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暑中特集 変動する市場と戦略/在日外国人に応える「総合力」/YAK越水亮社長の取り組み

暑中特集 変動する市場と戦略/在日外国人に応える「総合力」/YAK越水亮社長の取り組み

  • 2025.08.05
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 外国人の日本の不動産取得というと、「投資用対象として爆買い」といった側面ばかりが話題になるが、もちろん、実際はそれだけではない。日本社会で暮らし、働く外国人の実需がある。在日外国人向けの実需への対応を核として、不動産仲介・金融支援・法人設立など複合的なサービスをワンストップで提供する。YAKの越水亮社長に、外国人による不動産市場の現状などについて話を聞いた。

実需ベースで事業展開
■金融機関からの信用

 創業期の大きな課題の1つは、外国人、特に永住権を持たない外国人に対する住宅ローンの提供だった。当時、安定した収入はあるが永住権のない外国人が日本の金融機関から融資を受けることは非常に難しく、中国系の金融機関などに頼るケースが多かったという。
 同社は長年にわたる粘り強い交渉を経て、現在はメガバンク4行を含む数十行以上の金融機関と提携している。この数は中華系不動産会社としてはかなり多い方だ。昨年だけでも同社が関与した取引で400億円以上の融資が実行された。
 越水社長によると、「(ローン手続きに)手間と時間がかかる。経験があり柔軟に対応できる仲介業者が間に立たないと難しい」。同社では顧客がローン申請しやすい環境を整える。また、徹底した法令順守の姿勢は金融機関から高く評価されている。
 「事故による信用毀損」を防ぐため、ローンの申し込み手続きは顧客自身が行うことを徹底している。顧客のサポートに徹するが、手厚いサポートによって顧客の書類偽造や虚偽申請などの不正行為の排除につなげている。「銀行から要求されるルールはしっかりと守る」姿勢が、コンプライアンスを重んじる金融機関側からの信頼獲得につながり、多数の金融機関との提携に成功した。外国人顧客に対し、提携金融機関ごとの異なる融資条件の中から顧客の条件に合った金融機関を迅速に提案することができ、顧客のローン取得プロセスを円滑にしている。
 創業当時、顧客のほぼ100%が自己使用の居住用物件を求める「実需」の顧客だった。
 現在は顧客のニーズに応えて投資不動産も扱うが、在日外国人の人口が増加し、日本で安定した仕事や家庭を築く人々が増えている現状を踏まえ、実需こそ安定的なマーケットであるという認識のもと、紹介を中心に居住用物件の販売実績を上げている。
 投資不動産に過度に依存しない営業方針をとることで、変化の激しい投資不動産の市況に左右されない安定的な経営を目指す。同社の現在の営業は、口コミや紹介による顧客獲得が好調で、毎月40件から50件の外国人顧客の仲介が成約する。顧客層は幅広く、富裕層に限定されていない。自己使用の居住用不動産を希望する顧客は全体の約7割を占め、主に都心部に住む一般のサラリーマンが中心だ。価格帯は4000万円から1億円の間で、中古マンションの需要が高い。
 投資用不動産を求める顧客は残りの約3割だが、取引金額が大きいため売上高ベースでは実需不動産と半々ぐらいの割合になるという。民泊やホテルへの需要もあるが一棟もののビルへの需要が高い。利回りの高い物件を求める傾向があるため、東京23区内に限らず千葉、埼玉、神奈川などでも条件が合えば検討対象になる。価格帯は基本的に1億円以上で、2億~3億円の物件が成約のボリュームゾーンだ。
 また、所有権への志向も特徴的だ。日本では土地の所有権が購入できるため、それを求める外国人投資家も少なくないが、単なる土地所有よりも投資リターンを重視する傾向が強く、保有期間は短く売却までのサイクルが短い。日本人投資家が10~20年と長期保有するのに対し、外国人投資家は「気が短く」、利益が出れば2~3年くらいで売却を検討する傾向があるという。投資家の今後の動向は、「今は為替相場の様子を見ていると思う。円高に振れれば売りに走る可能性がある」と話した。

■日本社会との共生・貢献
 YAKグループは、単なる不動産取引にとどまらず、日本社会への貢献を重要な位置づけとしている。単に日本の不動産に投資をしたいというだけではなく、日本社会へ貢献もしたいという外国人投資家は多数存在する。
 越水社長は「その人たちに日本への投資に加わってもらえれば日本人の方も喜ぶのではないか」と期待し、特に地方の未活用物件に外国人投資家が投資し、宿泊事業などを展開することは、日本の社会課題の解決になると述べる。
 外国人による地方での投資によって雇用が創出された実例として、中国の自動車部品メーカーが山梨県で廃工場を買い取り、新たな工場として稼働させた事例を紹介した。
 越水氏は「(外国人は)転売に次ぐ転売で儲ける、というイメージが付いているが、これを払しょくしたい。地域の雇用と税収が創出できる事業の仲介に携わり、その事業が成功した時に幸せを感じる」と述べた。また、日本人と外国人の相互理解の大切さを強調する。相互理解を通じて互いの良くないイメージを払しょくし、グローバル化が進む日本社会での共存を目指すべきだと述べる。日本の人口減少や少子化を背景に、優秀な外国人の受け入れは避けられない時代の流れであり、実際のところ製造業や建設業は外国人材抜きには成り立たない。越水社長は「日本社会は外国人といかに仲良く付き合うかを考えるべき」と話す。

■パイオニアとして
 YAKグループは、在日外国人顧客に特化した不動産仲介事業を核とし、広範な金融機関との連携、ローン申請での徹底したコンプライアンス、外国人の日本定住に必要な関連サービスなどを通じて、外国人顧客が日本で不動産を円滑に取得・活用できる環境を構築し、永住権を持たない外国人への住宅ローン提供のパイオニア的な役割を果たしてきた。
 今後は経済活動に留まらず、地方の未活用の不動産の再生や雇用創出といった日本の社会問題の解決に貢献し、日本人と外国人の相互理解を深めることで、日本社会の持続的な発展に寄与することを目指す。今回の上場を通じて、同社の体制は日本の不動産会社と変わらないほどになったと自信をにじませる。
 上場は「会社を大きくして、堂々と、透明性を持たせた経営をしていく」という経営方針の明確な表明だ。透明性を持った経営を貫くことで金融機関を始め、日本社会からの一層の信頼を得てより良い事業サイクルを構築し、日本社会への貢献を大きく展開したいとしている。

YAKグループの概要
 YAKグループは、グループ全体の経営管理を行う「YAKホールディングス」(東京都台東区、水神怜良社長)の傘下に、売買・賃貸仲介の「YAK」、賃貸管理を手がける「YAKアセットマネジメント」、住宅ローン代理店の「ワイエーケーワールドローン」、主に日本人向けに買取再販事業を行っている「YAKディベロップメント」、日本国内と海外の外国人顧客に対し、民泊申請やリフォームなどを提供する「オークランドインターナショナル」の5社を置く形で構成している。
 同グループは外国人顧客、特に在日中国人顧客を主要なターゲットとし、彼らが日本で不動産を購入・活用する上でのさまざまな障壁の解消を行う。創業から10年を経た今年6月20日、YAKホールディングスは東京証券取引所の東京プロマーケットに上場した。上場では自らを「インバウンド不動産総合事業」と位置づけた。
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