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不動産流通特集/高さ制限を逆手に取る/低層・メゾネット型マンションの設計力と市場性

不動産流通特集/高さ制限を逆手に取る/低層・メゾネット型マンションの設計力と市場性

  • 2025.11.17
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伊藤忠都市開発の「クレヴィア世田谷砧ザ・コート」

大和ハウスの「プレミスト国立ゲートレジデンス」㊨㊧とも
㊨ シンボルツリーとベンチを備えた中庭
㊧ 重厚感のあるゲート

長谷工コーポレーションの「ブランシエスタ目黒中央町」

長谷工コーポレーションの「ブランシエスタ目黒中央町」
木造・RC造のハイブリッド構造 モデル図

 戸建てのような独立性を持ち、セキュリティや共用設備ではマンションの利便性も享受できるメゾネットタイプのマンション。高さ制限や地形を生かした設計に、住まい方の効力を発揮。人気の高まりをみせる各社の事例を紹介する。

 不動産市場では、新築マンションの価格上昇と供給減少が並行し、住宅取得の二極化が進んでいる。財務省の資料によると、首都圏新築マンション供給戸数は過去20年間で3割に減少し、24年の平均価格は7820万円、1㎡あたりの単価は117・7万円に達した。2007年比で価格は68・4%上昇、単価は2倍へと拡大。東京都区部では24年平均価格1億1181万円(1㎡あたり171万円)を記録した(データ=不動産経済研究所)。
 年収倍率は全国平均10・09倍、都心では18倍と高騰している(データ=東京カンテイ)。
 価格高騰の影響で、富裕層や投資家、相続税対策目的の高齢層、年収1500万円超のパワーカップルをはじめとする特定層が新築購入を支える。一方で、一般実需層は中古物件や賃貸へと需要を移し、市場は所得層ごとの分化が進む。
 その両市場で注目を集めるのがマンションと戸建て住宅の利点を生かしたメゾネットタイプだ。

■伊藤忠都市開発/世田谷砧の低層住宅
 伊藤忠都市開発は、フジ都市開発と共同で、世田谷区砧の第一種低層住居専用地域に建設する新築分譲マンション「クレヴィア世田谷砧ザ・コート」のコンセプトルーム一般案内を10月18日から開始した。
 小田急小田原線祖師ヶ谷大蔵駅徒歩8分に立地し、総戸数31戸、地上4階建ての低層マンションである。間取りは2LDK(45㎡台)~4LDK(89㎡台)の全21タイプ。
 1~2階部分の11戸にはテラス付きメゾネットプランを設け、リビング・ダイニングには天井高約5・45㍍の吹抜を採用した。上部の大開口から自然光を取り入れ、上下階を分離する構造を採用し、戸建てに近い独立性を確保する。テラスと専有空間が連続するプランは、室内外の一体感を高め、伸びやかな住空間を演出する。
 外観は砧の住宅街に調和する重厚なデザインを採用。ボーダータイルと大判タイルのダブルマリオン構成によるグリッドデザインに加え、両端部を御影石貼りとした。エントランスアプローチは分割庇を用い、外から内へ自然に移行する動線計画を施している。都市の利便性と緑豊かな住宅地の静けさを兼ね備えた立地に加え、吹抜とテラスを備えたメゾネット構造は、戸建て感覚での暮らしを求める層に訴求する設計だ。

都内の分譲・賃貸で供給
■大和ハウス/国立で全戸3層利用

 大和ハウス工業は、東京都国立市で竣工した分譲マンション「プレミスト国立ゲートレジデンス」(総戸数26戸、地上3階建て)の販売を4月から開始した。JR中央本線国立駅から徒歩7分の文教地区に立地し、周辺には一橋大学国立キャンパスや桐朋中学校・高等学校などの教育機関が点在する。
 同物件は全戸3階建てメゾネット構成で、吹抜やルーフバルコニー、専用庭付きをはじめとする16タイプを展開。専有面積は66~83㎡、価格帯は7200万円~1億100万円(第1期1次)。1LDK~3LDKのプランを用意し、家族構成や生活様式に応じた選択が可能である。住空間を3層に分けることで、家族間のプライバシー確保やテレワーク環境の柔軟な利用を実現。上下階の生活音を気にせず暮らせる構造が特徴だ。
 建物は3棟構成で中庭を中心に配置し、敷地中央にはシンボルツリー「ヤマザクラ」とベンチを設けた。敷地を塀で囲み、ゲート以外からの出入りを制限した「ゲーテッドマンション」としてセキュリティ性を高めている。
 環境性能は「ZEH―Mオリエンテッド」仕様で、建築物省エネルギー性能表示制度「BELS」の第三者認証を取得。文教地区の落ち着いた街並みと、省エネ・防音性を兼ね備えたメゾネット構造で、戸建て志向層の需要に応える物件だ。

■長谷工コーポレーション/木造×RC造のハイブリッド構造賃貸
 長谷工コーポレーションは、東京都目黒区で建設した賃貸マンション「ブランシエスタ目黒中央町」(地上7階建て、101戸)を3月に竣工した。1~3階をRC造、4~7階を木造・RC造とするハイブリッド構造を採用し、同社で初めて上階4層を木造専有部とした。
 全体101戸のうち、約3分の1を超える36戸を木造住戸とし、そのうち5戸をメゾネットタイプとした。木材を採用することで、約603㌧(二酸化炭素換算値)の炭素を貯蔵、環境配慮型コンクリート「H―BAコンクリート」の使用で約20%のCO2排出削減を実現し、同規模の全RC構造と比べ約570㌧の排出抑制を達成した。
 国交省「優良木造建築物等整備推進事業」に採択された同物件は、木造技術の普及促進を目的とする先導的事例である。
 共用部にはエントランスラウンジやフィットネスルーム、ワークラウンジを整備し、1LDK~3LDK(31~134㎡)の多様な間取りをそろえる。可動収納ユニット「UGOCLO Plus」を一部住戸に採用し、生活スタイルの変化に応じた柔軟な空間利用を可能とした。専有部は木造高遮音二重床システムを導入し、防音性と耐火性能を確保。環境負荷低減と快適性を両立させた次世代賃貸として位置づけられる。

■名鉄都市開発/西荻で地域共生型賃貸
 名鉄都市開発は、東京都杉並区で開発を進める賃貸マンション「Nishiogi comichi terrace(西荻こみちテラス)」の入居募集を3月から開始した。
 名鉄グループ旧社宅跡地を活用した再開発プロジェクトで、同物件はJR中央線西荻窪駅徒歩9分に位置し、吉祥寺駅まで2分、新宿駅まで13分と都心へのアクセスが良好。敷地面積1885㎡、鉄筋コンクリート造2階建て、総戸数23戸。長屋形式の配置とし、敷地中央に「こみち」を配して住戸へアクセスする動線を設けた。井戸や果樹を配した半屋外空間、四季を感じる植栽を通じて、入居者間や地域との交流を促す設計としている。
 全戸屋上付きのメゾネット構造で、間取りは2LDK(60㎡台)と3LDK(99㎡)を中心に構成。ペット飼育可とし、スロップシンクや通り土間を備え、多様なライフスタイルに対応する。1階店舗付き住戸も設け、街との連携を意識したつくりとした。入居者と地域住民が参加できるワークショップをはじめとするコミュニティ支援活動を計画し、「2024年度 東京こどもすくすく住宅認定制度」セレクトモデルに認定。地域共生と暮らしの多様性を両立させる新たな賃貸モデルである。
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