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新年特集 事業環境、新たな領域に/国交省/地域力の再構築へ実装モデル、10団体に「地域づくり表彰」/エッジの効いたテーマが地域を動かす――2025年の優良事例を見る

新年特集 事業環境、新たな領域に/国交省/地域力の再構築へ実装モデル、10団体に「地域づくり表彰」/エッジの効いたテーマが地域を動かす――2025年の優良事例を見る

  • 2026.01.05
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国土交通大臣賞=MOTレール倶楽部(北海道網走市)

国土交通大臣賞=せとうちみなとマルシェ実行委員会(愛媛県今治市)

国土交通大臣賞=塩尻Lab(長野県塩尻市)

全国地域づくり推進協議会会長賞=「まめ」新聞有志会(新潟県上越市)

全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム賞=快生館(福岡県古賀市)

 国土交通省が創意と工夫に富んだ「地域づくり」活動の優良事例を表彰する2025年度「地域づくり表彰」の受賞団体を決定した。「持続可能な生活圏の再構築」や「地域を支える人材の確保・育成」といった重要施策に対応する先進的取り組みが認められ、北海道網走市と長野県塩尻市、愛媛県今治市の3団体が「国土交通大臣賞」を受賞した。国土づくりの目標として掲げられた「新時代に地域力をつなぐ国土」を体現するものとして、地域社会の持続可能性向上への貢献に期待する。

 地域づくり表彰制度は84年に始まり、全国地域づくり推進協議会や国土計画協会に加え、今年度から「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」も迎え入れた。
 これに伴い「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム賞」が新設され、東京一極集中の是正や地方創生に資する「二地域居住促進法」の施行後、初の実施となりその政策的意義も大きくなっている。
 昨年度は45団体が推薦され9団体が受賞したが、今年度は全国各地から32団体が推薦され厳正な審査の結果、10団体が各賞の受賞団体として選定された。
 最優秀賞となる「国土交通大臣賞」にはMOTレール倶楽部(北海道網走市)、塩尻Lab(長野県塩尻市)、せとうちみなとマルシェ実行委員会(愛媛県今治市)の3団体が選出された。
 具体的には、北海道網走市のMOTレール倶楽部は、ローカル鉄道の維持・活用の「エッジの効いたテーマ」で独自のストーリーを生みだし、地域住民の共感と参加を得て地域づくりを推進した。地域資源に対する光の当て方の工夫が、持続可能性につながる「関係性の広がり」と深く関わることも良く分かったことも評価につながった。
 長野県塩尻市の塩尻Labは都市近郊地域が抱く強い危機感を共有し、地域ラボという交流の枠組みを機能させ、外部人材との共創を進めた。問題解決の担い手探しや実装までも行う「実践」に重きを置き、地場住民の活動が外部人材との連携深化の仕組みとして機能し、活動の広がりと定着に成功した。
 愛媛県今治市のせとうちみなとマルシェ実行委員会は、港を中心とした地域づくりで地域外の人々を巻き込み「関係人口」を越えて、地域課題の解決や夢の実現に共創していく「交通の港」から「交流の港」へと参加者を進化させた点が評価された。
 毎回、新たな出会いが生じやすく、官民連携の多様な主体による持続可能な運営体制ができていることで、地域コミュニティの活性化にもつながっている点も選定理由となった。

