新年特集 事業環境、新たな領域に/40周年の節目迎えたJLL日本/世界80カ国から見た〝日本の優位性〟
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2026.01.05
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JLLは25年11月26日、東京マーケットセミナーを開いた。1985年に数人でスタートしたJLL日本は2025年、設立40周年を迎え、従業員は1400人を超えた。「これも当社の事業が日本のマーケットに浸透してきたからこそ」と語るのは、同社代表取締役社長の河西利信氏。拠点は現在、東京に2つ、大阪、福岡に1つずつの計4つ。22年後半から25年にかけて、全ての拠点を拡大・拡張・移転し、新しい働き方に適合した最新のワークプレイスを採用してきた。4つの拠点は、グッドデザイン賞などオフィスに関するさまざまな賞を受賞している。
河西利信社長らが語る投資市場
同社は米国や日本のみならず、世界80カ国で事業を展開しているが、その中でも最も成長が期待できるマーケットとして、インドや中東と並び、日本が選出されている。その理由は大きく4つ。
1つは、地政学的な観点だ。地政学は往々にして悪い方向に働くものだが、日本についてはプラスに働いている典型的な国の一つになる。アジア、特に極東を取り巻く地政学上のリスクは、大きく言えば中国と米国との対立ということになるが、こうした緊張感を背景に、さまざまな戦略的資金が中華圏から日本に流入している様子が不動産マーケットから見て取れる。
2つ目は、経済環境。日本は低成長が続いているが、コロナ前後も底堅いマーケットが続いている。
3つ目は、金融政策だ。日本は金利が上昇傾向にあるものの、諸外国と比べれば低水準であり、これは特に投資マーケットにプラスに働く。
そして4つ目は、日本独自の環境にある。行政によるさまざまな改革や株主からのプレッシャーを背景に、日本企業の資金、あるいは資本の効率的活用が求められているため、非戦略的不動産の売却が継続的に見られている。これもまた流通マーケットにプラスに働いている。
今後は金利動向に注視する必要があるものの、日本の不動産マーケットを取り巻く良好な環境が続くと解説した。
■海外投資家の割合、リーマンショック前を上回る
リサーチ事業部の大東雄人氏は、グローバルから見た日本の不動産市場の振り返りと26年の見通しについて説明した。25年9月末までの現物不動産の投資額は米国が最も多く、英国に続き、日本は三番手に位置する。一方、都市別でみると東京は世界で最も投資を集めているマーケットであり、先の4つの優位性が評価されていることがわかる。
25年は第3四半期時点で前年の投資額を大きく上回り、22%の増加。日本ではオフィスへの投資が大部分を占めているのが特徴だ。
20年からはコロナ禍でオフィス市場の先行きも不透明になったが、近年はオフィス回帰が進み、海外の投資家を含め、25年は特に日本のオフィスへの投資が加速している状況だ。日本不動産への投資額のピークはリーマンショック前の07年だったが、25年第3四半期の海外投資家の割合は39%と、07年の34%を上回っている。
25年はオフィス賃料の上昇も加速しているが、その理由は大きく2つある。1つは、人手不足に直面していること。日本では人口減少、少子高齢化が進み、優秀な人材の確保が、業種や規模を問わず日本企業の大きなテーマとなっている。コロナ禍では失業率が上昇したものの、現在は2・5%程度まで低下し、各企業ともに優秀な人材を確保するのが難しくなっている中、好立地かつ高クオリティのオフィスは採用を後押しするだけでなく、従業員の出社を促す効果にも期待できる。コロナ禍の緊急事態宣言下でも約65%の企業が在宅勤務を実施していたが、23年5月に新型コロナウイルスが五類感染症に移行して以降、オフィス回帰が進み、東京中心部のオフィス需要拡大がさらに加速している。
オフィス回帰で投資マネーが再点火
実際、同社が定義する東京のAグレードのオフィス全242棟のうち、現在約8割にあたる187棟のビルが満室稼働している。9月末時点の都心5区の平均月額賃料(共益費込み)は、前四半期比2・4%の上昇となり1坪当たり3万7042円。空室率は0・9%まで低下し、賃料上昇を下支えしている。
