お電話でもお問い合わせを受け付けています 受付時間 平日 10:00~17:30

TEL03-6721-1338

不動産業界 営農型太陽光発電開設相次ぐ/再エネ調達が多様化/農業・地域課題対策にも

不動産業界 営農型太陽光発電開設相次ぐ/再エネ調達が多様化/農業・地域課題対策にも

  • 2026.08.10
  • お気に入り
 不動産業界で再生可能エネルギーを獲得する動きが活発化している。脱炭素化など環境経営計画を推進するための動きで、東京都心部周辺で保有・運営するオフィスビルや商業施設での大きな需要を賄うのが目的だ。事業活動の全エネルギーを再エネとする「RE100」を目指すテナント企業も増えて、再エネ需要は今後も増すばかり。メガソーラー事業や物流施設開発などを通じて自社での再エネ調達を拡大してきたが、ここへきてより“難易度が高い”とされる営農型太陽光発電所の開設が増えきた。再エネ供給と農業課題の解決策としても期待されている。大きな流れになるのか。

東急不、22年に開始
 不動産業界で営農型太陽光発電にいち早く参入したのは東急不動産。埼玉県東松山市で発電設備関連や地元の営農関係者らと協業して、2022年に実証実験を開始。発電した電力の同社保有施設への供給、売電収入の一部を農業協力金として営農家へ還元、収穫した農作物を地域共生型施設「TENOHA東松山」で提供する地産地消など、「エネルギーと食・農業の課題を一体的に解決するモデルを構築してきた」。
 今年4月には、埼玉県熊谷市で地域の農業法人である埼玉福興(熊谷市)とともに開発した「リエネソーラーファーム熊谷太陽光発電所」を稼働した。一部耕作放棄地が生じるなど、後継者不足に伴う農地の荒廃が懸念されていた事業用地。分散していた35筆(約4ヘクタール)の農地を集約することで農地の保全と農作業の効率化を実現し、国内最大規模の営農型太陽光発電(発電出力DC2625キロワット/AC1990キロワット)を行う。作付け作物は麦。
 また、5月には東松山市の「TENOHA東松山」に隣接する水田で、営農型太陽光発電で豊富な実績を持つTERRA(千葉県匝瑳市)と開発した「リエネソーラーファームTENOHA東松山太陽光発電所」(発電出力DC60・6/AC50キロワット、水稲栽培)の運転を開始した。
 東急不動産が現在、関与している営農型発電所は9物件(約10メガワット)。今後は「関東エリアを中心に、農業課題やエネルギー課題を抱えている自治体と連携しながら拡大を推進していく」という。
 1号施設の「東松山」では「水稲、ニンジン、ブルーベリー、ホウレンソウなどが収穫できている。今後は、収穫量を増やす検証として麦を生育する。今秋から土地の整備(耕耘など)を行う」。発電量は「おおむね社内企画値水準」とした。

森ビルは筑西市で
 森ビルが茨城県筑西市に「営農型太陽光発電所」の1号施設を稼働したのは24年2月。農業の後継者問題で荒廃リスクを抱えていた農地を利用した。敷地面積は1・9ヘクタールで、太陽光発電設備の発電量は年間約280万キロワット時。その後、25年1月に群馬県桐生市(敷地1・0ヘクタール)で、2月に栃木県栃木市(同2・2ヘクタール)で新規発電所の運転を開始。現在は3サイトで合計年間730万キロワット時(一般世帯1860世帯相当)を発電し、虎ノ門ヒルズ森タワーなどに供給している。
 作付け作物は、筑西市サイトはトマト、キャベツ、ブロッコリー、きゅうり、ニンジンなど季節に合わせた多品目の野菜づくりに挑戦し、現在は10品目近くに。桐生市サイトと栃木市サイトではさつまいも(紅はるか)を栽培中。収穫が順調になってきたため、子どもたちのための苗植え体験や収穫体験、地域の子ども食堂への寄付。さらに都心と地域をつなぐ取り組みとして、8月1日には東京・港区のアークヒルズのヒルズマルシェで収穫野菜の販売を初めて実施した。
 同社では「都心で使う電気はなるべく自分たちの再エネ発電所でつくる。その発電所は都心と地域が共に発展できる形で開発していくことを目標にしてきた。その一つの形が営農型太陽光発電。今後も営農型、蓄電池併設型の太陽光発電、風力発電など、幅広く発電所を開発し、リアルタイムで供給できる仕組みを構築していきたい」という。

野村不も実証開始
 野村不動産は7月、埼玉県比企郡川島町の農地(3515m2)で営農型太陽光発電の実証実験を開始した。農業の継続と発電を両立する土地活用モデルの確立を図ること、さらに実証実験の結果を踏まえて、再生可能エネルギーの自社調達拡大と脱炭素社会の実現への貢献を目指す。実証実験は今年度新設したインフラ・インダストリー本部(物流施設、データセンター、エネルギー、工場など社会・産業インフラを支えるアセット開発事業)が担当。
 水田に太陽追尾型の営農型太陽光発電設備を設置し、作物の生育に配慮した環境で発電を行う。発電設備の安全性やコスト、パネル下での収穫量、農業上の効果、周辺環境への影響の観点から事業の成立性を検証する。発電量は年間80メガワット時。実証期間は約3年。

営農型太陽光発電の現況

 農林水産省の資料などによると、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電パネルを設置し、農業と発電を同時に行う仕組み。メリットは農作物の販売に加えて売電や自家消費で収入が増やせること、農地の活用(休耕地などを生かせる)など。一方で、収穫量の低下や高額な初期費用、制度上の制約(市町村や農地の一時転用許可や適切な営農計画が必要)などの問題点もある。
 営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可件数(全国)は、2013年度の年間103件に始まって以降年々増加し、20年度からは年間800件前後以上に増加。23年度までの累計は6137件、営農型太陽光発電設備下部の農地面積は累計1361.6ヘクタールまで拡大した。設備の設置者は発電事業者が73%(4323件)、農業者や農地所有者が27%(1630件)という構成だった(存続しているもので回答があったもの)。

東急不動産が熊谷市内で運転を開始した国内最大規模の営農型発電所

TOP