不動産投資顧問は、LivEQuality(リブクオリティ)大家さん、マックスリアルティーとともに、東京都が創設する「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の運営事業者候補に選定された。ほか3事業、合計4つのコンソーシアムが選出された。LivEQuality大家さんの岡本拓也社長に「インパクト投資」について話を聞いた。
 住宅価格の高騰によって、子育て世帯が「住める場所」が制限されている。住宅マスタープランでも、住居費負担の増加が少子化の要因の一つとして指摘され、安心して子どもを育てられる住環境の整備は喫緊の課題。「東京都の少子化対策2025」では、結婚や子育てに関するあらゆる「不安」を解消し「安心」に変えることで、望む人が安心して子どもを産み育てることができる社会の実現を目指している。この一環として民間活力を活用し、周辺の相場よりも安い家賃(市場家賃の80%)で入居できる住宅として、アフォーダブルな住宅を供給する「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の組成を進めている。

LivEQuality大家さんの岡本拓也社長に聞く
 今回の選定を都内で展開する第一歩にしていきたい。当社はこれまで名古屋市などで、良質な住宅を市場より低く提供(生活要配慮者などの生活扶助額を参考に算出)するモデルを構築してきた。集合住宅の建物内の一部住戸をアフォーダブル住宅として低廉に貸し出しつつ、その他の住戸で収益性を確保する「複数家賃設定モデル」を採用し運営してきた。
 また、住まいの提供後にNPO法人LivEQualityHUBと連携し、シングルマザー家庭を中心に自立を支援。就業支援、子育て相談などを通じて生活再建の後押しを行っている。
 例えば就業先・支援機関・医療などへのアクセスがどれほど向上したかを示す「社会資源へのアクセス改善」。安定した住まいが生活再建にどう寄与したかを示す「入居後の滞納実績」「就業率の変化」は、住まいの確保が就労継続・就労開始に与える影響を測定したものをいう。
 これらのデータを継続的に投資家へ共有することで「社会的弱者支援」という抽象的なテーマを、投資判断に耐える「成果」として提示してきた。具体的には、私募債によって1口1000万円で投資を募り、利回りは0・1%ほど。実績を丁寧に伝えることで、資金提供者との信頼関係を築いている。
 「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の募集要項でも、インパクト評価は重要項目として位置づけられている。「インパクト投資」という言葉はまだ一般的とは言えない一方で、不動産業界ではSDGsや環境配慮設備が注目され「社会課題への投資=ESGの『S』を担う領域」として、アフォーダブル住宅は確実に存在感を増している。現在は、りそなグループと連携し、こうした意識を持つ投資家層への展開を進めている。
 東京都が今回の運営事業者選定で重視したのは「子育て世帯への実効性ある支援モデル」「財務の安定性」「実績に基づく運営能力」の3つ。選定された要因は、まず都市部の不動産価値をいかした「複数家賃設定モデル」が構築済みであること。2つ目は、株式会社×NPOの連携スキームを用いたこと。NPOをはじめとした地域の支援機関と連携し、居住後の生活の安定や改善に伴走する仕組みが構築され、子育ての孤立感の解消などができること。3つ目は投資家や社会に対して成果を示す姿勢が評価されたこと。「モデルそのものが既に実証済み」であることと捉えている。

妊娠期から就学前まで切れ目なく支援
■SMBC信託など/萬富の子育て応援賃貸マンション「ネウボーノ」
 SMBC信託銀行と萬富の2社が運営事業者候補に選定された。提案には三井住友銀行、三井不動産レジデンシャルリースを含む4社が共同で参画し、今後は東京都とともに事業計画の具体化、ファンド出資契約締結に向けた協議を進めていく。提案の柱となるのは、萬富が2016年から展開する子育て応援賃貸マンション「ネウボーノ」の供給だ。フィンランドの子育て支援制度「ネウボラ」をモデルとし、屋内キッズスペースやキッズガーデンなどの共用部、動線・収納計画など、子育て視点の設計を特徴とする。有資格者による見守り・託児、住民交流イベントなどのソフトサービスを組み合わせ、心理的負担の軽減とコミュニティ形成を後押しする点が評価されている。
 「ネウボラ」は、フィンランド語で「助言の場」を意味し、母親の妊娠期から子どもの就学前までの子育て世帯を切れ目なく支援する制度をいう。
 また三井住友フィナンシャルグループは、現中期経営計画で「社会的価値の創造」を経営の柱のひとつに掲げている。

■野村不/京王電鉄と英国・米国で蓄積した知見を基に
 野村不動産と野村不動産投資顧問はファンド組成後、野村不動産が民間出資を担い、野村不動産投資顧問が運用業務を担当する。京王電鉄も共同出資者として参画を予定していて、鉄道事業者を含む広域連携による供給モデルが形成されるとしている。野村不動産は英国や米国でアフォーダブル住宅を一定割合含む賃貸事業に既に参入済みで、制度が成熟した海外での知見を蓄積してきた。今回の選定を機に、日本でもアフォーダブル住宅を含む新たな事業機会の創出を積極的に検討し、都市部の住宅確保課題に応えていく。

■三菱UFJ信託/ヤモリが担う不動産オーナー育成事業実績数は2500人超
 中古戸建て再生事業を手がけるヤモリ(東京都渋谷区)は、三菱UFJ信託銀行と共同で応募し、運営事業者候補として選定された。これまで自社で200戸超の中古戸建てを取得・再生し、賃貸住宅として運用してきた実績を持つ。そのほか、不動産オーナー育成事業を通じて2500人以上の投資家を支援したことによって蓄積した物件データやノウハウをいかし、空き家問題の解決とファミリー向け住宅供給の両立を図る。
 同社は「不動産の民主化」を掲げ、誰もが不動産オーナーとして資産形成できる社会の実現を目指してきた。19年の設立以降、DNX Venturesや三菱UFJ信託銀行、米国のベンチャーキャピタルMetapropから総額10億円の資金調達を実施。函館市では自治体と連携し、空き家の取得から改修・運営まで一体で担うモデルを展開している。
 東京都板橋区赤塚での再生事例では、1080万円で取得した63㎡の戸建てを68万円で改修し、シングルマザー世帯が入居。別事例では690万円で取得した52㎡の物件を400万円で改修し、大学生向けシェアハウスとして活用している。
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