東京のオフィス賃料はリーマンショック前の07年がピークで、当時は一坪当たり月額5万円超。現在のオフィスストックは当時の約2倍となっていることから、大東氏はこれまで「この水準を超えることはない」と見ていたというが物価高が継続し、昨今はテナントにもようやくインフレマインドが浸透。現在は、当時以上に上がる余地もあると感じていると話す。
東京都のAグレードオフィスは、25年の1年間で8棟竣工。誘致も順調に進んでいる。26年も25年と同等量の供給量が見込まれていて、すでにテナントが決まり始めているが、27年の供給数は25年の半分以下を見込んでいる。当面は需給のひっ迫が継続する。
28年は大型の計画が積み上がっているが、昨今のインフレ、物価高による建築費の高騰や人手不足などによって、当初計画の3分の1は計画の見直しや竣工の遅れが予想され、直近の発表ベースでは25年や26年と変わらない供給数になる。29年についても多くの供給計画が積み上がっているものの、インフレは当面継続することが予想されるため、一部は計画の見直しや延期が余儀なくされる可能性もある。
25年前半あたりまで、海外投資家、特に米国の投資家は自国の在宅勤務の普及率が高く、なかなか出社回帰が見られなかったため、オフィス投資に消極的だった。特にIT企業が集積するサンフランシスコやロサンゼルスなど西海岸のエリアはゴーストタウンのような状態になり、リテールや飲食店などにも退店の動きが顕著だった。
日本のオフィスも敬遠される傾向にあった。ただオフィス賃料の上昇が鮮明になり、海外投資家の見方も大きくポジティブに傾いているという。レジデンスへの投資も依然として好調で、一棟レジデンスの需要の拡大は、コロナ禍以降、加速している。
■大量供給期を迎える福岡は、意外にも足踏み状態
「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」などさまざまな再開発計画が進行している福岡では、21年から26年にかけてオフィスの大量供給期を迎えている。累計供給量は約12・6万坪で、その約8割がAグレードオフィスにあたる。エリアとしては、天神、博多が9割を超えている。約8割は竣工済みで、竣工したものだけでいえば成約率は86%、未竣工のものを加えると70%程度で、26年は過去最高の供給数を見込む。
昨今勢いのある大阪と比べると「順調」とは言い切れない側面もある。24年に竣工したランドマーク物件のリースアップは、意外にも足踏みしている期間が長く、26年竣工の新築物件についても、決して悪いとは言えないものの勢いが欠けていると同社は指摘する。中期的には、Aグレードオフィスの賃料は弱まりが予想される一方、Bグレードオフィスは堅調で、賃料も順調に上がってきている。
河西利信社長らが語る投資市場
同社は米国や日本のみならず、世界80カ国で事業を展開しているが、その中でも最も成長が期待できるマーケットとして、インドや中東と並び、日本が選出されている。その理由は大きく4つ。
1つは、地政学的な観点だ。地政学は往々にして悪い方向に働くものだが、日本についてはプラスに働いている典型的な国の一つになる。アジア、特に極東を取り巻く地政学上のリスクは、大きく言えば中国と米国との対立ということになるが、こうした緊張感を背景に、さまざまな戦略的資金が中華圏から日本に流入している様子が不動産マーケットから見て取れる。
2つ目は、経済環境。日本は低成長が続いているが、コロナ前後も底堅いマーケットが続いている。
3つ目は、金融政策だ。日本は金利が上昇傾向にあるものの、諸外国と比べれば低水準であり、これは特に投資マーケットにプラスに働く。
そして4つ目は、日本独自の環境にある。行政によるさまざまな改革や株主からのプレッシャーを背景に、日本企業の資金、あるいは資本の効率的活用が求められているため、非戦略的不動産の売却が継続的に見られている。これもまた流通マーケットにプラスに働いている。
今後は金利動向に注視する必要があるものの、日本の不動産マーケットを取り巻く良好な環境が続くと解説した。
■海外投資家の割合、リーマンショック前を上回る
リサーチ事業部の大東雄人氏は、グローバルから見た日本の不動産市場の振り返りと26年の見通しについて説明した。25年9月末までの現物不動産の投資額は米国が最も多く、英国に続き、日本は三番手に位置する。一方、都市別でみると東京は世界で最も投資を集めているマーケットであり、先の4つの優位性が評価されていることがわかる。
