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国交省 品質管理指針を策定/建設用3Dプリンター土木工事で普及へ

国交省 品質管理指針を策定/建設用3Dプリンター土木工事で普及へ

  • 2026.03.30
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大林組/仮説管理施設の擁壁工

 国土交通省は「建設用3Dプリンターによる造形物の出来形や品質の確認に関する参考資料案」を策定し、公表した。セメント系材料を用いた建設用3Dプリンターの適用事例が同省直轄工事で増加していることを受け、監督職員が現場で出来形や品質を確認する際の基本的な考え方や留意事項を体系的に整理した。

「出来形・品質確認」も明文化
 建設用3Dプリンターは、型枠が不要で設計データと直接連携できるため、構造物の最適設計や現場の省人化、工期短縮といった生産性向上に大きな期待が寄せられている。一方で、従来のJIS規格に基づくレディーミクストコンクリート(生コン)工法と異なり、材料や造形方法に関する標準規格が未整備である。現場ごとに品質管理や検査方法を個別に検討・協議しなければならない点が、技術普及の障壁となっていた。
 現在、現場では受発注者間の協議に基づき、既存の生コン品質管理基準を準用しつつ、3Dプリンター特有の確認項目(積層プロセス等)を追加して対応している。土木学会からも2025年7月に「建設用3Dプリント埋設型枠を用いたコンクリート構造物の技術指針案」が示されているが、各社で仕様が異なる3Dプリンターの品質管理項目を標準化するまでには至っていない。
 今回の資料案は土木学会の指針を補完し、監督職員が個別協議を円滑に進めるための「実務のガイドライン」として位置付けられる。なお、同省は今後の施工実績や知見の蓄積に合わせ、随時内容の見直しと充実化を進める。
 3Dプリンターには「材料押出方式」と「材料吹付け方式」の2種類があるが、今回の資料案では「材料押出方式」のみを対象とした。これは、これまでの直轄土木工事による実績が同方式に限定されているためだ。
 施工中の導入申し出に対する留意点として、まず「工種妥当性の検討」を掲げている。これまでの事例は無筋構造物やRC構造物の埋設型枠に限られている。これら以外の構造形式への適用には慎重な検討を求める。次に「再設計の必要性」。3Dプリンター材料は粗骨材を含まないため、通常のコンクリートに比べて単位体積重量が小さい。重力式擁壁などに用いる場合、安定計算のやり直しなど再設計が必要になる可能性がある。
 3つ目は「設計変更の共通認識」。材料費は高価になりがちだが、型枠レスによる工期短縮や省人化のメリットがある。目的物の単価だけでなく、工事全体のコストバランスについて受発注者で共通認識を持つべきとした。
 出来形管理の基本は、従来の場所打ち構造物の基準に準拠する。ただし、3Dプリンター特有の「積層模様」を考慮した運用が示された。具体的には、積層による表面の凹凸差は5ミリメートル程度で、従来の規格値を超える可能性は低いとされる。計測位置については混乱を防ぐため「幅・高さ・長さ」を測る際は「凹部」を対象とし、「内空幅・内空高さ」など空間の確保が必要な場合は「凸部」で測定するとのルールを明記した。
 表面の出来栄え評価については、製造過程で不可避な積層模様そのものは評価対象外とした。ただし、性能に影響しない程度の欠損などはマイナス評価の対象となる。また、景観が重視される箇所や特別な表面処理が求められる場合は、別途検討が必要としている。
 品質管理では、材料だけでなく「製造プロセス」の確認を重視する。3Dプリンターはプリント速度や打ち重ねの時間間隔、材料温度が造形物の強度や品質に直結する。
 【原材料】JIS品以外はメーカー証明書やSDS(安全データシート)で安全性と品質を確認▽【材料品質】圧縮強度や空気量、塩化物含有量などを試験結果に基づき管理▽【プロセス管理】データログが取得できる機器ではログの提出を求め、取得できない場合は現場立ち会いによって適正な積層条件が維持されているかを確認する。
 今後は、さらに大規模な工種や実績のない構造物へ適用を拡大するため、第三者認証制度の活用などの必要性も示唆されている。

14の施工事例公開大林組の工期短縮も
 資料には、これまでの直轄工事による14の適用事例がまとめられた。曲線美を生かした「曲線ベンチ」から、実用的な「重力式擁壁」「集水ます」「橋梁下部工」「護岸パネル」「潜水突堤」まで多岐にわたる。各事例では、使用したプリンターのメーカー名や材料、具体的なメリット・デメリットが併記され、導入を検討する施工者にとって実用的な情報となっている。
 具体的には、大林組は国土交通省中部地方整備局発注の新丸山ダム本体建設工事で、建設用3Dプリンターで製作したプレキャスト(PCa)部材を仮設擁壁に適用した。
 規格品のPCa部材と3Dプリンターによる特殊形状部材を組み合わせることで、擁壁工事の「フルプレキャスト化」を実現。現場での施工日数を従来の約20日間から1・5日に短縮し、約90%の工期削減を達成した。
 3Dプリンター部材が採用されたのは、ダム建設現場内の仮設管理施設に付随する擁壁工(2024年施工)。一般的に、地形や構造に合わせて形状が変化する「折れ点」や「端部」の擁壁は、現場で型枠を組みコンクリートを打設する場所打ち工法が主流だが、この工法では型枠の製作や鉄筋の組み立て、養生に多大な日数を要し、生産性の向上が課題となっていた。
 大林組は、直線部には既製品の規格PCa部材を使用し、複雑な形状が必要なコーナー部や調整部に対して、建設用3Dプリンターで製作した専用のPCa部材を投入。現場での型枠作業を一切排除した「フルプレキャスト化」に成功した。その結果、従来工法で約20日間想定されていた現場作業は、部材の据え付けのみとなり、わずか1・5日で完了した。
 今回の部材製作は、現場から離れた製造拠点で造形を行う「オフサイトプリンティング」方式を採用。あらかじめ工場環境で精密に造形された部材を現場へ搬入し、クレーンなどで据え付ける。この手法によって、天候に左右されず安定した品質管理が可能となるほか、現場での作業人員を最小限に抑え、安全性の向上にも寄与した。
 同社はこれまでも建設用3Dプリンターの研究開発を積極的に進めてきたが、同事例は実工事での実用性と、圧倒的な工期短縮効果を証明するものとなった。
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