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明海大学不動産学部 不動産の話題[85]学生と教員の見方/模型で考える伝統と更新(1)/伝統地区の町並みと保存/黒漆喰と柳で機能向上
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2025.09.22
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【学生の見方&考え方】
(3年 今関弘和)
5月中旬、佐原の町並みを見学した。水運に恵まれた佐原の町並みは江戸時代から昭和初期に建てられた町家や蔵造り建築が連なり「北総の小江戸」「水郷の町」と称され、千葉県で唯一の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。佐原には「大祭」の際に訪れたことがあったが、高さ10メートルほどになる山車と大人形に目を奪われ、また大勢の人でにぎわっていたため町並み自体は十分に見ることができなかった。今回の見学で、小野川沿いに並ぶ土蔵造りの商家や町家を巡り、黒漆喰の土蔵と柳の組み合わせに風情を感じた。そのためこの風情がどのように選択され残されているかを考えた。
黒漆喰とは石灰に布糊、粘土などを練り合わせた塗り壁材に墨や松煙、油煙を混ぜて黒く仕上げたもので耐久性が高く、重厚感や贅沢さを感じさせる。一方で水辺に植えられた枝垂れ柳は風に柔らかく靡なびいており、落ち着きを与えてくれる。この枝垂れ柳は佐原の町並みの雰囲気には欠かせないものではあるが、なぜ枝垂れ柳を選んだのか疑問を持ち調べると理由の一つに柳は水に強い、ことが挙げられていた。さらに、根が深くまで張って土壌を強くし、水害対策にもなるらしい。視覚的面で安らぎを与え、機能的な理由もあることに面白さを感じた。
川沿いには写真にみられるように半ば壊れた状態にみえる改修中の建物が見られた。伝統的建造物保存地区での改修は香取市と協議し、許可を得て行われる。NPO法人「小野川と佐原の町並みを考える会」や地域の住民の保存活動などの協力により、昔ながらの美しい町並みが維持されている。
【教員による展開】
(前島彩子教授)
不動産学研究(ゼミ)活動において、構法模型の製作を通して、その不動産が建てられた時代背景や地域特性との関連を具体的に考えることに取り組んでいる。今年度製作しているのは、佐原の伝建地区を囲む景観形成地区において、改修しながら使い続けられている建物である。まずは、このエリアの様子を理解するために現地を訪問した。
今関さんは、佐原の町並みを構成する要素から印象に残ったものをいくつか取り上げて、それらがなぜ選択され、維持保存されているのかについてモノとヒト、2つの視点から考察している。
モノの視点―黒漆喰と柳が取り上げられるが、前者は不動産の用途や要求性能にあわせ、その性能を左右するものとして選択されているのに対して、後者は川沿いという立地に応じて選ばれたものといえる。不動産の用途や立地の条件が類似する場合、別の地域でも目にすることができるものであるが、その組み合わせには地域性があり、その地域ならではの景観や風情を生み出している。
ヒトの視点―一定規模以上の改修は、建築確認申請等の行政手続きが必要になり、現行制度への適合が求められる。更に伝建地区や景観形成地区においては、外観や建材などに制約が加わるため所有者・関係者の理解や協力なしに維持することは難しい。
そうした協力への意識が根付いていることにより歴史をたどれる風情が、新陳代謝しながらこの地域の魅力として引き継がれている。
【学生のアピールポイント】
絵を描くことと散歩をすることが趣味です。自然に囲まれた道を意味もなく歩くことが好きです。
(3年 今関弘和)
5月中旬、佐原の町並みを見学した。水運に恵まれた佐原の町並みは江戸時代から昭和初期に建てられた町家や蔵造り建築が連なり「北総の小江戸」「水郷の町」と称され、千葉県で唯一の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。佐原には「大祭」の際に訪れたことがあったが、高さ10メートルほどになる山車と大人形に目を奪われ、また大勢の人でにぎわっていたため町並み自体は十分に見ることができなかった。今回の見学で、小野川沿いに並ぶ土蔵造りの商家や町家を巡り、黒漆喰の土蔵と柳の組み合わせに風情を感じた。そのためこの風情がどのように選択され残されているかを考えた。
黒漆喰とは石灰に布糊、粘土などを練り合わせた塗り壁材に墨や松煙、油煙を混ぜて黒く仕上げたもので耐久性が高く、重厚感や贅沢さを感じさせる。一方で水辺に植えられた枝垂れ柳は風に柔らかく靡なびいており、落ち着きを与えてくれる。この枝垂れ柳は佐原の町並みの雰囲気には欠かせないものではあるが、なぜ枝垂れ柳を選んだのか疑問を持ち調べると理由の一つに柳は水に強い、ことが挙げられていた。さらに、根が深くまで張って土壌を強くし、水害対策にもなるらしい。視覚的面で安らぎを与え、機能的な理由もあることに面白さを感じた。
川沿いには写真にみられるように半ば壊れた状態にみえる改修中の建物が見られた。伝統的建造物保存地区での改修は香取市と協議し、許可を得て行われる。NPO法人「小野川と佐原の町並みを考える会」や地域の住民の保存活動などの協力により、昔ながらの美しい町並みが維持されている。
【教員による展開】
(前島彩子教授)
不動産学研究(ゼミ)活動において、構法模型の製作を通して、その不動産が建てられた時代背景や地域特性との関連を具体的に考えることに取り組んでいる。今年度製作しているのは、佐原の伝建地区を囲む景観形成地区において、改修しながら使い続けられている建物である。まずは、このエリアの様子を理解するために現地を訪問した。
今関さんは、佐原の町並みを構成する要素から印象に残ったものをいくつか取り上げて、それらがなぜ選択され、維持保存されているのかについてモノとヒト、2つの視点から考察している。
モノの視点―黒漆喰と柳が取り上げられるが、前者は不動産の用途や要求性能にあわせ、その性能を左右するものとして選択されているのに対して、後者は川沿いという立地に応じて選ばれたものといえる。不動産の用途や立地の条件が類似する場合、別の地域でも目にすることができるものであるが、その組み合わせには地域性があり、その地域ならではの景観や風情を生み出している。
ヒトの視点―一定規模以上の改修は、建築確認申請等の行政手続きが必要になり、現行制度への適合が求められる。更に伝建地区や景観形成地区においては、外観や建材などに制約が加わるため所有者・関係者の理解や協力なしに維持することは難しい。
そうした協力への意識が根付いていることにより歴史をたどれる風情が、新陳代謝しながらこの地域の魅力として引き継がれている。
【学生のアピールポイント】
絵を描くことと散歩をすることが趣味です。自然に囲まれた道を意味もなく歩くことが好きです。