25年は第3四半期時点で前年の投資額を大きく上回り、22%の増加。日本ではオフィスへの投資が大部分を占めているのが特徴だ。
20年からはコロナ禍でオフィス市場の先行きも不透明になったが、近年はオフィス回帰が進み、海外の投資家を含め、25年は特に日本のオフィスへの投資が加速している状況だ。日本不動産への投資額のピークはリーマンショック前の07年だったが、25年第3四半期の海外投資家の割合は39%と、07年の34%を上回っている。
25年はオフィス賃料の上昇も加速しているが、その理由は大きく2つある。1つは、人手不足に直面していること。日本では人口減少、少子高齢化が進み、優秀な人材の確保が、業種や規模を問わず日本企業の大きなテーマとなっている。コロナ禍では失業率が上昇したものの、現在は2・5%程度まで低下し、各企業ともに優秀な人材を確保するのが難しくなっている中、好立地かつ高クオリティのオフィスは採用を後押しするだけでなく、従業員の出社を促す効果にも期待できる。コロナ禍の緊急事態宣言下でも約65%の企業が在宅勤務を実施していたが、23年5月に新型コロナウイルスが五類感染症に移行して以降、オフィス回帰が進み、東京中心部のオフィス需要拡大がさらに加速している。
オフィス回帰で投資マネーが再点火
実際、同社が定義する東京のAグレードのオフィス全242棟のうち、現在約8割にあたる187棟のビルが満室稼働している。9月末時点の都心5区の平均月額賃料(共益費込み)は、前四半期比2・4%の上昇となり1坪当たり3万7042円。空室率は0・9%まで低下し、賃料上昇を下支えしている。
東京のオフィス賃料はリーマンショック前の07年がピークで、当時は一坪当たり月額5万円超。現在のオフィスストックは当時の約2倍となっていることから、大東氏はこれまで「この水準を超えることはない」と見ていたというが物価高が継続し、昨今はテナントにもようやくインフレマインドが浸透。現在は、当時以上に上がる余地もあると感じていると話す。
東京都のAグレードオフィスは、25年の1年間で8棟竣工。誘致も順調に進んでいる。26年も25年と同等量の供給量が見込まれていて、すでにテナントが決まり始めているが、27年の供給数は25年の半分以下を見込んでいる。当面は需給のひっ迫が継続する。
28年は大型の計画が積み上がっているが、昨今のインフレ、物価高による建築費の高騰や人手不足などによって、当初計画の3分の1は計画の見直しや竣工の遅れが予想され、直近の発表ベースでは25年や26年と変わらない供給数になる。29年についても多くの供給計画が積み上がっているものの、インフレは当面継続することが予想されるため、一部は計画の見直しや延期が余儀なくされる可能性もある。
25年前半あたりまで、海外投資家、特に米国の投資家は自国の在宅勤務の普及率が高く、なかなか出社回帰が見られなかったため、オフィス投資に消極的だった。特にIT企業が集積するサンフランシスコやロサンゼルスなど西海岸のエリアはゴーストタウンのような状態になり、リテールや飲食店などにも退店の動きが顕著だった。
日本のオフィスも敬遠される傾向にあった。ただオフィス賃料の上昇が鮮明になり、海外投資家の見方も大きくポジティブに傾いているという。レジデンスへの投資も依然として好調で、一棟レジデンスの需要の拡大は、コロナ禍以降、加速している。
■大量供給期を迎える福岡は、意外にも足踏み状態
「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」などさまざまな再開発計画が進行している福岡では、21年から26年にかけてオフィスの大量供給期を迎えている。累計供給量は約12・6万坪で、その約8割がAグレードオフィスにあたる。エリアとしては、天神、博多が9割を超えている。約8割は竣工済みで、竣工したものだけでいえば成約率は86%、未竣工のものを加えると70%程度で、26年は過去最高の供給数を見込む。
昨今勢いのある大阪と比べると「順調」とは言い切れない側面もある。24年に竣工したランドマーク物件のリースアップは、意外にも足踏みしている期間が長く、26年竣工の新築物件についても、決して悪いとは言えないものの勢いが欠けていると同社は指摘する。中期的には、Aグレードオフィスの賃料は弱まりが予想される一方、Bグレードオフィスは堅調で、賃料も順調に上がってきている。

