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人口減少、高齢化が進行、国交省・総務省が5年ぶり「過疎地域等の集落」調査、「いずれ無人化」が44%も

人口減少、高齢化が進行、国交省・総務省が5年ぶり「過疎地域等の集落」調査、「いずれ無人化」が44%も

  • 2025.08.25
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 国土交通省と総務省は、2023年4月時点の「過疎地域等における集落の現況を把握する調査結果」を公表した。条件不利地域による集落の人口動向や今後の動向予測を明らかにするもので、前回調査から5年ぶりの実施となる。
 調査対象は、過疎地域や山村振興地域、離島振興地域など条件不利地域に存在する集落で、集落数は7万8485集落(23年4月時点)、集落人口は1432万9000人で、1集落あたりの平均人口は184人だった。特に注目すべきは、住民の半数以上が65歳以上とする集落の割合が40・2%に達し、前回調査の29・2%から10ポイント以上増加したこと。
 前回調査対象地域(1038市町村)による集落数は7万5321集落で、5年間で694集落が減少。そのうち、無人化した集落は296集落、集落再編による減少は617集落、新たに誕生した集落は219集落だ。また、集落人口は1339万人で、5年間で7・5%減少した。
 市町村の回答によると、集落の73・8%が「当面存続」と予測される一方で、「いずれ無人化」と予測される集落は44・2%、「10年以内に無人化」と予測される集落は0・6%。前回調査で「10年以内に無人化する可能性がある」とされた集落のうち、12・6%が実際に無人化している。
 無人化が危惧される集落では、商店・スーパーの立地割合が3・6%、病院・診療所は1・7%と、生活サービスの立地が著しく低い状況が明らかになった。
 集落支援員や地域おこし協力隊などのサポート人材が活動する集落の割合は増加傾向にあり、具体的には集落支援員が活動する集落は28・8%(前回19・3%)、地域おこし協力隊等は22・0%(前回19・9%)。
 この調査結果は、過疎地域による不動産市場の縮小や空き家問題の深刻化を示すとしている。特に高齢化が進む集落では、空き家の管理が不十分なケースが多く、地域のインフラ維持にも課題が生じている。不動産業界としては、これらの地域での空き家活用や地域再生に向けた取り組みが求められる。

不動産業にも可能性/空き家の活用、移住促進など
 人口減少と過疎化の影響を受け、地域社会の維持が課題となる中、国土交通省は5年ぶりに実施し、公表した最新の過疎地域集落調査。全国7万8485もの集落を対象にしたもので、維持状況や無人化リスクなどを把握、分析した。この調査結果は、空き家再生や地域活性化に取り組む不動産業界にとって、新たなビジネス機会を示すとともに、課題解決に向けた重要な指針ともなりそうだ。幾つかの注目すべき動向などを見てみる。

サポート人材の活動が鍵
 山間地の集落では人口が少ない傾向が顕著で、空き家の増加や生活インフラの維持が課題となっている。これらの地域で空き家を利活用し、移住促進策を展開することで、地域活性化の貢献につながる。空き家をリノベーションして移住者向けの住宅や宿泊施設として活用することも考えられる。そのほか、地方集落での転入者やサポート人材の活動も注目されている。
 2019年以降、地方集落への転入者がいる集落は全体で42・8%、過疎地域では43・6%とほぼ横ばいの状態が続いている。子育て世帯の転入状況では、全体で20・4%、過疎地域でも同じく20・4%の集落で子育て世帯が確認され、前回調査と比較して大きな変化はなかった。このデータは、地方の住宅需要が安定していることを示すとともに、子育て世帯向けの住宅や地域サービスにつながることを示す。
 また、地方集落では集落支援員や地域おこし協力隊などのサポート人材が活動する割合が増加傾向で、全体では集落支援員が28・8%、地域おこし協力隊が22・0%の集落で活動し、過疎地域ではそれぞれ30・3%、22・2%になっている。東北、中部、近畿、中国圏での活動割合が大きく増加している点が特徴的だ。
 この増加傾向は、地方の魅力向上や移住促進に寄与する可能性があり、地域活性化に伴う住宅需要の拡大に寄与していくとも考えられる。
 また地方集落の転入者やサポート人材の活動状況は、不動産業界にとって重要な指標の1つになりそうだ。
 例えば、(1)「子育て世帯向け住宅の需要」として、子育て世帯の転入が確認されている集落では、家族向けの住宅や教育施設の整備が考えられる。(2)「地域活性化による住宅需要の拡大」では、サポート人材の活動が増加している地域では、移住者の増加に伴う住宅需要の高まりが期待できる。(3)「地域特性に応じた戦略」は、東北、中部、近畿、中国圏など活動が活発な地域で、地域特性に応じた不動産開発やマーケティングが期待できるなど、地方集落の動向を踏まえた戦略が、地域活性化を促進する鍵となる--とした。

地域特性に応じた戦略を
 今回の調査結果は、不動産事業者が今後の事業展開で大いに役立つ可能性もある。地域特性に応じた柔軟な戦略を立てる上で、人口減少が進む地域での空き家再生プロジェクトや移住促進策は、地域活性化に寄与しつつ新たな収益源となる可能性も考えられる。 
 具体的には、「空き家のリノベーション」。老朽化した空き家をリノベーションし、移住者向けの住宅や観光客向けの宿泊施設としての活用。▽「地域特性を生かしたプロジェクト」として、山間地では自然を活かしたエコツーリズム施設、離島ではリモートワーク拠点の整備など、地域特性に応じた事業展開。▽「移住促進キャンペーン」は、地域の魅力を発信し、都市部からの移住者を増やすためのプロモーション活動を促進していく。▽「地域住民との連携」では、地域住民と協力し空き家管理や地域活性化の取り組みを進めることで、持続可能な事業モデルを構築することも考えられる。
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