二地域居住プラットフォーム賞を新設/初代受賞は福岡古賀市の快生館
 今年度新設された「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム賞」では、福岡県古賀市の快生館が受賞した。この事例は歴史ある温泉旅館を、官民連携で二地域居住や企業誘致の拠点となるワークスペース兼インキュベーション施設として再生させたもので「湯けむりとビジネスでつなぐ二地域」をコンセプトとする。
 25年11月現在で入居企業は20社を超え、遊休施設の有効活用と「稼げる地域づくり」に資する新ビジネスの支援という2つの側面を両立させた。
 特に有害鳥獣を「命と向き合う体験資源」として活用した「狩猟体験ワーケーション」は地域課題をプラスに転化。人手不足が深刻化する猟師の課題周知・育成にもつながる持続可能産業モデルの実践として、全国の模範となりうると評価された。
 このほか「全国地域づくり推進協議会会長賞」を受賞した京都府京田辺市の京田辺農福観地域づくり協議会の取り組みも注目される。これは農業、福祉、観光の連携による「多様な人々がつながり、循環する地域づくり」をコンセプトにした試み。通所型の就労施設の人が収穫野菜を加工したオリジナル食品を開発し、地域力をけん引する「サービスを提供する側」として主体的に参画している点が特筆された。
 新潟県上越市の「まめ」新聞有志会の活動も中山間地域の希望となる事例で、豪雪地帯の集落で11年の震災を機に、住民を元気づけようとミニ新聞「まめでやったけぇ(方言で「お元気でしたか?」の意味)」の発行を開始。伝統行事や食文化を記録し、失われゆく地域の文化や記憶の定着手段としても機能している。
 地域外の人を巻き込むことで交流を広げ、お弁当昼食会を通じて高齢者の孤立防止にも寄与し、身近な楽しみを通じて住民をつなぎ、生きがいを創出する手法は高齢化が進む他地域への示唆となると評価された。
 審査後の総評からは、近年の地域づくり活動による重要な潮流と、成功の要因が明確に示された。一つ目の潮流は「関係人口の深化」で活動への参加者が単なる「関係人口」にとどまらず、地域課題の解決や夢の実現に共創していく「仲間」へと変化している点が評価されている。外部の人々を巻き込むことによって、「関係人口」が街や地域をつくりかえる「主人公」にもなりうるという実例が多数示されることとなった。
 二つ目は「二地域居住の目的化回避」という視点の重要性で、二地域居住をゴールとせずにそれを外部の人と地域の人との共創「手段」として捉えた。新たな活動やビジネスの立ち上げにつなげるという「二地域居住をどういかすか」という視点が成功のカギと再確認された。
 三つ目に、地域づくりにおける「エッジの効いたテーマの重要性」が指摘された。北海道網走市のMOTレール倶楽部のように、鉄道や現代アートといった地域の平時の生活から距離があるテーマが新風を生み、地域住民の共感と参加を得て地域づくりの重要な要素へと進化する実態モデルが提示された。地域固有の価値や資源に諦めずに光を当て続け、可視化する地道な努力が思わぬ大きな効果を生むことが分かった。
 四つ目の潮流は優良事例の多くが地域衰退への深刻な危機感を原動力として、足元の活動をスタート点としている点である。何とかしたいという強い思いと、自分たちの小さな楽しみを伴う取り組みの積み重ねが、次第に外部の人々やステイクホルダーを巻き込み、大きなうねりとして広がりを形成した。
 さらに五つ目として「持続可能性の確保と関係性の広がり」という長年の課題に対する答えが示された。「持続」には、「若い人」「地域外の人」の参加・参画が不可欠であり、今回の事例は「関係人口」「二地域居住」という枠組みがその有効な手段であることが改めて示された形だ。そして「持続可能性」は「関係性の広がり」と深く関わり、この広がりを左右するカギが、活動への「共感」と、人々の「意識の変化」であると結論付けられた。みんながそれぞれの思いでがむしゃらにやり続けた結果、自然発生的に大きな輪やうねりが生じたのである。
 六つ目の論点として地域課題の解決と、企業目的とを「相乗的」に高め合うCSV(Creating Shared Value)の新鮮さが指摘された。従来のメセナやCSR(企業の社会的責任)から進化したCSVの広がりが期待されるとともに、地域課題の解決法提供だけでなく、担い手探しや実装を支えていく中間支援組織の構造が、地域づくりを背後から支える主体として重要であると考察された。
 国土交通省は、今回の受賞を契機に、各受賞団体には活発な活動展開を期待している。
 また、全国各地の地域づくりの担い手に対し、今回の優良事例を参照することで、それぞれの地域の課題克服や魅力向上に向けた取り組みの進展を期待するとしている。
 同制度は国土交通省のほか、全国地域づくり推進協議会、全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム、国土計画協会が主催し、日本政策投資銀行(東京都千代田区、地下誠二社長)が後援している。地域づくりへの多角的な支援体制が構築され、今後もこの表彰制度を通じて、地域の活力を高め「新時代に地域力をつなぐ国土」の実現に向けた取り組みが加速される見通しである。
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